6話-どうして、緋架利が・・・?
「わかってるんだよ、吉孝くん」
日本刀を下に下げ、掃除用具入れに近づく犯人。
それを避けるかのように、次々とそこから離れる生徒達。
「じゃあ、なんでわかってたのなら、初めから掃除用具入れに向かわなかったんですか」
生徒を何人も殺した犯人に緋架利が話しかける。
他の生徒はみんな、ありえないと驚きの表情をあらわにする。
「・・・別に、特に意味はないよ。必要のない人間達だったし、殺しても大丈夫でしょ?」
フードに隠れた笑い。
緋架利は構わず、犯人に言いよる。
「それじゃあなんで、同じ人間の吉孝くんを探してるんですか」
「・・・吉孝くんを、他の、その他大勢の、バカな人間たちと一緒にするな」
ビッッ!!
緋架利の頬に飛んできたナイフが傷をつける。
「ねぇ、わかるでしょ?」
犯人はフードのポケットから新たに拳銃を取り出し、
「ね、こいつも」
パンッ
「こいつも」
パンッ
「こいつも、必要じゃない」
パンッ
「でも吉孝くんは違う」
パンッ
その拳銃で何人もの生徒が犠牲になり、恐怖で腰をぬかすもの、ひたすらに、泣き喚いたいるもの、
それぞれが、絶望を味わっている中、
「それは、あんたの価値観でしょ、人間がバカな生き物だって言うんなら、そんな生き物にあんたの価値観共有してんじゃないわよ」
一歩前に近寄る緋架利、
誰もが彼女のことを勇者だと認めるだろう、
緋架利は、その拳銃に打たれることを恐れず、犯人に近づき、もうこれ以上犠牲者が出ないようにと、
銃口を下げた。
「へぇ、そんなこと言えるようになったんだ」
だが犯人は下げられたまま、発砲。
パンッ
「!!!」
緋架利の足が銃弾を貫く。
「私の価値観を他人に押し付けるな?人ってのは支えあってる生き物なんじゃないの?私の考えを押し付けるなっていうんなら、支えあうなんてできないことなんじゃないの?」
「・・・屁理屈、じゃん、・・・それ、」
痛みが体全体を覆う。
「まだわからないの?これはあなたのために言ってることなのよ?」
打たれた足をこれ以上血が出ないようにと血管を圧迫する緋架利に、
パンッ
今度は腕に発砲。
「うぐ・・・」
緋架利は痛みで地面へと倒れこむ。
「ねぇ、吉孝くん、助けないの?螢“けい”が重症なんだよ?」
(・・・螢?)
「・・・やっぱり、どうでもいいんだね、螢のことなんて」
パンッ
悲しい声と銃声。
吉孝は、掃除用具入れから勢いで飛び出してしまった。
・・・だが、本当は、ここで出てはいけなかった。
「吉孝くん!!」
フードの女は、かぶっていたそれを取り、吉孝へ素顔をさらした。
「・・・・ひ、かり・・?」