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第10話 ご飯の切れ目が冒険の切れ目

 子鬼達の地下基地を発見して数日、私とぷうが周辺のモンスターをハントしていると、ようやくハンターギルド出張所の300m級の宇宙船が到着したようね。ギルドの宇宙船が、子鬼達の地下基地のあったクレバスの、一個手前のクレバスの中に停泊するとの連絡があったわ。私とぷうはすぐにギルドの出張所へと向かった。


「なんだろう、相変わらずクレバスにはまってるね」

「そうね、はまったほうが落ち着くのかしらね?」


 そして、相変わらずクレバスにはまるように停泊している出張所の中へと入っていき、受付へと進んでいく。


「ぴぴさん、ぷうさん、今回もお手柄ですよ! 相変わらず凄まじい探索能力ですね!」

「お世辞はいいわ。それよりも、来るのが随分遅かったわね。もう少し早く来るかと思っていたわ」


 前の停泊場所もクレバスにはまっているように停泊していたから、脱出に手間取ったのかもしれないわね。まったく、しょうがないんだから。


「あの、ぴぴさん、なにを考えているかわかりませんが、到着が遅れたのはぴぴさん達に依頼されたモンスターの回収に時間がかかったからですからね。あっちこっちにまるで食い散らかすかのように仕留めたモンスターが放置されているんですもの、回収にひっじょ~に苦労いたしました!」

「そうだったのね。ごめんなさい」

「いえ、こちらこそすみません。本来ぴぴさんが謝るようなことではございませんのに、愚痴になってしまいました。こちらとしては儲かりますし、問題はそこまでありません」

「そう? なら、追加のデータを転送するから、処理をお願いするわね」

「追加のデータって、これは、また討伐したのですか?」

「ええ、あなた達が来る間、暇だったからね」

「・・・・・・はあ、わかりました。すぐに回収部隊を向かわせます。それにしても、これを見るとこの周辺のモンスターはほとんど排除済みということですね。お礼申し上げます」

「どういたしまして」


 さて、これでようやく地下基地の本格攻略へと乗り出せるのかしらね。でも、私のカンだとまだ2個ほどこの氷の大地に大規模な地下基地がありそうなのよね。


「そういえば、地下基地は何個を想定しているのかしら?」

「はい、大きなものは全部で5個前後と想定しています。根拠としましては、まず、惑星アルファに住んでいたであろう小鬼達の総数から、侵攻作戦から今日に至るまでの撃退数などを引き、現在残存しているで子鬼達の数の予想を出しました。それをさらに、現在発見済みの小鬼達の地下基地の推定規模で、割った数字になります。ちなみに、現在発見済みなのは南の森林地帯にある2箇所だけです。今回発見いただいた地下基地が大規模なものなら、3箇所目になります」

「既知の2箇所は、ニュースでやっていた妖精軍が攻めている地下基地という認識でいいかしら?」

「はい、その通りです。すでにご存じかと思いますが、あと25日前後で妖精軍の地下基地攻略部隊の編制が終わります。そこで、妖精軍との協議の結果、我々ハンターギルドは、すでに軍が大挙として押し寄せている基地を一緒に攻略するよりも、まずはすべての地下基地の把握に注力することになりました。ぴぴさん達には、出来れば今後も引き続き他の地下基地の捜索をお願いしたいのですが、いかがでしょうか? 残りの2箇所の場所も、この氷の大地にあると睨んでおります」


 なるほどね~。本当ならこのまま手伝ってあげてもいいのだけれど、はぴからもらったご飯が、そろそろ無くなりそうなのよね、主にぷうの分が。ここは一度帰還したいところね。まあ、私達が不在でも、残りの2箇所の地下基地の場所を教えておけば、問題ないわよね。


「このまま手伝いたいのはやまやまなのだけれど、補給に一度戻らないといけないの。だから、残りの2箇所の地下基地に関しては、口頭で伝えておくわね。あっちとあっちよ。距離は、飛ばせば1日以内で到着できるわ」

