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花守の魔法使い  作者: 夏目璃子
第1章
5/8

「───あっ・・・ナギ」

「何ですか?」

「あの人達にレンカの事まだバレてないよね?」

「はい、大丈夫かと」

「それならいいんだけど・・・・」

「別にバレても良いのでは?」

「うん・・・・だけど、今のレンカを会わせたら野生の本能で抹消しかねないから・・・・・・」

『野生・・・・』


 目を逸らし情景を思い浮かべているのか、苦渋な顔つきのアルヴィスにナギは少しばかり同情していた。

 同じ森の中に居ながら、立ち合う事が出来なかったナギは、アルヴィスと彼女の間に一体何があったのかと懸念していた。

 花守の存在を知って日はまだ浅いが、彼女のこれまでの行動を見て野性的だと言ったアルヴィスに対し、ナギ自身も一理あると思ったのは事実だ。

 誰よりも彼女の事をアルヴィスが一番気に掛けているのに、今一番酷い事を言っているのは他の誰でもなく彼のような気がする─────。


「彼女をかたくなに生徒にしたいというのはそのためですか?」

「それもだけど、彼女に友人を作ってもらいたいんだ・・・・仲間と呼べるものをね」


 アルヴィスの言っている事は本心であり、花守と出会う前から語っていた切実な願いだ。

 それを知っているナギも黙ってアルヴィスの話に耳を傾ける。


「レンカは花の守護者。ずっと森の中にいたんだ・・・・たった独りでね─────」


 それは仕方がない事と言えばそれまでだが、アルヴィスの中で花守という存在は測り知れない大きなものなのだ。


「彼女も我々と同じ人の子だ。ただ花守と言うだけで、一人が寂しくないわけがない・・・だから保留にしてたけど、正式に生徒になって打ち解けてくれたらいいと思ってる」

「生徒としての話は別ですが、貴方が望んでいるようになればいいとは思いますね」


 ナギの言葉を聞くなり勢いよく立ち上がると、おもむろにナギの手を取りアルヴィスは妖しく微笑んだ。


「やっぱり君もそう思うだろう・・・そこで提案なんだけど、ナギにレンカの個人的な指導者としても動いてもらおうと思ってる。君そういうの得意そうだから」


 ナギは理解するまでに数秒かかった。

 幼い頃からアルヴィスの側で仕え、今は一人の教育者としてもこの学園にいる。

 でもそれは彼が此処に居るからであり、そもそも彼女自身がそんな事を望んでいるとは思えない。

 つまりこれは、彼の勝手なお節介だ──────。

 森から彼女を連れて来た時にも、アルヴィスに同じような話をしたはずだ。

 彼の身勝手さにまたしても先が思いやられるナギは、盛大に溜め息を吐いた。


「・・・・嫌だと言っても、生徒にするんでしょう貴方は」

「うん」


 素直に頷いて見せるアルヴィスは本当に嬉しそうで、ナギはこれ以上断れないと悟った。


「仕方ないですね、やるだけやってみますよ。指導者としてはともかく、彼女の生徒としての行動を見たうえで判断させてもらいます」

「それで構わないよ、ナギのやり易いようにするといい。そうと決まれば色々準備しなければ」

「準備?」

「午後からレンカと買い物に行こうと思うから、後の事はよろしく頼むね」

「彼女を学園の外へ?」

「俺が側に居るから平気さ」

「貴方の事が一番不安ですけどね」

「え?」


 何故不安がるのかと首を捻るアルヴィスにナギは何度目かの溜め息を吐いた。


「・・・・分かりました。貴方の、理事長らしい行動を期待しています」


 嫌味のように冷静に言い放つと、机に積み重ねられていた書類の束を持って理事長室を出て行った。

 手を振りナギの後ろ姿を見送ると、アルヴィスは緩む口許を手で覆った。

 どこをどう聞いてもアルヴィスには彼女に嫉妬しているようにしか聞こえず、ナギの口ぶりがおかしくて暫くの間理事長室からくすくすと笑い声が響いていた──────。


  ***


 翌朝になり、授業再開の報告を受けた生徒二人は慌ただしく準備をしていた。

 そこへ勢いよく扉を開け部屋に入って来たのは、てっきりまだ寝ていると思っていたレンカで、驚きのあまり着替えていた手が止まる。

 だがレンカはこちらに気付いていないのか見向きもせず自室の中に消えてしまい、虚しさだけが二人に残った。

 自室に戻ったレンカは、そのままベッド脇の椅子に腰掛けるとベッドの上に無造作に置かれていた本に目が止まった。

 怒りや驚きのあまり、感情をコントロール出来ないまま思わず走って部屋に戻ったため、息も絶え絶えになっていた。

