大罪
シエルを助けようと重い身体を引きずらせながら、光の門へ行こうとすると異形の生物は大きな目玉をこちらに向け言葉を放つ。
「忌まわしきルギナの民...我を滅ぼさんとする白き翼......黒き力を我に....黒き書を我が手に....」
そう呟いたのも束の間、空中に漂う4つの腕を巧みに動かし私に迫る。あの一撃を貰ってしまったせいでまともに身体を動かすことができない。私の持つ力も恐らくこいつには効かないのだろう。何もできない私に容赦なく襲ってくる腕に絶望を感じていると天から雷が落ちる。目を開けると今しがた私を襲おうとしていた1つの腕が動かかなくなってる。誰の攻撃だろうと空を見上げると見知った人物が声をかけて来る。
「フランや。どうやら面倒なことになっているみたいだね。」
「魔女!?なんでここに?」
「『黄昏』の姉妹があんまりにもシツコイものだから話を聞いてここまで来たら、まさか禁術兵器アンブロデウスの封印が完全に解かれてるなんてね。ここは妾に任せて先へおいき!」
「で、でも!」
「妾にはこやつを封印する手立てを用意してある。大丈夫さ。それより黒の鍵の方がよっぽどだよ。」
「......分かった。行ってくる。」
どうやら私が思っている以上にことは進んでしまっているらしい。考えている暇なんてない。そう思い光の門へ進む。
すると紅に染まった彼女、エスティナが私に声をかける。
「待て、フランベル。」
そう言い彼女はふらつきながらなんとか立ち上がり、振り向いた私の手を取る。いきなりで戸惑っている私に彼女は
「最後に...受け取って...」
そう言い白く輝く何かを身体から取り出し私に持たせる。するとその白く輝く何かは私の身体の中に抵抗もなく入っていった。それと同時に最後の力を振り絞った彼女倒れてしまうところだった。私は彼女を支えると被っていた仮面が落ちる。その顔を見て私は驚いてしまった。何故ならそこにあったのは自分と全く同じ顔を持つ彼女がいたから。
まさにその時だった。今まで空白になっていた幼き頃の記憶、父と母に育てられる前のあるはずのない記憶がまるでコップに水が満ちていくように足されていく。
ああ、なんで今まで忘れていたんだろう。いや、なんでずっと見ないふりをしていたんだろう。自分の大いなる過ち、大罪を。
「お姉ちゃん...?」
その言葉と共に私の姉は優しく微笑む。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!私...私!!」
申し訳なさそうな悲しそうな表情を浮かべる姉を私は罪悪感で強く抱きしめてしまう。
「貴女のせいじゃないから。」
夢で見たあの方の顔と重なって見える。それがどうしようもなく切なくて私の心を負情で満たしてしまう。
「だから...ね。そんな顔しないで。」
「でも...!!」
「大丈夫...ずっと見守ってるから。"また"ね、リアーナ...」
そうして淡く光り輝く彼女は消えてしまった。
「エスティリアお姉ちゃん...」