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第12話 いざ商業ギルドへ!

 翌日、早速めめさんから返事があり、めめさんと商業ギルドを交えての話し合いをすることになった。話し合いの場所はなんと商業ギルドの本部だ。我輩、商業ギルド本部なんて行った事ないんだけどな。というか、惑星アルファのギルドっていうなら、ハンターギルドの本部にすらいったことが無い。ただ、そこはめめさんが案内してくれることになった。


 ピンポーン。


 我輩がミニぴぴぷちゃ号の中でハードボイルドにゃんこ的なくつろぎ方をしていると、どうやらめめさんが来たようだ。


「おはようございます。それとすみません、はぴさん、わざわざご足労いただく形になってしまって」

「いや、かまわんさ。商業ギルドできちんと契約を結んだほうがいいのは当然だしな。それに、めめさん達のおいしいコーヒーのためだ、このくらいは苦でもないさ」

「そう言ってもらえるとうれしいです」

「じゃ乗ってくれ、ここからはミニぴぴぷちゃ号で行こうか」

「はい、お邪魔します」


 我輩はめめさんをミニぴぴぷちゃ号に乗せ、2人で商業ギルド本部へと向かう。さて、ここで我輩達の住んでいる街を紹介しよう。まず、我輩達の住んでいる街は、惑星アルファで一番巨大な大陸の南東部にある。巨大な河の下流域ということもあり、水資源が豊富で広い平地が広がっているなど、まさに開拓にうってつけの場所というわけだ。


 厳密には惑星アルファは、元はただの氷惑星なので、テラフォーミングでそういう風に改造している最中というのが正解であるがな。そして、街からさらに南東の海上のメガフロートには、静止軌道上に咲き誇る花型の2000m級宇宙船、旗艦グラジオラスへと繋がる巨大な茎のようなものが聳え立っている。もちろん宇宙まで続いているため、その大きさは結構大きい。


 そんな我輩達の住む街だが、その中でも我輩達の土地は、街の中心部の大河の北側のエリアに位置している。しかもなんとウォーターフロントにあたる場所で、けっこうがっつり一等地のようなのだ。なにせ周辺におっきい建物が建ってるなあと思ったら、それらの建物は、将来この街の庁舎や議会になる予定の建物だったり、警察やら消防の本部予定の建物だったり、各種ギルド本部になる予定の建物だったりなどなど、政治上重要な建物がこれでもかと建っているのだ。ちょっと住み心地悪そうなレベルで都会だった。


 その点めめさん達のコーヒー農園はすばらしい。街の西側、大河の上流域に存在しているのだが、周囲は農場だらけ、1km四方あたりの人口密度10人以下なのだそうだ。


 そうそう、ぴぴたちが地下基地を探しにいった氷の大地は、街から見て北西の方角だ。


 そして、今日の目的地、商業ギルド本部というのは、まだこの街には存在しない。じゃあどこにあるのかといえば、静止軌道上だ。旗艦グラジオラスにコバンザメみたいにくっついている1000m級宇宙船が何個かあるのだが、その内の一つが商業ギルドの本部というわけだ。なんでも、ギルド本部の機能移転に苦戦中とかいう理由で、なかなか移動できないらしい。ちなみにその他のギルドも、本部機能はまだ旗艦グラジオラスの周囲に浮かぶ宇宙船から移動させることが出来ていないようで、ハンターギルドも農業ギルドも本部は静止軌道上だったりする。


 そんなわけで我輩とめめさんの2人は、ミニぴぴぷちゃ号にのって商業ギルドの宇宙船へと飛んでいこうというわけだ。旗艦グラジオラスのそばにあるので、めめさんの車でメガフロートに行き、茎の中にある軌道エレベーターに乗って、移動することも可能なのだが、ミニぴぴぷちゃ号で直接乗り込んだほうが手っ取り早い。


「軌道エレベーターか、そういえば、使ったことはないな」

「そうですね、私もないです。聞いたところによると、あの茎は惑星アルファの宇宙パワーを一度グラジオラスに吸い上げ、その後テラフォーミング用のパワーとして送り返すためのパイプとしての役割が中心みたいです」

「ほう、そうなのか」

「はい。軌道エレベーターの現状の稼働率はあまり高くないと言っておりました。ただ、惑星アルファもそこそこ重力のある星ですので、静止軌道上に宇宙港などの設備が整ってからが本番だそうです」


 めめさんとたわいも無い話をしながらも、ミニぴぴぷちゃ号は軌道エレベーターを横目にどんどんと宇宙へと昇っていく。すると、先の戦いで活躍した妖精軍宇宙防衛部隊の1000m級宇宙船などが、旗艦グラジオラスの周囲に多数停泊しているのが見えてきた。


 そして、そんな宇宙船にまじって、商業ギルドの宇宙船もぷかぷかと停泊していた。妖精の国本国との貿易船なのだろうか、非軍事系の宇宙船がひっきりなしに商業ギルドの宇宙船へと横付けしては飛び立っていく様子も見える。でも、全般的になんか結構な込み具合だ。


