10話ーなぜなら、彼はまだ何も知らないから
他のクラスまで村戸螢の被害にあっていた。
と、いうことを、緋架利に知らせるため、吉孝は教室に戻ったが、
「・・・そうだった、」
吉孝の教室も、他のクラス同様、血がそこらへんに飛び散っていた。
「そうだ・・・村戸螢は俺を探しに、皆を殺すような奴だった・・・」
二度目のその残酷な光景。
こうなることは、予想できたはずだ。
(お、俺のせいだ・・・俺のせいで、皆は・・・・)
グッ・・・
吉孝は胸にかかる時計を手に持つ。
握り締めたそれのボタンを押そうとするが、
「ま、待って・・・」
床に転がった緋架利。
村戸螢にやられたのか緋架利も血みどろだ。
そんな緋架利が吉孝の足をもって時間を戻そうとしていることを止める。
「キミが生きている以上、このディストピアは起きない。だから他の誰かが死んだとしても、この先の未来を見ることが許される。・・・先の未来を見て、このディストピアを回避して・・・」
長々と、言ったセリフを最後に、緋架利は動かなくなる。
「緋架利・・・」
緋架利の二度目の死。
時間を戻したい思いでいっぱいだ。
だが、吉孝はこの先の未来を見るために、時間を戻すことはできない。
「ど、どうなってるんだ・・・」
吉孝の担任はこの現状についていけない様子で教室を見回す。
「まだきっと、この近くにこれをした犯人がいるはずです」
「板井・・・お前は何か知っているのか?」
吉孝は何も知らない。
だからこれから知りに行くんだ。
「いえ、何も知りません」
吉孝は血まみれた自分の教室を出ていった。
村戸螢を探すために。
〇〇〇
「探したぞ、村戸螢」
「あ、みつかっちゃった」
ここは非常階段。
そのに彼女、村戸螢はいた。
「お前はなんで、俺を探して、人を殺すんだ?」
人を殺す原因となるのが、自分だけだとは限らない。
吉孝は直接、村戸螢にそう尋ねた。…すると、
「吉孝くんが好きで好きで、愛しているから」
と、返ってきた。
吉孝はそれに眉を動かす。
「ふざけてんじゃねぇぞ。ちゃんと答えろって!」
だが、この疑いが、後に悲劇を生むことになる。




