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閑話ーⅡ



 一人の病室は心細い。

 発作なら、尚更。

 携帯を握りしめて、彼に電話をしようと思った。

 けれど、「かけてどうなるんだろう?」って思うと、出来そうにない。

「……何して、る…んだろ」

 私は病室の白い蒲団の上にPHSを追いて、自分の胸を見る。

 小さな、胸だ。大きさは期待すんだし、形だってどうか分からない。ただ、この薄い脂肪と筋肉と骨の下、出来損ないの心臓が入ってるって事は言える。

「ほんと、もう…ッ」

 痛い。

 痛いんだ。

「…ッ」

 生理痛なんかより、あの人が無茶する不安よりも。

 この痛みの為に、あの馬鹿は自分を削っている。

 そう思うと、より痛くなる。

「…っ……ッ」

 脂汗が浮く。

 けど、ナースコールは押したくない。今なら、酷い言葉を吐けそうだから。

「しら、の」

 あの馬鹿、きっと今も戦ってる。電池が切れそうな私の為に。

 私が、望んでいなくても、きっとあの人戦うのを辞めないだろう。なにせ、あの人ソレ以外に、生き方、知らないだろうから。

 僕は兄貴だ、なんて言ったけど、あの馬鹿にそうさせたのは自分のせいだと分かってる。アイツ、ずっと自分を犠牲にしてきた。私の為に、何でもやって、それを後悔さえしてない。殺しだって、きっとしたんだろう。

 

 盗んで、

 暴力をふるって、

 殺しさえもしでかして、

 あらゆる悪性を引っ被ってでも、私の為に生きてしまった。

 

 だから、今更、彼は止まれないだろう。私はそうだと分かってしまった。あの人を止めるには、私は何の役にも立たないし、アノ馬鹿を止められるような人を私は知らない。その前に、彼の人生に、ブレーキがついてるのかさえ、もう私には分からない。焼き切れる前に止まって欲しいと、使ったブレーキのつもりが、ソレが遮断器で、彼の命に止めを刺すかもしれない。

 そんな不安が、私にはあった。

「…ほん、と、に」

 家族なんて、大嫌いだ。

 ”アイツ”が、シラノに私を守れと言った。

 そのせいで、彼は普通を全て捨てて生きてしまった。私なんかよりも、彼は絶対に、救われていい筈なのに。彼は何もかもを私の為に捨てた、本人はそんなことを考えてないだろうけど。

 エレベーターさえ、シラノは覚えていなかった。

 だけど彼は、私を守り続ける。

 私は、ソレが____

「ひどい、女」

 私は、胸を押さえ痛みに耐える。

 まだ、夜は開けそうもない。



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