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01



 握り締めた手のひらの中を確かめると

 絶望と喜びの塊がそこにあった。



 皆さんはスケッチやデッサンというものをしたことがあるだろうか。

 美術の授業で鉛筆や木炭で描くアレ。


 中学校の授業でも一度は5分や15分くらいやったことあるやつ。

 スピード勝負で白い画面に何かが出来上がっていくのが私はたまらなく好きだった。

 それまでは絵を描くとか興味が無かったのに

 進路で美術科がある高校を選びたくなるくらいには美術の成績も上がった。


 でも結局は普通科の高校へ進学した。


 理由は起きている時まで疲れたくないから。


 中学の時クロッキー帳を1日1冊、

 それが20冊を超えてお年玉がどんどん目減りした頃

 私は夢を見るようになった。



 大きな白のキャンバス、その奥のテーブルには沢山のフルーツや石膏像のモチーフ。



 さすが私の夢!完璧すぎる!

 私はその空間の虜になった。


 消しゴム代わりのパンをたまに齧りながら絵を仕上げていく。

 

 こんなに幸せでいいのだろうかと

 満足いくものがもうすぐ出来上がるというところで目が覚めた。


 正直ハァハァしたし悶々とした。

 毎回寸止め状態。

 次、眠った時にそのまま続きを描ける時もあれば

 部屋の片隅に完成品が放置されている時もある。

 

 正直スッキリしない。

 しかも夢の中の体感時間と、睡眠時間は同じくらい。


 6時間じっと座ってデッサンしていた時と同じ疲労感が残っていて

 6時間寝た気が全くしない。


 でも眠ればいつも絵を描く理想的な夢の環境が整っているんだから

 完成できようができまいが用意された椅子に座ってしまうのだ。



 そんなこんなで進学は普通科の平凡な高校生で満足している。

 美術科のある学校へ進学した同級生もいたけれど特に羨ましいとかなかった。

 指導されて上手くなりたいとか色んな絵が見たいとか無かったことに気付けた。


 ただただ欲望を吐き出したいだけの衝動が形になったものを人様には見せられない。

 しかもそれはただのデッサンで絵としてはつまらないものだ。

 

 それに賢者モードの穏やかな私はそれなりにモテて、彼氏もいる。

 現実に何ら不満はない。



 なのに今朝は手のひらに小瓶を握り締めている。

 私はこんなものを買った覚えもないし、

 普段の私にこれをプレゼントするような人は、いない。



 小瓶の中には、ラピスラズリの粉。



 目覚めたはずの私はまた意識を手放した。



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