02
「あ、起きた」
瞼を開ければ綺麗な青い瞳に見つめられて大丈夫かと心配されている。
「大丈夫かと言われたら何もかも大丈夫じゃないわ」
喉が痛くて声がカサカサする。
本当にどうなってるんだろう。
ここ何年もこの夢の部屋は私ひとりきりだったし、
発話することなんてなかったし
生き物がいるなんてこともなかった。
「あっ黒ネコ…」
窓の外にいた大きな黒ネコは居なくなっていた。
開けていた出窓からひょこっと掴まり立ちして覗いていたのを見つけて
椅子をおもいっきり後ろに引いてそのまま倒れたんだっけ。
手渡された水を飲んでちょっと落ち着いてきた。
「というか、あなた誰」
夢で自分以外が出てくることも今までなかった。
ついでにいうと果物以外が色付いている事もなかった。
多分、食べ物は頭の中でこう!っていう強い思い込みがあるから
りんごは赤かったしバナナは黄色かったんだろうけど
特にこだわりのないカーテンは薄いグレーだしテーブルは少し濃い目のグレー。
いや日本のマンガ文化で育ってるから白黒世界の美徳もわかってるけど
「―――――って聞いてる?」
「ごめん、全く聞いてなかった」
ふぁああぁ…ちゃんと見れば愛らしい少年がぷくっと膨れて水差しを持っていた。
うん、お水おかわり!
しょうがないなぁ~と甲斐甲斐しくきちんとカップに注いでくれる。
「ここはねぇ僕んちのアトリエ。正式にはおじい様が使っていた隠れ家かな」
あ、ていうかこの家ベッドあったんだ。
ふんふんと聞きながらまわりを観察していく。
そういえば気にしたことなかったな、絵のまわり以外。
「まさか別荘地の森の中にもこんな建物あったなんてびっくりしたよ」
「あら、まさかのお金持ち発言」
「え、僕らのこと知らずにここ住んでたの!?」
住んでるというかなんというか夢のなかじゃないの?とか言っていいのか悩むとこだけどどうしたものか…
「あー…ほんとにおじい様の宝物なんだー…」
いや、君のおじいちゃん知らないし。
「おじい様ってね、好物は最後まで食べないし大事なものは宝箱に入れて隠しちゃう人なんだって」
ふんふん、私は食べたいと思った時に食べるけどね。
モチーフの中にあった梨に齧り付く。
「うわぁ皮くらい剥きなよー…でね、そういう人だから隠れ家っていくつかあるはずなんだけど見つからないんだよ」
えー、登記簿とか調べたらわかりそうなもんじゃあないの~?
グラスにいくつかのフルーツを沈めて果実水にしてみる。
うわ!夢でも美味しい!美味しいのも初めて!嬉しい!
「トウキボって何それ~?封が施されている所って基本的に本人以外見つけられないじゃん」
むしろ封ってなにそれですよ?
「でもお姉さんが動き出したからなのかな?中から術式が崩れたのかも」
なんだかどんどんファンタジックな話になってきて早急に目覚めたくなってきたよお姉さんは。
「でね、うちの従者が見つけてきてココ教えてくれたんだぁ」
あれか開いてる扉からチラ見えしてる尻尾の持ち主のことか。
「ここ王都から3日ほど離れたエンデ領なんだけどどうする?多分お姉さん呪われてるし術解きに王都いく?」
お姉ちゃん日本に帰る!