 ひとまず心を沈めようと気持ちを切り替え、レンカは書庫から持って来た本を読もうと薄暗い部屋に明かりを灯す。

 居間では二人が忙しなく行き来する音が漏れていた。

 レンカはふと先ほどの二人の顔を思い出した。

 驚く二人に気付いてはいたが敢えて気付かないふりをしたのだ。

 どうにも、まだ二人の事を認める事が出来ない。

 それは、今までずっと独りで居たのと、二人との出会いが異質なものだったせいで無意識に避けているからだ。

 レンカにとって初めてな事だらけで正直混乱している。

 次第に考える事すら嫌になり触れていた本を手に取ると、開きっぱなしで放置していたままの本を手に取り頁を読み進めていった。

 いつの間にか、部屋に一人となっていた事も気付かずにレンカは読書にいそしんでいた。

 その中で、事実とは異なるレンカの知らない花守の姿と人物が物語の中には何人か登場し、どの書物も似たような話だが根本的な内容が少しずつ違っている事に気付いた。

 レンカはこの違いに興味を持ち、他の書物はどう記されているのかと思い至り、もう一度立ち入り禁止の地下へ向かおうと決めた。

 読んでいるうちに、昨日から何も食べていない事に気付き何か無いかと居間へ出ると、何故かソファーにアルヴィスが腰掛けていた。

 本に集中し過ぎて気配に気付けなかったレンカは、にこにこと笑みを浮かべこちらを見ている彼を睨み付け警戒する。

 出会った時からそうだが、どうもこの男の行動は読めない。


「やあレンカ、本はもう読み終えた?」

「・・・・・・」


 レンカは自分の行動を見張られている事に苛立ちを覚えていた。

 そんなレンカに気付いていながらも、アルヴィスは気にする事なく近づいて来る。


「来るな・・・・」

「そのお願いはちょっと聞けないな」


 まともに彼と話をしても無駄だと判断したレンカは、踵を返し自室へと向かうが彼が易々と逃がすはずもなく、背後から腕が伸びてきたかとおもえばレンカの体を引き寄せ軽々と担ぎ上げた。


「ちょっ・・・離せ!?」

「だからそのお願いは聞けないって」


 手足をバタつかせ腕の中で暴れるレンカは、いつの間にか部屋から出ていた事に気付き顔を上げた。

 レンカの拳を背中に受けながら彼女に触れられる喜びを噛みしめていたアルヴィスは、急におとなしくなったレンカを横目に見て微笑んだ。

 逃げられないと諦めおとなしくアルヴィスに抱かれたまま長い回廊を進み外へ向かう。


「どこへ連れて行くつもりだ・・・・」

「ちょっと街まで買い物に」

「買い物?」


 何故いきなり買い物をするのか考えているうちに、校門前に馬車が待機しているのが見えた。


「少し遅くなったけど、今日一日俺とデートだからそのつもりでね」

「・・・・・・」


 アルヴィスは一言そう言い残し馬車に乗り込むと、聞き慣れない単語にまたしても固まったままのレンカを当たり前のように膝上にちょこんと座らせた。

 状況を理解するまでに数秒かかり、にこにとこちらの様子をうかがっているアルヴィスと目が合うなりレンカは慌てて膝から飛び退き向かいの席に移ると勢いあまって窓に後頭部をぶつけた。

 鈍い音をたてたレンカを心配して触れようとするアルヴィスに、レンカは鋭い眼光で睨む。


「来るな・・・!」


 狭い馬車の中で、近づこうとするアルヴィスの肩を足蹴にレンカは拒絶すると、アルヴィスは名残惜しそうな表情を見せ、仕方なく外に向かって軽く合図を送ると、ゆっくりと馬車は動き出した。


「急に連れ出して悪かったね、買い物に行く理由なんだけど正式に君を生徒に迎える事が決まったから、皆の気が変わらないうちに外堀から埋めようと思ってね」

「いつそんな事頼んだっ、帰る!」


 勝手な事ばかり言うアルヴィスを一瞥し、走る馬車の扉を開けようとするレンカを慌ててなだめる。

 それでも怒りが収まらないレンカに、アルヴィスは魔法で彼女の手足を封じた。

 レンカは無理矢理魔法を解こうと暴れるが何故か解くことが出来ない。


「くそっ、離せ!?」

「言葉遣いが悪いよレンカ、目的地に着くまでおとなしくしてくれたら離してあげるから少しの間我慢しててね」


 一方的な理屈に嫌気が差し盛大に舌打ちすると、縛られた足でアルヴィスを蹴り外の方へそっぽを向きそのまま喋らなくなった──────。

 街中に入り、互いに話す事もなくすっかりおとなしくなっていたレンカだが、仕立屋と書かれた看板と、店内から見える屈強な人影を見て馬車が停車するなり、ようやく魔法が解かれた足で器用に扉を開け逃げようとした処をすかさずアルヴィスに抱きかかえられ店の中へと入った。