「ほう、すごいものだな」

「ええ、すごい混雑具合ですよね」

「旗艦グラジオラスを中心に、軍事民事両方の拠点となっているというわけか。これは混むのも無理ないな」

「ええ、その通りです。混雑の解消のために、宇宙港の建造を急いでいるそうなのですが、旗艦グラジオラスに代わるテラフォーミングの出来る装備など、本国から持ってくるのに苦戦しているとのことです」

「ふむ、いつごろくるのだろうか?」

「そうですね。1年以内には来るという話ですが、正確な日時はすみません。わからないです」


 我輩達は商業ギルドの宇宙船までやってきた。さて、どこに止めたらいいのかな?


「めめさん、どこに止めたらいいのかな?」

「通信設備をお借りしてもいいですか?」

「もちろんだ」


 そういうとめめさんは通信装置に商業ギルドのカードを差し込んで、通信を開始した。


「こちらめめ、商業ギルド本部宇宙船へ、停泊許可証のデータを送信した。停泊の案内をお願いしたい」

『こちら商業ギルド本部宇宙船、停泊許可証を確認した。トラクタービームにて誘導するため、停船せよ』

「了解しました。停船する。はぴさん、停船をお願いします」

「うむ、わかった」

『ようこそ商業ギルド本部宇宙船へ、これより8番ドッグへとご案内いたします。船内のことでわからないことがございましたら、総合案内をご利用ください』


 我輩がミニぴぴぷちゃ号を停船させると、商業ギルドの宇宙船からトラクタービームが発射され、ふよふよと停船スペースへと自動で運ばれる。うむ、これはらくちんでいいな。


「さ、はぴさん行きましょう。私がきっちりご案内いたしますのでご安心ください」

「ああ、よろしく頼む」


 ミニぴぴぷちゃ号を降りてめめさんの後について通路を歩いていくと、どんどん混雑してくる。流石は様々なギルドの中でも一番混雑するといわれる商業ギルドの本部だ。実に込んでいる。メンバーも多種多様だ。草食動物や妖精が多いが、肉食動物も多少いる。これはまずいな。我輩、いくら猫としては体重30kgと大柄とはいえ、その大きさは大きな中型犬くらい、あるいは小さな大型犬くらいの大きさなのだ。象とかキリンとか牛とか、そういった動物達と比べると実に小さい。めめさんは羊のため、我輩よりは大きいとはいえ、とそこまで大きいわけではない。これはめめさんからちょっとでも離れたらすぐに見失ってしまうそうだ。我輩が必死にめめさんの後を歩いていると、ほどなくして目的地に到着したようだ。


「こちらになります」

「うむ」


 めめさんに案内されたのは、予約済みと書かれたカードが、ドアにかけてある部屋だ。部屋の中に入ると、内装はこれぞ応接室という雰囲気だ。品のいい装飾品がところどころ取り付けられていて、なんとも落ち着くいい雰囲気の部屋だ。


「ここが今日の目的地です。商業ギルドで重要な取引をする際の個室になるんですよ」

「そうなのか。だが、いいのか? 我輩達の土地の利用方法なんて、そんなに重要でもないだろう?」

「それがそうでもないんですよ。では、商業ギルドの方を呼びますので、少しお待ち下さい」


 そういうとめめさんは部屋の隅にある電話を操作した。ふむ、到着したことを報告しているようだな。


「すぐに見えられると思いますので、少しお待ち下さい。あ、コーヒーを入れましょうか?」

「ふむ、コーヒーシェイクは頼めるかな?」

「はい、もちろんです」


 めめさんは持ってきたバッグからいろいろと取り出して、手早く我輩のコーヒーシェイクとめめさんの分のコーヒーを入れた。


「うむ、流石はめめさんのコーヒーだ、美味いな」

「ふふ、コーヒーシェイクですけどね」

「ん? 何かいったか?」

「いいえ、なんでもありません」


 我輩とめめさんがいつものコーヒー談義に花を咲かせていると、ドアがノックされ、2人のギルド職員が現れた。1人は妖精の女子のようだ。そしてもう1人は牛だ。性別は、股を覗き込むのも失礼だろうからわからないな。


「はじめまして、はぴさん、商業ギルド職員の桔梗と申します。めめさんも久しぶりね」


 そう言って妖精の女性が自己紹介してくれた。めめさんとはお互い軽く会釈してるし、知り合いっぽいな。


「よう、お前が噂の猫か、俺はももだ、よろしくな」


 続いて牛さんが自己紹介してくれた。名前は女っぽいが、声色と口調から男というか、おっさんだな。こちらもめめさんとは知り合いのようだ。


「我輩ははぴだ。よろしく頼む」


 我輩の横にめめさんが、向かいに商業ギルドの2人が座って話が始まる。


「さて、今日はお前さんの土地の一部を、めめさんの喫茶店に貸し出したいという話と、お前さんの土地の有効活用方法を探してるって話だったな。」

「ああ」

「そっちの事情はめめ殿から聞いている。そこで、俺たちもお前さんの土地の有効活用方法をいろいろと考えてみたんだ。いくつか案を提出するから、気に入ったのがあればその案をベースに考えてみてくれないか?」