「あっちとあっち、ですか?」

「ええ、あっちとあっちよ」

「根拠はあるのですか?」

「ええ、カンよ」

「カンが、根拠ですか?」

「そうよ。何かおかしかったかしら?」

「ぴぴのカンはビックリするほど当たるんだよ?」

「はあ、一応そのように報告しておきますね」


 さて、これで今回の依頼はひとまず終わりね。そう思い、受付から去ろうとしていたら、横から話しかけてくる熊の一団がいた。先頭に立ち私達に話しかけてきたのは、この熊パーティーのリーダーだろうか、全長16mくらいの熊型BPSに乗っている。


「よう、猫ども、お前らもこの作戦に参加していたとはな。こんなところで会えるなんてうれしいぜ」


 はあ、私は私の話したい相手以外と、話すつもりはない。ましてや、見ず知らずの熊にこんなところで話しかけれてもちっとも嬉しくない。どちらかといえば迷惑だ。ここは、そうね、切り裂いちゃえばいいかしら。そう思い私は切り裂き王の手を上げ、爪からCPで出来た爪を発生させて、目の前の熊を切り裂こうとすると、ぷうが止めに入ってきた。


「ちょっとぴぴ、ダメ! この人たち何もしてないよね? いきなり切りかかっちゃだめだよ!」

「ぴぴさん、出来ればそれはお止めください。あなたたち、いったい何の用事ですか? 割り込みなら相応の対応を取らせていただきますよ!」

「待ってくれ! すまない。変な誤解をさせるような言い方だったのなら謝る。とにかく、俺たちにお前さんたちとやり合う意思はないんだ!」


 なら話しかけないでほしいところだが、ここはぷうと受付さんに任せるとしましょうか。




 もう、ぴぴったら、まさかいきなり切りかかるなんて。何はともあれ話はわたしが聞くしかなさそうだ。


「それで、熊さん達はわたしとぴぴに何の用なの?」

「ああ、その前に自己紹介をさせてくれ。俺の名前は熊太郎。後ろの連中はパーティーメンバーだ。見ての通り全部で4人の熊だけのパーティーだ。俺たちは普段は虎のギルマスがトップをやってるハンターギルド支部に出入りしているメンバーなんだ。お前らも、虎のギルマスの支部によく出入りしてただろ? それで、以前からちょっと気になっていてな」

「確かにわたし達は虎のギルマスのところに出入りしてるけど、なんで気になったの?」

「まず最初に確認したいんだが、虎の22って、お前らのことでいいんだよな?」

「うん、虎の22は確かにわたし達のパーティーのことだね。それで、なんで気になったの?」

「やっぱそうか。実は俺たちも先日の小鬼達の襲撃の時に、虎のギルマスのアライアンスに参加していたパーティーの一つなんだ。だから、お前さんと虎のギルマスとの報酬300万倍の件とかも、聞こえちゃってたんだよ。あれ、アライアンス全体に聞こえる通信だったからな。それで、報酬が本当に300万倍支払われたのかとか、ちょっと気になっちまってな。いや、すまんな。ほかのパーティーの報酬の話とか、本来はタブーなんだが、額が額なだけにな」

「な~んだ、そんなこと? それなら、あれ? 支払いしてもらったっけ?」


 そういえば入金の確認とか一切してないっけ、まあ、入用になることがほとんどないから、普段からぜんぜん気にしてなかったんだよね。ぴぴかはぴなら確認してるかな? う~ん、可能性は低いか。二人ともお金に全然頓着ないからな~。


「え~っとぷうさん、調べてみましょうか?」


 わたしがちょっと悩んでいると、受付の人が調べてくれると言ってくれた。流石出来る受付さん、対応が早い。断る理由もないしほかに確認方法もないのでお願いしよう。


「うん、お願い~」

「え~っと、照合終わりました。その件に関しては、協議したいという申し出が虎のギルマスから出ております。ですので、支払いはまだのようですね」

「そうなんだ。じゃあ、暇なときにでも虎のギルマスのところにでも顔を出すかな。ぴぴもそれでいい?」

「ええ、構わないわ。返答次第では切り裂いてもいいわよね?」

「いいと思うよ!」

「これに関しては私も全面的にぴぴさんを応援させていただきます。支払えない報酬の約束なんてするべきではありません。いざというときは虎のギルマスを宇宙の藻屑にして、貯蓄から生命保険金まで、根こそぎ頂いてしまいましょう」