 店の中はこじんまりとしたごく普通の仕立て屋で、レンカが見たあの人影は何だったのかと首を傾げていると、突然店の奥から上擦ってはいるがどすの利いた声が店に響き思わずびくりとしてしまう。


「やあ、久しぶりだね」


 緊張しているレンカをよそに、アルヴィスは店の奥に向かって話しかけた。


「あら、誰かと思ったらアルじゃない!全然会いに来てくれないから私寂しかったのよ」

「それはすまなかったね、学校の理事長も楽な仕事じゃなくてね」

「貴方の仕事はそれだけではないでしょう?」

「あれ、何で知ってるの?相変わらず情報早いね君は」

「もうっ、ちゃんと名前で呼んでよ!マリアって名前があるんだから」


 和気わきあいあい々と話をしながら徐々に近づいてくる影は、先程外から見えた者と同じだった。

 アルヴィスと同じく金髪の髪を揺らし、整った顔には化粧を施しているが姿形は明らかに男でレンカはぽかりと口を開け凝視する。

 女物の服から見えている手足は細見だがたくましい男のもので、何故だと言わんばかりに偽物と思われる形の良い胸元を強調しアルヴィスの腕にしがみついてきた。


「今日はアル一人?あの堅物男いないのね?」

「堅物・・・?ああ、ナギのことか。今日はこの子とデートだから居ないよ」

「デート・・・?」


 指で示しながら、満足気な顔で惚気るアルヴィスを見てパチパチと目を瞬かせるマリアという店主は、反対側のアルヴィスの脇に抱えられたままのレンカを発見すると急に目つきを変え近づいて来たかと思えば筋肉質な太い腕でアルヴィスからレンカを勢いよく引き剥がした。

 その一連の行動にもアルヴィスはひるむ事無くレンカの手だけはしっかりと握り離さない。

 その行動がまた気に障ったらしく、笑顔ではあるがレンカを見る目は殺意に満ちており、マリアから思わず目を逸らした。


「あらあら、カワイイお嬢さんだ事・・・!」

「うん、そうなんだよ!だから彼女に学生服と、よそ行きの物を何着か作ってくれるかい?」

「お安いご用よ!任せてちょうだい、うんと良いモノにするから」

「ありがとう、よろしく頼むよマリア」

「アルの頼みなら何だって聞くわ!早速採寸をするから少し彼女借りるわね」

「いってらっしゃいレンカ」


 呑気に手を振るアルヴィスに、マリアは鼻息荒くそう言うとまたしてもアルヴィスにすり寄り、視線だけをレンカへと向けた。

 睨み付けてくるマリアのあざ笑うかのような表情は、人のモノに手出しするなといわんばかりで、勝手に恋敵の標的にされているレンカは迷惑そうに顔をしかめ小さく舌打ちした。

 暫くの間、同士のイチャつきを目の前で見せつけられうんざりしていると、いつの間にかレンカの背後にはマリアの仕事仲間らしき女性が二人ほど待機していた。


「あっ!準備が整ったようね、それじゃあちょっと待っててね」


 マリアは小さく手を振りながらアルヴィスにそう告げると、仲間の二人に目配せで合図をし呆気にとられていたレンカの腕にしがみ付くと逃がさぬようにして店の奥へと向かった。

 中へ入ると、店の表側とは違って雑然と物が積まれた大きなテーブルと、年季の入ったミシンのある部屋が広がっており、レンカは何着もの服が無造作に置かれた長椅子の近くにぽつりと立たされた。


「あんた、レンカとか言ったわね。彼があんたを気に入ってるからって調子に乗らないことね」

「・・・・・・」

「どうせ服もあんたからねだったんでしょ?」


 コツコツとかかとの高い靴を鳴らし巻尺を手にレンカの前に立つマリアは、悪態をつきがらも採寸し始める。

 手を止める事もなく、手慣れた様子でレンカの体を測っていき手際が良い。

 手と同時に口も止まらず言いたい放題のマリアの話を黙って聞いているレンカが、やはり気に入らないようで眉間にしわを寄せながら測った箇所を不機嫌そうに紙に走り書きしていく。

