チェンジ
以前同じ職場だった田中君の話。
田中君はワンルームマンションで一人暮らしをしている。
小さな部屋の事、部屋入口の引き戸を開けておくと、部屋の奥に置いたベッドからも玄関のドアが見える。
引き戸を閉めると余計に狭苦しく思えるので、引き戸はいつも開っぱなしにしていた。
ある日の夜、何時頃かはわからないが、ふと目が覚めた。
どうして目が覚めたのだろうとぼんやり思っていると、何故か玄関の明かりが点いており、ドアの前に誰かが立っている事に気づいた。
それは身長が180センチ程もある様な背の高い男性で、茶色の革ジャンと黒いズボン、そして頭には黒い毛糸の目だし帽を被っていた。
田中君は目だし帽姿の男に、当然のごとく泥棒だ、と驚いたが、次の瞬間には男の姿も玄関の明かりも消えていた。
が、それから時々目だし帽姿の男は玄関のドアの前に現れる様になり、現れる時は何故かいつも玄関の明かりも点いていた。
目だし帽姿の中身は誰かはわからず、出てこられるおぼえもない。しかもわざわざ明かりを点けて出てくるなんて……
気味が悪く、引っ越そうかなと思いだした頃のある夜、またふと夜中に目を覚ますと、玄関の明かりが点いており、あの男が立っていた。
ただ、いつもと違って、男が被っているのは黒い目だし帽ではなく、何故か真っ赤な毛糸の目だし帽だった。
(え?)
どうして帽子の色が?ともう一度見直すと、男の姿は消えていた。
それから以後、目だし帽姿の男が出てくる事はなかったという。
目だし帽の中身がいつも同じ者だったかはわからず、色の違いについてもいまだにわからない。