「わかったわ」


 この受付さん、虎のギルマスに恨みでもあるのかな? なんかちょっと怖い。おまけにぴぴまでのりのりだし。虎のギルマスの遺産とかほしい? わたしはいらない。いざとなったらはぴと二人でぴぴを止めよう。いや、虎のギルマスとの交渉はぴぴのいない時にわたし一人かはぴと二人で行こう。


「待て待て待て待て待てい! お前らさりげなく怖いこと言うなよ! 300万倍がある種のジョークだってわかるだろ?」


 熊太郎が虎のギルマスを擁護すると、ぴぴがまたしても爪をだす。こらこら、こんなことで怒らないの。300万倍の、万の部分は流石にジョークだとわたしも理解しているしね。


「ま、待ってくれ。なにもギルマスの肩を持とうってわけじゃない。それに、あのときのお前さんらの戦果からあすれば、300倍だってすげえ金額だろ?」

「そうですね。一般的に言っても、300万倍の、万の部分はジョークとするのが無難でしょう。また、熊太郎さんの言うように、300倍でも、ものすごい金額なのは間違いありません。私がギルドで一生働いても到底手に入れることのできない金額です」

「だ、だよな」

「ですが、この協議申請書によりますと、300倍ですら支払いがきついから、協議をさせてほしいという内容になっております」

「はあ? なんだよそりゃ? そりゃあいくら何でも酷くないか? だってあの時ギルマスは、間違いなく報酬300倍でこの猫たちを釣ったんだぞ?」

「ええ、ギルドの公式なアライアンスでしたので、音声データも残っております。熊太郎さんの認識でなんの問題もありません。ですので、私としてもギルマスを切り裂くことに関しては、完全に同意致します」

「まあ、そこは上手くやるから心配しないで」

「ああ。だが、もし手伝えることがあったらなんでも言ってくれ。協力するぜ」

「ありがとう、その時はお願いね」

「っと、そうだ。受付の姉ちゃん、この船が到着したってことは、地下基地への侵攻作戦を実施するんだよな?」

「はい。引き続き別の基地の捜索依頼も行いますが、今回発見された基地の規模の調査もしないといけないので、とりあえず軽く小突いてみる予定です。それに関してはすでに決定事項ですので、今日中に上から正式発表があるかと思います」

「なるほど、やっぱそうか、ありがとよ。でだ、ぷうさん、ぴぴさん。実はこっちが本命の話だったんだけどよ。もしよかったらなんだが、地下基地攻略、俺たちと組まないか?」

「組む? わたしとぴぴが、熊さん達と?」

「ああ、気が向いたらでいいんだけど、どうかな?」


 まさかそんなこと誘われるなんて、ちょっと意外だな。でも、2回もぴぴが殺そうと爪まで出したのに、なかなか気骨のあるパーティーなのかもしれないな。わたしとしては面白そうだからありかな。


「わたしは構わないかな。ぴぴはどうする?」

「ぷうが組みたいのなら、私は構わないわよ。でも、もうご飯がないから、一度補給に戻った後でいいのならって条件でならね」


 おお~、まさか了承するとは。これは、この熊たちの低姿勢っぷりに、この熊たちを実質子分として認めたってことかな?


「というわけで、補給後ならいいよ~」

「おお、そいつはありがたい。よろしく頼むぜ。俺たちもその間に準備万端整えておくぜ。見ての通り、今の装備は屋外戦闘と捜索用で、屋内戦闘用じゃないからな!」

「じゃあ、5日後にここに再集合でいいかな?」

「ああ、それでいいぜ。作戦期間は何日の予定にする?」

「そうだね。じゃあ10日でどうかな?」

「おっけいだ! じゃあ、5日後に10日分の物資をもって集合だな!」

「うん! それじゃ、またね~」

「おう!」


 こうしてわたしとぴぴは、小鬼の地下基地攻略のために、熊さん達と組むことになった。でもそのまえに、一度補給にはぴのいるミニぴぴぷちゃ号に帰らないとだね!




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