 最後に腕を測ろうと、レンカの服の袖をたくし上げようとしてマリアは急に手を止めた。


「何よこの服、サイズが合ってないの?何でこんな長い袖っ・・・・・!?」

「・・・・・・」


 握っている細い腕を見たまま驚いているマリアから、レンカは咄嗟に腕を退き袖を戻し隠そうとした。


「あんた、その腕・・・・」

「何も言うなっ!・・・・頼むから何も聞かないでくれ」


 苦しげな表情で必死に訴えるレンカに、急な事で思わず手を止めていたマリアは、小さく息を吐き冷静に応じた。


「・・・・・・何も聞かないから、早く腕を出しなさいよ・・・ほら、測れないでしょ」

「・・・!?」

「この長い袖は隠すため?」

「そういう訳じゃない・・・でも今は誰にも見られたくない」


 どこか思い詰めている様子のレンカを見て、マリアは何も言い返せなかった。

 マリアは何となくだが、アルヴィスがレンカの傍を離れようとしない理由を垣間見た気がした───────。


  ***


 一方、店の表に一人残されたアルヴィスは、二人の言い争う声に気付き奥へと繋がる部屋の扉前で様子を窺っていた。

 マリアと何か言い合っている事は分かるが上手く聞き取れず、不安が募っていく。


『二人はいったい何の話しをしているんだろう。さっきから調子乗らないとか、強請ねだる?とか・・・まさか、レンカが可愛いからマリアに襲われ──────!?』


 勝手な妄想を繰り広げ、扉の前で悩むアルヴィスは今すぐ扉を開け仲裁に入りたい衝動に駆られたが、またしても声を荒げたレンカの言葉にアルヴィスは思い踏み止まった。

「何も聞かないで。今は誰にも見られたくない─────」その言葉がいったい何を意味するものなのか、見えずともアルヴィスには理解出来た。

 レンカの胸中を知っているからこそ、扉を開ける事が出来ない。

 開けたところで自分がどうにか出来る訳でもなく、ただ彼女を困らせるだけなのだ。


「何やってるんだ、俺は・・・・・・」


 自分の不器用さに、ぽつりとこぼれた自分の声に覇気はなく、疲れていた。

 不意にナギの言葉を思い出し、これでは理事長としてではなく男としても期待出来ないと激しく打ち拉がれる。

 それと同時に、もやもやとした嫌な感情を持つ自分がいる事に気付きアルヴィスはますます気落ちした。


『マリアは良くて、俺は駄目・・・・?』


 我ながら情けないと思っているが、レンカの事となると相手が誰であろうと形振なりふりなど構っていられないのだ。

 扉の目の前であれこれと悩んでいるうちに、採寸を終えたレンカが姿を現し、アルヴィスは優しく微笑み掛けた。


「あっ!採寸お疲れ様、今から出来上がりが楽しみだ」

「・・・・・・」


 相変わらずアルヴィスには無愛想だが、何故扉の目の前に立っていたのかと怪訝な顔をこちらに向けている。

 そんな彼女でさえ可愛いと思ってしまえる辺り、自分はかなり重症だ。

 程なくして、レンカの背後から何故か化粧直しをしたマリアが戻ってきた。

 レンカの立っていた場所を大きな手で押しのけ、またしてもアルヴィスの腕にしがみつく。

 見慣れてしまった様子のレンカはげんなりとした顔で二人を見ていた。

 アルヴィスはこの場を収めようと、少しマリアと話をするからと言ってレンカに店の外で待つように言うと、おとなしくレンカはそれに従った。


「採寸してる間、レンカと何か言い合ってたみたいだけど、何かあった?」

「そうね、何かって事は無いけど、一つ気になったからあなたに聞くわ」

「気になった事?」

「一部の者の間で噂になってるんだけど、この街の異変・・の事よ・・・・アルなら何か知ってるでしょ?」


 探っているような、試されているようなマリアの鋭い眼光にアルヴィスはにこりと笑みを返した。


「・・・・何の事かな?」

「別にとぼけなくてもいいじゃない、私なりに心配してるのよ・・・彼方の事も、花守の娘の事も」


 驚くことにレンカの正体がマリアにはすでにバレているらしい。それともレンカ自ら話したのか・・・・。


『どちらにせよ口止めしなければ・・・・』


 そう思い口を開こうとしたアルヴィスの唇を、マリアの長い人差し指が封じた。


「口止めなんかしなくていいわ、最初から誰にも話す気ないから」

「・・・・何でもお見通しって事か・・・困ったね」

「私を誰だと思ってるのよ」

「美形だけど、がたいの良い女装趣味を持った変たっ・・・・仕立て屋の店主?」

「あら、喧嘩売ってんのかしら・・・・たぶらかしたわね」

「喧嘩を売る気も、誑かす気もないさ・・・ただ、今は答えが見つからないだけなんだ」

「珍しいわね、彼方が弱音なんて。あの娘が原因かしらね?」

「ずいぶんとレンカの事を気に掛けてくれるんだね」


 アルヴィスは、マリアの視線の先に見えているレンカの後姿にやるせ無さを感じた。


「正体が何だろうと、私は真実を知りたいだけよ・・・・それが私のもう一つの生業だもの」

「さすがと言うべきかな」

「褒め言葉として受け取るわ」

「本当にいつも助かってるよ・・・・。君にも、もう一人の彼にもちゃんと話すつもりだから、もう少し待っててくれないか?」

「もう一人の・・・?ああ、真向かいのけ男ね」


 マリアはどこか納得した様子で、アルヴィスに絡めていた腕を解くと、景気付けだと言いながら背中をばしりと叩いた。

 その勢いで前のめりになりながら軽くせているアルヴィスを見て、満足したマリアは笑い飛ばした。


「あの娘にとって王子様は彼方だけみたいだから、しっかり守ってやりな」

「と、時々君の発言には驚かされるよ」


 これまでに、レンカに対して散々甘い発言を言ってきたアルヴィスだが、いざ他人の口から「王子様」等の単語を聞くと、その破壊力には有無を言わさぬものがあるとアルヴィスは思った。

