7話ーもしかして、緋架利が二人いる。
「ひ、緋架利がなんで、・・・?」
「緋架利?誰、それ、なんであんな奴の名前を呼ぶの?」
明らかに緋架利の顔をしているフードをかぶった犯人。
だが、その人はまるで自分が緋架利ではないと言っているような素振りだった。
いや、それより、緋架利はまた別にいるかのような言い方でもあった。
「お前、綴緋架利だろ・・・?」
「ん?私は村戸螢だよ。そして、こいつも村戸螢」
村戸螢と名乗る犯人は、先程自分が拳銃で足をうった緋架利も村戸螢だという。
「な、何言ってんだよ、お前・・・」
吉孝は村戸螢と名乗る人物が言ったことが理解できなかったらしく、
「そいつは、綴緋架利だろ」
犯人、村戸螢の発言を否定する。
が、
「なんで・・・なんでそんなこと言うの?
その子は、私だよ?あいつの名前なんて吉孝くんの口から聞きたくないよ・・・!」
村戸螢はコートの中からナイフを取りだし、吉孝に向ける。
「吉孝くん・・・!」
それを見た緋架利はうたれた足を引きずり、吉孝の前へ行く。
吉孝の盾になりに行ったのだ。
「吉孝くんは、殺させない、心中なんて、させないよ・・・」
「し、心中・・・?」
聞き慣れない言葉。
吉孝は緋架利の肩を持ち、そのことを聞き出そうとする。
「し、心中って、なんの話だよ、なぁ、おい、緋架利!」
すると、
「その名前は聞きたくないから、言わないで、吉孝くん」
村戸螢と名乗る殺人犯は固く握ったら拳をわなわなと震わせた。
「その名前をもう一度口にするなら、」
パンッッ!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
理不尽な射殺。
村戸螢の事情により、殺された命。
「な、に・・・やってんだよ、お前・・・」
盾になりにきた緋架利を押し退け、
村戸螢に近づく、吉孝。
「何って、ただ殺しただけだよ」
平然と言う村戸螢。
「だけ、じゃねーだろ・・・」
「何今さら人殺したくらいでそんなに騒いでるの?」
「くらい、って・・・」
確かに、数十人すでに殺している村戸螢に対して
今さらすぎることもあったが、
「人の命、粗末にしてんじゃねぇよ」
村戸螢の銃を取り上げ、吉孝は村戸螢に手をあげ、
パシン・・・
「・・・ッッ」
平手が飛んできて村戸螢はそれをかわすこともできずにそれをくらってしまった。
「今さら、だよ、ホント・・・」
叩かれた頬を押さえ、涙で光っているが
その瞳は、鋭かった。
「私のこと、ホントは好きじゃなかったんだよね・・・?」
「え・・・何言って・・・?」
「全部、吉孝くんのせいだからね・・・」
・・・パンッッ!!!
「!!?」
村戸螢の撃った銃弾が、願ってもいない、緋架利の心臓を貫いた。
「ひ、緋架利・・・!?」
倒れ込む緋架利に、よろよろと近寄る吉孝。
緋架利はピクリとも動かない。
「おい、動けって・・・緋架利、おい、緋架利!!!」
吉孝の問いかけに、まるで死人のように答えない緋架利。
「緋架利ーーーー!!!!」
緋架利の体を抱え、吉孝は声を教室中に響かせた。