帝国軍侵攻
店を出てふと視界の端に映る生物が気になり目をやる。そこにいたのは羽が赤い鳥だった。
私は驚きの余り硬直してしまった。それはニーナ姉さまが所属する組織がエルナート王国に危機が迫った時のみ放ち、限られた人のみがそのことを知る。赤い鳥なんて珍しいものがここにいるはずがない。つまりそういうことなのだろう。
「フランさん?」
アイーシャが不思議そうな目でこちらをみている。それはそうだ、店を出てすぐ私が呆然としているのだから。
「急いで王都に帰るわよ!!」
「え?」
私はアイーシャの手を引き町の外に出て一目の付かない場所まで走って来た。
「い、いったいどうされたのですか?」
行き絶え絶えなアイーシャの心配をする余裕がないくらい切羽詰まっていた私は準備を進める。
「アイーシャちゃん、少しの間目を瞑っていて。」
そうして私は転移で王都の屋敷までも戻っていた。
私はその扉を勢いよく開き
「お父さま!お母さま!」
「フラン、扉は静かに開けなさい。あなたも立派な淑女なのだから。」
「そんなことより、帝国軍が侵攻してきてるって。」
「ああ、奴ら国境付近の領地の足止めを物ともせずに凄い勢いで進んできてるそうだ。斥候部隊の情報では馬のない馬車が勝手に動いて大砲まで付けていて、おまけに剣や弓矢の攻撃が全く効かないそうだ。」
そのような物があればこの王都もあっという間に侵略されてしまうだろう。100年戦争後期というか終戦の数年前には銃という古代魔法王国由来の魔法武器が開発されていたが結局使い物にならなくて戦争には使われることはなかった。そのような中途半端なものを作るあのバートン博士がそのようなものが作れるだろうか。いや、使用試験で散々な目にあったことのある私だからこそ言える。今回はまた別の誰かがそれを造ったのだろう。
「あら、その娘は?」
「初めまして、ヴェルニア帝国第一皇女アイーシャといいます。フランさんに救助と護衛の依頼を出しまして。」
「皇帝のことも聞いているわ。ここにいる間は私たちが守ってあげるから。」
私も、と言いかけたところでふとあの白衣の男性が頭をよぎる。もしあのジェラルドという男が今回の件に関わっているならと。あり得てしまう。行方不明者捜索依頼の件であの大きな金属人形と戦った私からこそその可能性にたどり着いた。あの時の関節を狙った攻撃が全く効かなかったことと言い、中に人の気配を感じなかったことといい何か関係がありそうな気がする。
「ごめん、私やることできた!」
そういいその部屋を出ようとする
「行くのね。」
「ええ。」
「必ず帰ってきなさい。」
やっぱり分かってしまうか。でもいかないと行けない。あの男を止めるために。
そして王国を、家族を、依頼人を守るために。




