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教室移動の特権  作者:


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3/5

3 私の特権

「今日も、大活躍だったね」

 体育後の更衣室。先に制服に着替え終えた私は、まだ隣で着替えている彼女にそう話しかけた。

「えー、見てたの?」

 彼女はハンカチで首の後ろの汗を拭きながらはにかんだ。

「なんか恥ずかしいな。美緒ちゃんは?サッカーどうだった?」

「めっちゃ寒かった」

「それサッカーの感想じゃないじゃん?」

 私は小さく笑うと、ポケットからカイロを取り出して、両手で挟んだ。寒さで赤くなった指先から、じわじわと熱が伝わっていく。

 ああ、優しいな。

 彼女といると、冷たくなった心が、優しさでじわじわと解けていく気がする

 それは、教室移動の時だけの、私の特権。

 休み時間、放課後、休日。誰とでも仲良くなれる彼女は、私以外の、もっと仲の良い友人たちと時間を使う。たぶん、最近はあの二人と一緒にいる時間が一番長いのだろう。三年二組の仲良し三人組、市原晴音、高瀬由奈、そして彼女。

 私が彼女と話せるのは、もはや教室を移動するこの短い時間だけになってしまった。

「おまたせー、行こう」

 着替え終わった彼女と更衣室を出て、渡り廊下を二人並んで歩く。青空を背景に、窓から差し込む日を浴びて煌めく彼女の横顔を、改めて美しいと思った。


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