 それでも恥じる事もなく、どうどうと言い放ったマリアの意味深な発言は、男らしくも乙女の趣向をも持ち合わせているからこそだと感じ勇気付けられた。


  ***


 マリアの店を出ると、その場から逃げる事もせずにぼんやりと何か考え事をしているレンカにアルヴィスは話し掛けた。


「・・・お待たせ。それじゃレンカ、次の店に移動しよう」

「・・・・・」


 アルヴィスは、相変わらず黙り込んだままのレンカの細い手首を優しく握ると、大きな街道を挟んで建つ真向かいにある靴屋へ向かった。

 マリアの店とは違って、殺風景な趣の店は、看板も扉も古く今にも壊れそうで入り難いものだった。

 アルヴィスがそっと扉を開き中へ入ると店の中は色とりどりの靴と、それを収めるであろう木箱が山積みに置かれ何故か店主が見当たらない。

 静まり返った店内をアルヴィスは声を掛けながら探し始める。

 人の気配は感じるが姿が無いためレンカも同じように辺りを見回す。


「おかしいな、どこ行ったんだろう?」


 困った様子でアルヴィスが首を傾げていると、どこからか男性の声がした。

 声のする方へ目をやると、アルヴィスは店の一角を見ながら笑顔で応えた。


「あっ!いたいた、相変わらず存在感が無いね」

「それは僕にとって本望な事だな・・・・」

「でも一人じゃ抜け出せないだろ?」

「すまないが、助けてくれ・・・・」


 焦りを感じるようには聞こえない声の主は、何故か山積みになっていた木箱の中からアルヴィスによって助け出され、すらりとした背の高い男性が姿を現した。

 栗毛色の長い髪で隠れた顔は青白く、顎にはまばらな無精髭を生やし、本当に生きているのだろうかと思うほど生気を感じない。

 男性は軽く服の汚れを払うと、近くにあった丸椅子に腰掛け一息吐いた。

 アルヴィスが何食わぬ顔で訊ねると、靴屋の店主は乱れた髪を整えながら苦笑いを浮かべた。


「怪我はなさそうだね、ずいぶんと店の中が荒れてるようだけど」

「君が来てくれて助かったよ。昨日から店の整理をしていたんだけど、大量に積んでいた木箱に生き埋めにされてそのまま気を失ってしまってね、気がついた時には身動き取れなくて」

「もっと早くに来てれば良かったね」

「いや、自分の不注意が招いた事だから気にしないでくれ」


 靴屋の店主はのほほんと笑みを浮かべながら、ふと扉の前で立ち尽くしこちらを窺っているレンカに気が付いた。


「おや、すまない・・・もう一人お客が居たんだね。君の連れかい?」

「うん。彼女の靴を何足か頼みたくて、いいかな?」


 先程の仕立て屋とは違い、落ち着いた面持ちの彼は、髪の隙間から優しそうな目でレンカを捉えるとふわりと微笑んだ。


「初めて見る顔だね、可愛らしいお嬢さんだ。僕はルイス、此処の店主をやってる者だよ。君は?」

「彼女はレンカだよ、これからうちの生徒になる予定なんだ」

「それでここへ来たのか。それじゃあ、足のサイズを測らせてもらおうかな」


 容姿はともかく、和やかな雰囲気をかもし出すルイスに、レンカはようやく真面?な人物に出会えたと思ったが『存在感が無い』と言われて喜んでいる者を果たして真面と言えるのだろうかと思い悩んでいた。

