今日は商いの日
各国から依頼を受けているといっても毎日どこかの国に行ったり来たりするほど忙しい訳ではなく週に3.4日は暇で、集めた品で商いをしている。今日はその商いの日。シエルも少し興味があったのか一緒に接客をすることに。のんびり商品の確認をしていると店のドアが開くと同時に入店の金が鳴る。
「いらっしゃいませ。団長さん、またあれを買いにいたんですか?」
「ああ、帝国産の煙草は美味いからな!」
わっはっはっと大きな笑い声が店に鳴り響く。
「今日は二人か、珍しいな。」
「ええ、この子商いに興味があったみたいで。」
「シエル、といいます。」
そういいお辞儀をする。
「王都騎士団の団長、マルクスだ。よろしく!困ったことがあれば是非騎士団に訪ねてみてくれ!その前にフランが解決しそうなもんだがな。」
そう言いまた大きな笑い声をあげる。
「それで、最近はどうなの?」
「何事もなく平和、と言いたいんだが...実は今朝北の村の食料援助の話が急に舞い込んできてな。最初は近くのフーリンの町から食料の援助と騎士団の派遣を行ったそうなんだが、異常気象の寒波にやられて凍傷で動けなくなったやつもいたそうなんだ。」
「まだ夏だって言うのに?」
「ああ。それで王都の騎士団の派遣をするかしないかで揉めてな。」
「それは大変でしたね。」
「するにしろしないにしろ今も村は窮地、だからもしかしたら依頼を出すかもしれない。」
「分かりました。その時は任せてください。」
「ありがたいが、大丈夫か?」
「私を誰だと思っているんです?」
「あっはっは、そうだったな。魔女の家に遊びに行く勇気があるくらいだもんな。」
ここ20年の間に5回ほど異常気象が起きているが今回はどうやら特別のよう。
そんな会話をしていたら勢いよく店の扉が開かれる。
「団長、ここにましたか!例の変質者を見つけました!」
「何!?すまんフラン、また今度買いにくる。」
そう言って団長は急ぎ足で出て行った。
「変質者?」
「大丈夫よシエル。この王都で犯罪を犯す方が難しいわ。」
安心させようと言った言葉だがどうやらシエルは変質者がどういった類のものか全く分かっていない様子だった。