物語はプロローグを迎え、私はモノローグを見る
ーー夢は跡を継いで料理人になること。
そう夢見ていた数時間前の私が懐かしく見えた。
その夢は、夜空の星々に連れて行かれたかの如く散っていた。
歩く気力を失い、地面に這いつくばった私は汚れた自分の手を夜空にかざす。指と指の隙間から儚げに私を見つめる星々がより一層光を放っていた。
「私は……」
星々の光は徐々に擦れ、夜空は薄ぼんやりとしていく。
そのまま擦れた夜空を見上げていると、ほのかに顔に涙が滴り落ちていく感触を感じた。
……ああ、私は泣いているんだ。
私はその夜空にかざした泥だらけの手で涙を拭った。
その手を身体の横に置くと、私は目を瞑った。
ーー私は、一体どの位歩いたのだろうか? 実は私は意味もなく道無き山を歩いてきたのだろうか? この足掻きに意味はあったのだろうか? もしかしたら、この足掻きに意味なんてなかったのかもしれない。
そんな私を、私は笑った。その壊れそうな笑い声は擦れ、無性に涙が溢れ出してくる。
私はこの涙がどの感情によって出ているのかすらわからなくなっていた。
ーー私は瞼の中という闇の中で眠りについた。
これがプロローグです。0話はプロローグではありません