魔王様は勇者に予定を持ってくる
新章。漸く本格的に話が進みます
魔王の息子になって、早3ヶ月。
厚意で勉強なんかもさせて貰いながら、だいぶ現在の生活にも慣れてきた。
「お兄ちゃん、もう一枚頂戴?」
「わたしもー!!」
「おにぃちゃんだめー?」
「うーん、もうみんな、2枚は食べましたよね?これ以上は晩御飯食べられなくなってしまうから、少しだけ我して下さい」
そして、腰のあたりにしがみつき、おやつの追加を強請る妹となった子達の扱いにも慣れてきた。
ちなみに本日のおやつは型を使ってぶ厚く焼いたホットケーキの上にたっぷりの生クリームとベリーを添えたもの、粗く潰した苺を混ぜた牛乳です。
ちなみに牛はミノタウルスを家畜化したものだとか。
「えー!!だって美味しいもん」
「それは嬉しいけれど、晩御飯の方が大事だからダメです」
「なんで?」
「それはまだみんなが小さいから、ちゃんとパンやお肉や野菜を食べて、大きくなる準備をしないといけないから、ですよ」
むう、可愛らしく頬を膨らませる子達の頭を優しく撫でてから、結局は大人しく持ってきた皿の片付けをしていた時か。不意に玄関が開く音が聞こえた。
「あれ、お帰りなさい。早かったですね」
「ただいまー!!君に紹介する人……あ、もしかして今日ディートリヒ君がおやつ作ってたの?」
「そうですよ」
「いいなぁ……お腹すいた……」
ひょっこりと台所に現れたのは魔王様こと父さんであり、その表情は少しだけしょんぼりとしている。
というか少し早めの昼御飯食べてすぐ出かけて、今お腹すいたとはこの人は若干燃費が悪いのだろうか。
「あー、ちゃんと晩御飯食べきれるならサンドイッチくらいなら作れますよ……?」
「いいの!?食べるー!」
一転、嬉しそうなその人。
取り出すは一本のナイフ。
少しばかり宜しくないが、皿の上で切り込みを入れた丸パンに、バターをしっかりと、辛子を少々塗りこんでから簡単にチーズ、ハム、瓶詰めのピクルスを挟み込む。それを二つにあとは、冷却魔道具から取り出した野菜のジュースを注いで差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう!」
テーブルに着くとおやつだー、なんて言いながらぱくつき始める魔王様。
そういえば先程何か言いかけていたが、おやつよりもそちらがメインで帰ってくるなり俺のところに来たのではないのだろうか。
「そういえば父さん」
「ふぁふぃー?(なにー?)」
「さっきの、人の紹介云々ってなんでしょう?」
「あ、それはね」
ごくん、飲み込んだ彼の皿の上はもう既に空。
すごく食べるのが早い。どうなっているのだろうか。
「君と対になる魔王の子がね、漸く君と会う決心したから明日将来の話し合い来いって」
「また唐突な」
「お手紙も受け取ってるよ」
「それはまた、」
はい、渡された手紙は愛らしいピンクの封筒に何故かご丁寧に俺の国の言語ででかでかと果し状と書かれている。
この状況下であると、話し合いというより話死合いといった風情か。
「大丈夫なやつですか?」
「大丈夫。君の剣の腕があれば十分あしらえるから。あ、時間は日の四刻半ね」
「場所は?」
「案内するよ」
かるーく言われた明日の予定に、俺は内心不安しかないのだった。
取り敢えず今晩の剣の手入れはいつもより念入りにしておこう、そう心に誓った。
補足
日、月ともに六刻づつ、一刻二時間。
ちなみに一砂で一分、六十砂で半刻。そんな感じで。秒は考えていない
ただこの人たちの感覚では大体一時間単位でお約束するので半刻より下はあんまり使わない。
次回:待望のヒロイン登場!
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