~夢の案内人と夢の番人~
今回はかなり短めです。
次回は長く書くので許して下さい……。
弥美は夢ノ世界の住民となり、現実世界の弥美はというと、ずっと眠ったままで、目を覚ますことはない。……そう、永遠に。
だって、現実世界にある弥美は、ただの抜け殻なのだから。
このまま、弥美の抜け殻は腐っていき、なくなる。
だってもう死んでいるのだから。
僕が弥美を誘惑し、夢ノ世界へ陥れた。
あははは!! 馬鹿だなぁ!! あれは単なる、作り物に過ぎないのになぁ……!! それを本物のように言ってさ……!! 滑稽にも程があるよ!! あはははは……!!!
”……っ。あれほど警告したっつうのに……。夢ノ世界は幸せなんかじゃないと……。地獄なんだと。……あいつの演技に騙されたか……弥美。”
”弥美はよく夢ノ世界に来る常連だった。”
”それで、夢の案内人とやらは、弥美に目を付けたんだ。”
”だから、俺は夢の案内人の邪魔をするため……夢ノ世界に来ないように、悪夢を見せた。”
”だけど、夢の案内人は弥美の手を握ってしまった。”
”夢の案内人は、俺と違って、喋りが上手く、説得力もある。”
”だから、夢の案内人の元に行ってしまえば、もう終わり。”
”夢の案内人に、説得されて、現実の世界に戻った奴は誰もいない。”
『……すまん、弥美。お前を現実の世界に戻せなくて……』
ふふふ。
夢の番人が悔しがってる。
僕はその顔が見たかったんだよ。
「……君の今の表情、凄く最高だよ? 幸?」
『……っ!! てめぇ……!!』
「はいはい、怒らないの。君だって、寂しいでしょ? こんな広くて素敵な世界なのにさ、住民が僅かしかいないんだよ? 寂しくない? だから、現実世界の人間を住民にして、この世界を賑やかにしてるんだよ? 感謝して欲しいぐらいだよ?」
僕と全く同じ顔なのに、性格が真逆で、真っ黒な髪をした夢の番人、幸は僕の言葉にさらに怖い顔になる。
……ふふふ、君は不器用だけど、反応は素直なんだよね……。
……あ、僕は白い髪だよ。ほら、天使みたいでしょ? ふふふ。
『……夢ノ世界は、別に住民なんていらねぇ。俺とお前だけで十分だ。これ以上はいらない。……何故お前はそれを分かってくれないんだ……』
「うるさいなぁ。黙っててよ!! 君には僕の気持ちなんて、分からないよ!!」
僕は幸を突き飛ばした。
……ドッ!!!
鈍い音が鳴る。
突き飛ばされた幸は、力なく倒れる。気を失ったようだ。
「……ふふふ。これでしばらくは邪魔入らないな。よし、今のうちに、住民を増やすぞ~」
夢ノ世界はね、とても幸せな所なんだよ。
君の理想・夢が全部、実現するんだ!! 素敵でしょ?
でもね、夢から覚めたら、それらは全部無くなっちゃうんだ……。
現実の世界は、碌なことがない。
不幸なことばかりで、君を苦しめる。
嫌になっちゃうよね?
ならさ。夢ノ世界においでよ!!
此処には、君を不幸にさせる者・出来事は何もない。
ずっと幸せなんだよ? いいでしょ?
僕が君の幸せを保障してあげる! だから……。
現実の世界なんか捨てて、こっちに来なよ。
”……逃げ……ろ……幸が……あいつが……暴走……す…………”