幕間 今回のワールドプレットです
「一、二、三、四、五」
適当な無茶による痛みに顔をしかめてピストンを最後まで押し込む。放り捨ててハンカチで押さえながら、目を閉じて「イメージ」。想像できることは実現する。
「六、七、八、九、十」
まずはハンカチの下から疼くような痛みが消えて、すっと緊張が解けた。まだ残る心拍の速さを汗と一緒にぬぐって、今度は手のひらを見つめる。協会式の基本は目に見えること。
ぼう、と手のひらの上で青みがかった光が灯った。
「十一、十二、十三、十四、十五」
小さく手首を動かしながらイメージを調整すると、光がゆるやかに渦を巻く。明るさとか、大きさの変化を次々に想像する。一拍遅れて青い光の姿が変化するのを見つめる。
息を整えて、「敵」の姿を思い浮かべた。
ばちり、と青い光が紫電のように弾けた。
「二十」
そこで終わりだった。
手のひらの上にはひりひりとした痛みが残っていた。それは最後の帯電のせいかもしれなかったが、たぶんどちらかというと、慣れない超常現象の根源に晒された、ありふれた人間の身体の痛みだった。
小さな笑みが零れた。
「この程度の力で」
感覚の痺れた右手をゆっくり握って開く。右腕全体、そこから全身へ、鼓動に押し出された熱い血が一挙に通う。
同時に嘔吐感が腹の底を突きあげて喉をえずかせたが、再び拳を握りしめて耐えた。
「二十秒で、前提を変える」
握りしめた拳にようやく感覚が戻って、自分の爪が痛かった。




