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05



 パジャマで寝たからってこっちで同じ服着てるわけじゃあないのね。


 今まで気にしてなかった、そんなどうでもいいことを思いつつ、

 あの少年の前で気を失ってからどれくらいの時間が過ぎたんだろうと考える。


 時計もなければカレンダーもない。

 いや、暦がどうなってるのかわかんないけども。


 こっちではずっと絵としか向き合ってなかったからなぁ。

 薄暗かった部屋もうろうろしてたら明るくなってきた。

 赤外線センサー付き家電みたいで便利。


 テラスのガラス扉を開ければ群青色の空。星もきれい。

 そういえば、窓を開けたのがことの始まりだ。


 あれ?封がどうたらって窓がきっかけ?簡単すぎない?

 いや、中に私が居たから簡単だっただけ?


 ひんやりとした風が入ってきたので

 扉を閉めようとしたら闇から黒い塊がぶわっと脇を通り抜けた。



 しなやかな曲線をもつ、美しい黒ネコ。


 

 ・・・いいえネコじゃないネコ科の肉食獣ぽい何か。

 だって私より大きいんだもの!


 通り過ぎたネコは視線だけ外さずこちらに向き直る。

 うーん、狩られる側の気持ちかしらこれは。

 怖くはないけど動けない。


 ああ、怖くないのは目がきれいだからなのか。

 あの少年は少し翡翠っぽい青だったけど、このコは本当に青。

 地球は青かったって言いたくなるような青だ。


 たぶん、私はニヤけていたんだろう。

 私の美しいものを見た!という嬉しさが伝わったのか

 ゆっくり伏せの状態になってこちらの様子を伺っている。



 近寄っていいのかもわからず、しばらく見とれていたら尻尾がゆらゆらしている。

 うーん、可愛いかもしれない。デレてないかコレ。


 こちらも驚かさないようゆっくり座り込む。

 ああ、目線の高さが少し近づいた。なんだかドキドキする。

 未知との遭遇!異文化コミュニケーション!?

 ああ頭の中が高2病でももういい…!



 さぁおいで。



 膝をぽんぽんとして手を広げてみれば

 ほふく前進するかのようににじり寄って、

 最後はするっと立ち、頬擦りしてくれた。


 ああずっとこうしたかった!


 ふわふわするし、あたたかい。


 ああ、色だけじゃなくとうとう温度まで。

 涙がこぼれそうなくらい、嬉しくて震えた。

 


 黒ネコちゃんとは朝が来るまで一緒にくっつていた。

 撫でながら色々話しかけてみると耳がピコピコ動いていて、たまにビクッと顔を上げるもんだから

 本当に話を聞いてくれているみたいでなんだか楽しかった。


 こちらに来て初めて、絵を描く以外の幸せを味わった気がする。



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