~夢ノ世界~
御待たせしました……。
夢ノ世界はね、君達の思う……理想の世界を作れる…楽しい所だよ。
夢はね、君の思うように出来るんだよ。
だから。
名一杯楽しんでよ。
僕が作った世界。
「……きて……起きて!!」
声が聞こえ、私は目を開ける。
此処は……夢だろうか。こんな夢見るのは久しぶりだ……。
やっと……普通の夢が見れる……。死ぬ前に……。
「やっと起きてくれた!! ようこそ、夢ノ世界へ!! さぁ、想像してごらん。君の幸せな夢を」
そう少年が言った。
不思議な夢だ。
「夢の……世界……?」
「そう! 今、現実では君は眠っているんだよ。此処は夢!! 君の思う、理想の世界を作り出す場所だよ。……君は今までずっと……悪夢に苦しめられていたんだよね……?」
何とも不思議な夢……。この少年が言うに、どうやらこれは悪夢じゃないらしい。
……って、あれ? 何でこの人……私が今まで悪夢に苦しめられてたこと……知ってるんだろう……?
「……どうして知ってるの……?」
「それはね、君を苦しめて楽しんでいる奴がこの夢ノ世界にいるからだよ……」
苦しめて楽しんでいる人……? どういうことだろうか……?
それにしても……やっぱりこの夢……不思議だ。
夢ノ世界……? そんな世界なんて……今まで聞いたことない……。
それに……何か眠っているような眠っていないような感じがする。まるで……これが夢じゃなくて、現実に起きているような……。
だけど、さっき少年が言ったように、現実では死ぬ前に一眠り……と、ベッドに寝転がって、眠りに落ちたはず……。だからこれは夢。……変な夢。
「まず、此処はさっきも言ったけど、夢ノ世界。現実ではない、夢の世界。だから、夢ノ世界を出る時……つまり、現実の君が目を覚ます時……この世界で起きた出来事はあまり覚えていないんだ。その代わり、起きた時に幸せな気分が心に残るんだ。夢ノ世界のことも忘れる。僕の存在も、〝あいつ„の存在も……。夢は、夢見る人達を幸せにするためにあるんだよ。記憶に残すためじゃないし……苦しめるためじゃない……。だけど、“あいつ„は分かってくれないんだ……」
少年が何度か呟く“あいつ„。
「……“あいつ„って……。その人が私に悪夢見せてたのね……?」
「察しがいいね。……そう、“あいつ„が君に悪夢を見せているんだよ。夢の番人……としてね」
「夢の……番人……」
「夢の番人は夢の価値を重視して……現実に戻っても、記憶に残るような夢を提供しているんだよ。最初は彼も……幸せな夢を見せてたんだ……。だけど、ある時から……“あいつ„は……覚えられない夢を提供しても意味ないって怒り出して……。それから彼は……最も記憶に残る悪夢を提供するようになってしまったんだ……」
悪夢を見る側も辛いけど、夢を与える側も辛い……。そう言ってる気がする。
“辛いのは分かるけど……。„
そう少年が小さく呟く。
きっと夢の番人は忘れられる悲しみが大きかったのかもしれない。その悲しみを怒りに変え、忘れられる悲しみを隠し、強がった。……そして私にも。
「……あっ、ごめん! 僕、名乗ってなかったね……。僕は夢の案内人、幸。君に合った、幸せな夢を提供する者だよ。短い間だけど……よろしくね!」
少年……幸は笑った。だけど、どこか悲し気だった。
幸も……辛いんだ。忘れられるのが……。
「君は名前、何て言うの?」
その問いにはっと我に返る。そうだ……名乗らせておいて、自分の名前を言わないのは失礼だ。
「……私、弥美……。夢川弥美……」
正直、この氏名はあまり気に入ってない。
名字は仕方ないにしろ、名前が……。弥美はちょっと……。
「そっかぁ。弥美ちゃんって言うんだね。今時の子にしては、珍しい名前だね。今まで、僕が夢を提供してきた子で、その名前は無かったよ」
そう幸は言った。それはそうだろう。こんな名前付ける親なんて、うちの親以外、誰もいないだろう……。どんなセンスしてるんだ……。弥美って名前は、「病み」とも言える。……もしかして、この名前のせいで、私は不幸な目に合っているのではないだろうか……。
「それはそうと、弥美ちゃんにとって、幸せは何かな? 想像してみて!」
私にとって……幸せ……か。生きてても辛いだけだし、幸せと思う唯一のことは……
「なるほど……。君は、両親と幸せな日々を過ごすことが、幸せと感じる瞬間なんだね。分かった! 弥美ちゃんの幸せ、作ってあげる!!」
そう言うと、幸は目を閉じる。すると、少しずつ形作られていく。
「もう少しで出来るよ」
家が作られる中、ふと人が見えた。二人。
それはずっと会いたかった……私の両親、そのものだった。
引き続き、更新は遅めになると思います。
気長に御待ち頂けると有難い限りです。