 アルヴィスと同じぐらいの年だろうか?長い前髪が邪魔で良く見えないが彼もまた端整な顔立ちで、見え隠れする琥珀色の瞳が美しい。

 レンカの足に優しく触れる細く長い指は、職人とは思えないほど綺麗だが、彼の手は冷たく足に触れる度にくすぐったくて、反射的に身を縮めてしまう。

 そんなレンカの様子を横で見ていたアルヴィスは複雑な心境でいた。


「・・・・っ」

「あっ、すまない・・・擽ったいかな?」

「平気だ、続けていい・・・」


 耐えているレンカの頬は少し上気しており、アルヴィスは何かを我慢するように拳をぎゅっと握りしめた。

 全て測り終えると、アルヴィスがすかさずレンカをルイスから引き剥がすようにさりげなく割って入り、自分の背後に彼女を隠すように立った。

 一連の行動にルイスは神妙な表情を浮かべていたが、すぐにアルヴィスの顔を見てにこりと微笑んだ。


「そんな事しなくてもいいのに・・・・」

「・・・うん、そうだね」

「・・・・?」

「それじゃあルイス、靴は後で取りに来るから・・・・行こう、レンカ」

「ちょっ・・・待っ!?」


 急に声音が小さくなったアルヴィスに、背後にいたレンカは怪訝に思ったが、有無を言わさぬうちにアルヴィスに手を退かれ店を出ようとする。

 咄嗟の事で足がもつれバランスを崩しかけたが、アルヴィスが急に立ち止まった事でレンカはそのまま彼の背に突進する形となった。

 二人の様子を困り顔で見送っていたルイスは、ふとこちらを振り替えり駆け寄って来るアルヴィスに気付きどうしたものかと首を傾げる。


「マリアにも言ったけど、ちゃんと話すから。これからの事も・・・だからそれまで・・・・」

「うん・・・大丈夫、解ってるから。いつでも来るといい」

「ルイス・・・・」

「悩み事が尽きないね」

「それはお互い様だよ。でも安心した・・・ありがとう・・・・。みっともないな俺は、君にこんな感情を抱くなんて」

「誰にだって起こり得るものさ、僕にだってある。一人で背負い込む必要は無いよ」


 言葉につまりながら耳元で言われた事に、ルイスはアルヴィスの肩を軽く叩きながら応えた。

 アルヴィスはルイスに励まされた事で心に秘めていたものから少し解放された気がした。

 先程のルイスとレンカのやり取りを見て、自分には無いと思っていた感情を知った。

 頭では理解していても、その感情は自らの意思では抑えられないようだ。

 本当に大人気ない行動をしたと恥じたが、彼曰くその答えも間違っているらしい。


「何だか解らなくなってきた・・・・」

「その答えはゆっくり探すといい、焦らずね」

「悩んでいても仕方ないって事か・・・・君の言う通り焦らず行くよ」


 どこか吹っ切れた様子のアルヴィスを見てルイスも笑みを浮かべながら頷いた。

 男二人がこそこそと何か話している間、一人蚊帳の外となっていたレンカに謝罪をいれルイスの店を後にすると、その他に必要な物を全て買い揃え終えた頃にはすっかり日は傾いていた。

