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9話ーだが、はじまりが始まりだとは限らない。

教室中に、ちらほらと、生徒が入ってくるが、緋架利がいることに、なんの違和感も持ってないようだ。


(どーなってんだよ)


心の中でそうは思ってみるものの、今はディストピア回避のことが頭を駆け巡り、それどころではない。


それに、緋架利が言った、

キミが見てる場所だけがディストピアとは限らないんじゃないの?

と、言う言葉が、先程から喉の辺りにつっかかる。


(俺が見てる世界だけが、ディストピアとは限らない・・・)


考えれば考えるほど、頭が回りそうなことに嫌気がさしてきたとき、先生が教室へ入ってきた。


先生が入ってくると、教室は静けさを取り戻す。

・・・だか、吉孝はこの静かさは異様だと感じた。


(静かすぎる気がする・・・)


「よーし、じゃあ出席とるぞー」


先程見た世界と、同じに、先生は生徒の名前を呼ばず、目で人がいるかどうかを確認する。


・・・そういえば、緋架利がいることに先生はなにも言わないんだな・・・


「じゃあ。今日は特に連絡次項はないから・・・」


と、まで、先生が言うと、吉孝が先生の次の言葉を遮るかのように、


「せ、先生!!!」


と、席を立ち上がった。


「ん?なんだ、板井。」


「え、えーと・・・」


先生はここから、この教室から、出ていこうとしたら急に刺されたんだ。村戸螢に。

・・・だから、それを回避しようと、先生を引き留めてみたものの、用事など思い浮かぶわけもなく、


「なんだ、用事がないなら、呼ぶな、先生はもう行くぞ」


と、死へと続く教室の扉へと向かう先生。


「ま、待ってください!」


「だから、なんだ、板井!」


先生の足が止まる。


「せ、先生、浮気・・・してるだろ?」


ありもしないことを口走る吉孝。

このくらいのことしか引き留めた言い訳が思い付かなかったのだ。


「な、何言ってるんだ、板井!」


「ウソつかないでください、ここにその写真があるんです」


「な、・・・でたらめを言うな!」


「お、大人っぽい店から、奥さんじゃない人と出てきたことありますよねー?浮気じゃなかったとしても、浮気だと疑われても仕方がないんじゃないんですかー?」


「・・・い、いいから、その写真をよこせ、板井」


「じゃ。じゃあ俺を捕まえてみてくださいよ!」


「何を言ってる、板井!よこせ」


先生をドアから離し、自分の方へと、引き寄せる吉孝。


(いいぞー、そうだ、もっとこっち、こっちに来い!)


心の中で先生を呼ぶ吉孝。その手には、ペンと消しゴムとシャーペンしか入っていない筆箱が握られていて、


先生はその中に写真が入っているという吉孝のデマカセにのせられ、先生はその筆箱しか見えていない。


「板井、それを渡せ」


「い、いやですよ」


じりじりと、吉孝に近づく先生。

そして、それに合わせて先生から遠ざかる吉孝。



だが、そんな歩幅のやりとりも、次の吉孝の行動でなくなってしまう。


つまり、


吉孝が教室を出る勢いでダッシュする。ということだ。


ダッ


走り出した吉孝に反応し、先生も走り出す。


「ま、待て、板井ー!」


村戸螢がナイフを持って先生を殺すドアとは違うドアから教室を抜け出す吉孝。

そして、それを追いかける先生。


先生が殺される。というディストピアはこれで回避できたが・・・。


「せ、先生・・・」


「やっと、止まったか、板井!」


「・・・あ、アレ」


「!!!」


吉孝は自分の教室の隣の教室の前で止まった。


その教室の窓には赤いペンキのようなものがベッタリと張り付いていた。

だが、それはもちろんペンキなど、可愛いものではなく、


「これって、血ですよね?」


「・・・」


先生が慌ててその教室のドアを開ける。


ガラッ


「「!!!!!」」


そこには、血の海と化した地獄絵図が広がっていて、

吉孝は静寂の意味と緋架利の言った言葉の意味を理解する。


・・・・・他の全校生徒、全教師を殺して

吉孝の教室へきたんだと・・・・・。


だから、あんなにも静かで、

俺が見てる世界だけがディストピアとは限らなかったんだ。



それを知った吉孝は、教室に戻ることにした。

このことを緋架利に伝えるために・・・。






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