5話ーなんで、わかられているんだ
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
教室中が悲鳴に包まれる。
フードを被った犯人の女性が、先程まで息をしていた生徒の脳ミソを生存者の生徒たちへむけて
プレゼントしたからだ。
「ねぇ、板井吉孝はどこ?」
さきほどから吉孝を探している女性。
本人の吉孝は、掃除用具入れに入っている。
これ以上、他の生徒が殺されるのは見ていられないが、ここで出れば
大事なことを見逃してしまうかもしれない。
全ては、真実を知るため。
「・・・・・」
ことがわかれば、すぐに胸にかかっている時計で時間を元に戻せばいい。
これは、緋架利の案でもあるが、
この言葉なしに、吉孝は掃除用具入れに入っていられない。
「早く教えてよ」
犯人は一歩、生徒に近づく。
「ねぇ、教えてくれないかな?」
一人の女子生徒を標的に、その子を壁まで追いやると、犯人は、
その子の首に手をサラサラと触れる。
「教えてくんなかったら、どうなるかわかるよねー?」
そのまま、首を軽く掴まれる女子生徒。
その子は恐怖で何も言えずにいた。
「んー?」
少しずつ、手に力を込めていく、犯人。
「あ、が…」
苦しくて、それどころじゃない、
「聞こえてないのかな?」
そんなことはお構いなしに、
「じゃあ、こんな耳なんて、いらないね」
犯人は、女子生徒の耳をナイフで切り落とす。
叫ぶことすらできない少女はそのまま、白目をむき、力なく動かなくなった。
「あれー?」
死んじゃったのかなー?と、首から手を離す犯人。
「確かめるのもめんどくさいから、このまま、殺しちゃおうかな」
そう言って女子生徒の両目をくり貫き、遺体の部位を次々とぐちゃぐちゃにバラバラにしていく。
「あずさちゃんが…あずさちゃんが…!?」
バラバラにされた遺体の少女はあずさという名前らしい。
友達と思われる女生徒が、姿形をとどめていないあずさのもとへと、よろよろと歩きだす。
「鍬橋!」
近づく女生徒、鍬橋は何かに気づいた男子生徒それをとめられる。
「は、離して!」
「アイツ、やばいんだって!腰に・・・」
鍬橋の手を引く男子生徒。
言葉にはまだ続きがあったはずだ。・・・だが、
「腰に、日本刀持ってるんだって・・・だよね?坂村くん」
返り血を浴びた犯人は、男子生徒、坂村くんの言葉の続きを口走る。
だが坂村は鍬橋と一緒に、日本刀の餌食となった。
「あーあーあーあー、ほんと、人間ってなんでこんなにも血噴き出すんだろ?服汚れちゃったじゃん」
「な、なんなんだよ、お前・・・」
服にべったりと赤々しい血がつき、それを手ではらう犯人。
それにわなわなと震え、声を出す少年。
「私からすれば、キミ達のほうが何?って存在なんだけどな」
フードから彼女の口角が上がるのがかすかに見えた。
「早く吉孝くんを出せば済む話なのに、ねぇ、吉孝くーん」
声を荒立てて吉孝を呼ぶ。
犯人は吉孝が掃除用具入れに入っていることを知っているのか、
はたまた、吉孝の顔を知らず、恐怖をあおり、生徒達が吉孝を裏切り、犯人の前にでも差し出すとでも思っているのだろうか・・・?
「早く出て来ないと、このクラスにいる全員、殺しちゃうよ?」
日本刀を天井に向ける犯人、振り下ろすその先には、
「聞いてるんでしょ?吉孝くん」
吉孝が入っている掃除用具入れだった。