α社
事前に"黒いヴァン、27-25"という説明を受けていたのですぐに見つけることができた。
「Mr.スティーブンで間違いありませんよね。」
「ああ。α社に来たスーパーヒーローだ。」
彼はハルクのような体格の持ち主だった。
「それは良かった。トランクはお預かりしますね。」
スティーブンが席に着くなり車は発進した。
「さてと、日本に来たのは初めてですか?」
「いいや。高校生の時に日本語を勉強しに来たんだ。10年前のことかな。」
「その頃の日本はこんな物騒では無かったでしょう…」
「…確かに毎日テロが起きるような場所ではなかったなあ」
運転手はチラッとスマートフォンを見た。
「我々α社のような形式化した対テロ部隊は全国に幾つかあると聞いています。そうした企業とは常に協力関係にあります。」
「なぜ協力関係にあるのに君たちは他の企業のことを知らない?」
「互いに深く関わるには危険が多すぎるんです。もし、そのもう一方の企業とうちらがトラブルを起こしたら、告発されて屋上に警察の特殊部隊が降りて来かねないんです。」
「我々のボスは誰なんだ?」
これは米軍から異動命令が出た時からの疑問だった。
「社長は見たことも聞いたこともありません。名前は"K"としか…。
着きましたよ。」
近代的なビルにはビジネスマンが出入りしている。本当にこれが…
「そのようなな反応を見たのは今日が初めてじゃないですよ。みんな汚い軍事基地だと思ってやって来るのですから。」
運転手はニヤッと笑って彼を案内した。