「ああ、構わない」

「ありがとよ。では桔梗、資料と説明を頼む」

「はい、まずはこちらが資料になります」


 そういうと桔梗は資料をいろいろと取り出した。


「では、ご説明させていただきます。まず、はぴさんの土地は縦横300m、場所は将来の街の行政機関の集まる一等地になります。まず、縦横300mという広い土地は、一つの店舗で使用するのはなかなか難しいかと思います」

「ふむ、確かにな」

「そこで私たちが提案させていただく方法の一つ目は土地を分ける方法です。縦横100mで分けることによって、全部で9区画になります。縦横100mならだいぶ使い勝手がいいかと思います」

「あの、100m四方だと少々大きくないでしょうか?」

「そうですね、喫茶店としてみるとかなり大きいかと思います。ですが、めめさんの喫茶店ならばそのサイズでも問題ないかと思われます。雰囲気づくりに庭を造ってもいいですしね」

「なるほど、その方法だとめめさんの喫茶店以外にも何件か呼べるというわけか」

「はい。中央部が道路に接しておりませんが、中央部ともう一箇所を繋げて巨大な土地として貸し出してもいいですし、はぴさんの宇宙船の停泊場所としてそのままキープしてもいいかと思います」

「ふむふむ、悪くはないな」

「ありがとうございます。では、二つ目の案です。こちらは300m四方の土地をまるまる使って巨大な建物を造り、内部を店舗スペースとして貸し出すという案になります。初期投資が少々必要になるのが欠点ですが、より大きな儲けが期待できるかと思います。その他にも腹案はいくつかあるのですが、特におすすめはこの二つになります」


 ふむ、この二つなら、断然一つ目の案だな。同じ喫茶店でも、木洩れ日の差し込む喫茶店で飲むのと、デパートの中の喫茶店で飲むのとじゃあ、雰囲気が違う。ハードボイルドにゃんこ的には、やっぱりコーヒーは木洩れ日の中飲みたいものだ。高層ビルでも建てて、夜景を見ながら飲むっていうのも捨てがたいが、まあ、木洩れ日の勝ちかな。


「では、最初の案にしようかな」

「かしこまりました」

「即決とはな。だが、悪くねえ選択だと思うぜ」

「それはどうも。ところで、めめさんはどの区画にするんだ?」

「えっと、周辺の建物がどうなっているのかわからないのですが、不人気になりそうな箇所で結構です」

「いや、ここは一番人気になりそうな場所でお願いしよう。我輩の土地の看板店になってもらわないとだからな」

「そうですね。私も人気の場所にお願いしたいです」

「そうだな。はぴ殿がいいってんなら、出来れば俺も一番いい場所を取ってほしいと思っている」

「え、そんな・・・・・・」

「まあ、聞け。はぴ殿の土地は、南は河が流れるウォーターフロント、そして西には行政機関が集まる広場があるという土地になってる。そのため、西側の土地には俺達みたいなギルド本部職員や、街の議会だの庁舎だのの職員が行きやすい場所になってるんだよ。つまり俺達としても西側に飲食店が出来ればそれを利用しやすくて助かるってわけさ。ましてや南は河があるから、テイクアウトがあるなら、のんびり河原でくつろぎながら昼飯を食べれるしな」

「え、ですが」

「うむ、我輩もそれには賛成だ。喫茶店の目の前に河原、素晴らしいではないか。というわけで、めめさんの喫茶店の場所は南西に決定でいいか?」

「ああ、はぴ殿が話の分かる猫でよかったぜ」

「めめさん、ここは南西で勝負に出ましょう!」

「えっと、お家賃は」

「そうだな、相場だと安めに見積もってもこのくらいかな」

「うう、やっぱり結構しますね」

「ん? 我輩はもっと安くしても構わんぞ」

「いえ、この金額でいいです!」

「よし、決定だな。あとは、中央部の土地利用はどうする?」

「中央部と真南の土地は我輩達がそのまま停泊所として利用することにしよう」

「そうだな。それがいいと思うぜ」

「では、契約書を頼む」

「はい、かしこまりました。少々お待ちください」

「残りの6箇所についてはどうする? 貸し出したい知り合いがいないのだったら、こっちで探してもいいぜ」

「では、お願いしようかな。ただ、我輩の家のそばでもある。変な建物や人は避けてほしいが、頼めるか?」

「ああ、任せてくれ。俺の職場の近くでもあるからな、そういうのは当然のように却下するつもりだ」


 こうして我輩の土地は9分割され、そのうちの中央と南エリアを我輩達がそのまま使い。南西エリアをめめさんに貸し出すことに決まった。



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