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いつも君がいた  作者: 遙香
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104:過保護でも

 予定外に酔ってしまった零に、伊織はどうしたものかと考える。

主賓である自分が長時間姿を消しているのは歓迎される事態ではない。かといって、まだ足元のふらついている零を連れて会場に戻るのも気が引けた。

「零、少しだけここで待っててくれるか?すぐに戻る。」

「・・・やだ。」

椅子に座らせて立ち去ろうとする伊織の手を零が捕らえる。

「・・・零、いい子だから言う事を聞いてくれ。飲み物を取ってくるだけだから。」

「一緒に行く!」

「・・・・」

零は酔うとフルパワーで甘えるんだな、と伊織は心の中で思う。可愛すぎて、これがパーティー会場でなければこの可愛すぎる零を思う存分堪能できるのに、と今置かれている状況を恨めしく思う。

「だめだ。いい子だからここで待っててくれ。零が20数えるうちに戻ってくる。約束するから。」

「ホントに?」

「あぁ、約束する。」

わかった、と頷いた零の額にキスをして、急いで部屋を出た伊織は会場内の給仕に声をかけてすっきりした飲み物を調達して部屋に戻った。

「零・・・?寝たのか・・。」

部屋に戻ると、零が椅子の背に身体を預けてうとうとしている姿が目に映る。

「・・・無防備になるなっつってんのに、」

この部屋に、万が一自分以外の誰かがこの部屋に入ってきたら、と思うと背筋が寒くなるような恐怖に囚われる。

「零、起きないと・・・襲われるぞ。」

眠っている零の首筋に唇を付け、赤い痕を付ける。

「ん・・・いおり・・・?」

寝ぼけている零の手にふわりと抱きしめられた伊織は、思わぬ逆襲にドキっとする。このお姫様は相変わらず無防備で、無意識に相手を惑わせてくる。

「そんな事してると、本当に襲っちまうぞ。」

どれだけ我慢してると思ってるんだ、と伊織は心の中で思う。もしキスの先を求めたら零はどうするのだろう?と伊織は思う。普段はキスでさえも恥ずかしがって嫌がるのにそんな事を言ったら嫌われるかもしれないと思うと言いだせないでいるのが現実なのに。

『伊織様、いらっしゃいますか、』

飲み物を調達するついでに、給仕に執事を呼ぶよう伝えておいた。扉の向こうから、執事の声がする。

「あぁ、入ってくれ。」

伊織の声に、まだ40代の優秀な執事は優雅に腰を折って部屋に入ってきた。

「・・・どうなさいましたか?」

伊織に問いかけながら、椅子で眠っている零に視線を投げ、すぐにお部屋を準備します、と言い置いて部屋を出て行ったが、数分でルームキーを手に戻ってきた。

「こちらをご利用下さい。」

ありがとう、と手際の良い執事に礼を言い、伊織は眠っている零を抱き上げて執事に続いて用意された部屋に零を寝かせる。

すやすやと眠っている零の額にキスをして、目が覚めたら電話をするようにとメモを残して部屋を出た。

「手間を取らせて申し訳なかった。ありがとう。」

執事からルームキーを受け取って改めて礼を言い、伊織はパーティ会場に戻る。ダンスの時間はまだ続いていて、遠目に見ている分にはきらびやかな世界だ、と心の中で思う。

「貴方の姫はどうされたのですか?」

背後からかけられた刺のある言葉に、さっきの野郎だ、と伊織は心の中で思う。

「先ほどは連れがお世話になりありがとうございました。彼女は体調がすぐれないため、別室で休ませております。」

貴様のせいだ、と心の中で思いながらも、にっこり、と作り笑いを浮かべたまま模範解答をする。

「それは大変ですね。よろしければ、診察致しましょう。」

コイツ医者なのか、と心の中で思いながら、名前すら知らない出席者の一人にここまで振り回されている事態に内心苛立ちを覚える。

「お気遣い痛み入ります。我々専属の医師に診させて今は眠っておりますので。」

答えながら、相手の目的が何なのかを考えていた。零に執着している事は確かだが、こんなやり方ではうまくいくものも行かなくなるだろうに、と思う。

「あまり過保護に籠に閉じ込めると逃げられますよ。それに、籠に閉じ込めていても、籠ごと奪われたら元も子もない。」

「・・・何を、おっしゃりたいのです?」

相手の言葉に、伊織の視線が鋭くなる。籠ごと奪う、と言うのは零を奪う、と言う意味に他ならない。

「美しい鳥を手に入れたいと願う人は多い、と言うことですよ。」

「?!」

次の瞬間に伊織は走りだしていた。零を寝かせた部屋までのそれほど遠くない距離がものすごく遠く感じる。

「零っ!」

焦りすぎて、カードキーが上手く働かず、ようやく解除された鍵と同時に部屋に飛び込んだ。

「零!・・・よかった・・・」

部屋を出て行った時と同じように眠っている零の姿にホッとした伊織は、抑えきれない怒りと同時に先刻の言葉を思い出す。

『籠ごと奪われる』と言うのはどういう意味なのだろう?どういう意図があるにせよ、誰にも渡すつもりはない、と伊織は思う。

「零・・・」

過保護にしすぎている、のは自覚しているだけに他人に言われると少し気恥ずかしい。

「過保護でもなんでも、守れるならそれでいいさ。」

伊織はそう呟いて眠っている零の脇に座り、そっと頭を撫でた。

酔うと甘えるとか可愛いなぁもう。

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