 散々連れまわし、街道をゆっくりと走る馬車の中でぐったりと窓際にもたれていたレンカに声を掛けると、ゆらりと身体を起こし口を開いた。


「靴屋の・・・ルイスとかいうあの男が苦手なのか?」

「え・・・?」

「さっき、二人で何か揉めていただろ・・・」

『レンカにはそんな風に見えていたのか・・・』

「もしかして心配してくれたの?」

「してない・・・」


 相変わらず無愛想で率直な答えだが彼女なりに気に掛けてくれたようだ。

 視線を逸らし応える彼女の表情はどこか恥ずかし気で、先程ルイスの店で見ていたものと同じだった。


『その顔は・・・照れ隠しだったのか』

「その顔は反則だよレンカ・・・・」

「は・・・・?」


 訳の分からない発言にレンカはまたしても呆気にとられる。

 自分は一体どんな顔をしていたのかと慌てて頬に手をあてがう様子を見てアルヴィスは満足気に微笑むと、何だか急に気恥ずかしくなったレンカの頬は更に上気した。

 無自覚だった事にアルヴィスは危機感も覚えたが、最初に出会った頃より少しだけ打ち解けた気がして嬉しく思ったのも事実だ。


「ルイスの事を苦手だと思った事は一度も無いよ、寧ろその逆だ」

「逆・・・?」

「うん。彼は昔からの知り合いでね、俺にとって兄的存在なんだ」

「兄・・・って、同い年じゃないのか?」

「そんなまさか、彼は俺より十五くらい離れてるよ?まあ、間違うのも無理ないか彼童顔だから若く見えるのは確かだ」


 まさかの事実にレンカの脳内は混乱していた。

 今日会った者の中に真面な人間が居ないのと、見た目との違いに理解出来ずにいた。


「そう言えばマリアとルイスは幼馴染なんだ。俺も二人とはとても気が合うし、今度レンカにもゆっくり紹介するよ」


 要らぬ情報だが納得もした。

 アルヴィスという存在だからこその人脈だろうか、やはりこの男には何かを引き付ける力があるらしい・・・・考えれば考えるほどドツボにまって行く気がしてならない。

 そのせいかどっと疲れが増し、終にはレンカの腹の虫が馬車内に鳴り響いた。

 食事をしようとした処を、急に連れ出され食べ損ねた事を思い出したレンカは、咄嗟にお腹を押さえこの男のせいだと言わんばかりに盛大に舌打ちしアルヴィスを睨んだ。

 何か物言いたげなレンカに代わってアルヴィスが口を開く。


「そう言えば俺も食べてなかったな」

「・・・・・・」


 レンカは恥ずかしがっているのか、意地を張っているのか何も答えず決まりが悪いといったような素っ気ない態度を見せる。

 それでも嫌とは言われなかったため、アルヴィスはそれを返事と見なし相変わらずだなと苦笑を浮かべた。


「今日は急に連れ出して悪かったね、付き合ってくれたお礼も兼ねてこのままどこかで食べて帰ろう・・・・本音を言うと、君とまだ話がしたいんだ」

「・・・・・・」

「互いの事を知る、いい機会だと思うから」


 声色を変え、その場の空気が変わった事に気付いたレンカは顔を上げ振り向くと、アルヴィスの真剣な眼差しを真っ向に受け、すぐさま目線を逸らし小さく舌打ちすると再び窓の方へと向いてしまった。


