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異能協会×ワールドプレット  作者: 来栖 稚
無彩色ユニティッドフロント
38/42

幕間 日沖翔成に関する解

「なにしてんの?」


 四月の末、夕方の街、ほとんど横暴の勢いで割り込んできて、翔成を睨んだ少女。それが初対面だった。けれど見た瞬間にはっとした―見覚えのある制服にSEEPのバッジ、ヒイラギ会に電話で伝えられていた特徴。三月に裏界隈に突っ込んできたとかいう女の子だ。


「なにしてんの、って訊いてんのよ」


 最初、シチュエーションから逆算して、これは町中で怒鳴られている翔成に助け舟を出しに来たのだと思った。ところが、彼女は明らかに日沖翔成のほうを睨んでいて、声のでかい酔漢のほうには目もくれなかったし、突然SEEPの登録番号を宙に描いて手のひらに炎を燃やし、ほとんど片手間に肝をつぶさせて追い払ってしまったのである。そのとき背後でもう一人、一連の流れには俺は一切関係してないです、という顔をしている少年も聞いていた特徴に適うことに気が付いた。


 色々問いただしたかったが、そもそも何から訊くべきなのか分からないことだらけだった。


「あの……うっかりすると今のあなたが悪役じゃないですか?」


 ごくりと唾を飲んで尋ねると、少女はふんと鼻を鳴らして言った。


「ヒーローやってるつもりはないもの」


 つまり彼女は、翔成に腹を立てて割り込んできたというわけなのだった。被害者を助けるとかそういう義憤があったわけではなくて、ぼんやりしていた翔成が「気に入らなかった」から。


 その瞬間、あ、ヒイラギ会になんとなく従うのをやめよう、と思った。ごく自然に、それがまるで短く繋がった論理的解であるかのようにすぐに思った。


 こんな女の子を探って惨めじゃないのか? ふんわりしたアンチヒーロー気取りで父親の真似事をするだけ。この連中だったらそうはしないだろう。嫌だと思ったら従わないはずだ。


 それはほとんど翔成の夢物語による、勝手な決めつけにも近かった。


 特別な、選ばれた彼らには変わったことができて、日沖翔成に何ができないことがある? 同じ中学生だ。何が違うっていうんだ。おれだって前提を変えてやる。おれだって、普通じゃなくなってやる。


 悔しかった。いつまでも真面目で普通の、一人では何もできないいい子であるのは。




 今、ようやく答えに辿り着いた。どうしたらその悔しさと向き合えるのかって。

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