『何か舌打ちが返事みたいになってるな・・・・』

「おすすめの店があるからそこにしよう」


 外に向かって行き先の変更を伝えると、暫くして辿り着いたのは街の一角にある賑やかなパブだった。

 二人して店の扉を開け中に入ってみれば、正直客層はあまり良いとは言えないが近くに住む者達がこぞって集うような場所だった。

 どんな客が来たかと、周りの視線を受けるが気にする事無く店の奥へ進み呑気に微笑んでいるアルヴィスのエスコートで空いている席に着いた。


「遠慮せずレンカの食べたいものを好きなだけ頼むと良い、今日は全部俺の奢りだから」

「・・・・・・」


 今も尚視線を受けている二人だが、アルヴィスは全く気にしていない様子でレンカにメニューの書かれた紙を渡しながら嬉しそうにしている。

 そんな彼と周りとの温度差に、レンカは居心地の悪さを感じてはいるが、それよりも食欲の方が勝り適当に注文を入れようやく食事に有り付いた。

 相変わらずアルヴィスは、何がそんなに嬉しいのかと黙々と食べるレンカを、注文したワイン片手にいつくしむような眼差しで見ている。

 すっかりこの場の空気にも慣れ、レンカが再びメニューの紙に目を通し始めた時、ふいにアルヴィスが話し掛けてきた。


「この店の料理はとても美味しいんだ、俺のお気に入りの店でね。デザートもおすすめだから遠慮せず食べるといい」


 アルヴィスにそう言われ、遠慮なくレンカは料理の追加をするため店の者を呼ぶと、今度はレンカの方から彼に話し掛けた。

 少し落ち着いた事で、ずっと気がかりになっていた事を思い出し理事長である彼ならばと、レンカの方から問い質す事にした。


「結局・・・・学園に、何が居たのか分かったのか?」

「え?いや、まだ何も分かってないよ。急にどうしたの?」

「お前も分かっているだろう、花を荒らした者の可能性と・・・・」

「そうだね、否定はしないよ。だからレンカの事すごく頼りにしてる」


 とわざとらしく片目を閉じながらレンカにそう言うと、アルヴィスは一気にワインを煽り陽気な笑みを浮かべた。

 レンカは酒に酔っていようがいまいが、なに食わぬ顔でこっぱずかしい行動をする彼にどうしようもない奴だと呆れた。

 途中で話を誑かされたため、やけになりレンカがさらにデザートを注文しようと手を上げた時だった。

 突然レンカの背後に数人の男達が立ち並びレンカの腕を手荒く握りしめてきた。


「よお姉ちゃん!お前さん可愛いじゃねえかっ」

「・・・・離せ」

「別に良いだろう、俺達と向こうで騒ごうぜ!」

「ほらっ、こんな兄ちゃんとじゃなくてあっち行こうぜ!」

「断る。その手を離せ」


 男達の方を見向きもせず、レンカが断りを要れても悪乗りする男達は構わず連れて行こうとする。

 あまりのしつこさに、レンカは魔力で対処しようと空いているもう片方の手を男達に向かってかざした時、黙って見ていたはずのアルヴィスの手がそれを遮った。


「駄目だよレンカ」

「っ!・・・何故だ」


 今にも咬み付きそうなレンカにアルヴィスは冷静に応えると、ゆらりと席を立ち男達を一瞥した。

 レンカの手を握っている男は彼を警戒し、レンカを羽交い絞めにする。


「おっと、動くなよ!動いたらこの娘の命はないぜ」

「・・・・・・」


 脅しにかかる男を横目に、アルヴィスは溜息を吐くと頭を抱え業とらしく嘆いた。


「全く・・・せっかくの彼女との食事が不味くなるからやめてほしいんだけど・・・・今すぐ彼女の手を離してくれる?でないと・・・彼の腕が折れちゃうよ?」


 アルヴィスはそう言うと、今にも襲い掛かろうとしていた自分よりも大きな男の腕を意図も簡単に捻りあげた。


「い、痛っ・・・・痛ええ!くそっ、離しやがれ・・・!?」


 アルヴィスは捻っている手に更に力を込めながらあくまで冷静に笑顔で対応する。

 軋む腕の痛みに声を荒げる大男と、どこにそんな力があるのかと驚きを隠せない他の男達は、アルヴィスの強さに仲間を助ける事も出来ずにいた。


「こういう時は、側にいる俺に助けを求めるものだよレンカ」

「・・・お前に頼らずともこのくらい一人で解決出来る」

「いやいや、ここはおとなしく俺に助けられるべきだよ」

「ふっ・・・お断りだ」


 アルヴィスの紳士ぶる振る舞いに、レンカは鼻で笑ってみせると絞められていた男の手からするりと抜け出し体を反転させ 、男の足元をすくい上げ床に倒しこんだ。

 バランスを失い床に突っ伏した男を見て、アルヴィスは楽し気に捕えていた男の足元を引っ掛け同じように倒してしまった。


「お見事だねレンカ」

「・・・・・・」

「な・・・何なんだお前達っ・・・・」

「つ・・・強え!」

「いくらでも相手するけど・・・まだやるかい?」


 事の成り行きを見ていた他の客や男達は大男二人が床に臥せっているのを見て怖気づいたのか徐々に距離を取る。

 それに気付いたアルヴィスは笑顔でそう言い放つと、レンカを背後に隠しながら、いったいどこに隠し持っていたのか縄で男達を縛り取り押さえてしまった。

 有無を言わせぬアルヴィスの笑みに男達は怯えながら、邪魔した代わりに食事代を出すから許してくれと泣きついた。

 からくも勝利した二人は、辺りを見回し荒れ放題の店を見て絶句した。

 殆どが男達のせいだが、周りの者達に迷惑を掛けた事に代わりはない。

 騒ぎを起こしてしまった事を素直に店の者に謝罪すると、元々あの男達の態度の悪さに困っていた処を助けてもらったと逆に感謝された。

 アルヴィスは軽く咳払いをすると誰に言うでもなく「今回だけは・・・」と言ってバレない程度に魔力で店を修繕するとその場を後にした。


  ***


 夜道を走る馬車の中は静まり返っていた。

 レンカは食べ過ぎたのか、少し苦しげな表情をしている。

 アルヴィスはそんな彼女を横目に見つめながら嬉しそうに今日の事を思い返していた。

 彼にとって彼女と何気ないひと時を送るというのは一つの夢だったからだ。

 それが今日達成され、嬉しすぎて徐にレンカに声を掛けると少し驚いた表情見せる。


「さっきはレンカが我慢してくれて助かったよ」

「・・・何故ダメなんだ?店の者は力を使っていた」


 納得がいかないと、不満気に訴えるレンカにアルヴィスは真剣に応えた。


「君が生徒だからだよ・・・」

「だから何勝手な事を!」

生徒・・である限りっ、例えどんな理由があろうとも外で魔力を使う事は許されない・・・そういう規則になってるんだ」


 尚も生徒になる事を拒絶するレンカにアルヴィスはつい口調が強くなり訴えると、レンカはびくりと肩を竦め、そのまま黙り込んでしまった。

 身勝手な事を言っているのは重々承知しているつもりだ。

 我ながら酷いと思う反面、嬉しいという不純な動機を持つアルヴィスは、複雑な心境でレンカに優しく微笑み掛けるとそっと右手を見せ、指にはめられた幾つかのリングのうち1つを見せた。


「・・・それは?」

「ごめん。詳しい事は秘密だけど、レンカには知っててほしい。学園や森を中心としたこの街には力を持つ者とそうでない者が昔から共に存在し、このリングは魔法使いとそうでない者との間で誓いを立てた証のものなんだ。そして俺は、学園の代表だから守る義務があるって事・・・・納得出来ないよね」


 伐が悪いといった表情と、アルヴィスの話からして、レンカは暗黙のルールというものがあるのだと悟った。

 どうやらリングには戒めの意味もあり彼故の苦労があるようだ。

 レンカは視線をリングへと移し、曇りの無い金色のリングには透明な石と、その周りを囲う古代文字のようなものが印されており、時々窓から照らす街灯の明かりが透明な石に反射し光輝く様をレンカは暫くの間見ていると、ふと読んでいた本の内容を思い出した。


「本に記されている事は事実なのか?」

「・・・・全てではないけどね」


 突然の問い掛けにアルヴィスアはどこか驚いた様子だった。

「全てではない」と意味深な言葉を返し、それきり無言となったアルヴィスはどこか上の空だった。

 ルイスという男に会ってからどうも様子がおかしい。

 レンカは学園へと続く暗い景色を見ながら窓越しに映る彼を見ていた───────。



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