楽園計画
「早かったね。今日は仕事はいいのかい?」
「急な招待があったものでね。」
そんな軽い会話の後、離宮に入っていく。
「よく集まってくれた使徒たちよ。そして来客たちよ。今日は我らにとって良き日となるだろう。失われし世界を取り戻す、その第一歩となる『曙光計画』をもってその足掛かりとしたい。」
その瞬間使徒の皆々が拍手を挙げる。
「それではジェラルド、準備を。」
白衣の男性は地面に謎の紋様を描いていく。
「あの、私たちが呼ばれた理由って...?」
「簡単な話です。あなたにも関係があるからです。」
仮面を着けた女性は冷ややかにそう答える。
「じゃあ『曙光計画』って何?」
「封印を解くためには鍵が必要なのです。世界に干渉する黒の力がね。」
そういい準備が出来たのか仮面を着けた女性はその紋様の方へ行き、懐から取り出したナイフで自分の手を切った。そして滴る血を紋様で受け皿にして
「顕れよ...!!」
その瞬間仮面を着けた女性から白い輝きが放たれる。この光には見覚えがある。私と同じ力。この人も私と同じ能力者とやらなのだろうか。そんなことを考えていると紋様から顕れた何かは見る見るうちに人の形に変わっていく。そうして完全な人になり
「ああ、昏き夜を終わらせる新たなる黒の鍵よ。」
夜を思わす漆黒の髪の少女は目を覚ました。しかし辺りを見回すとだんだん様子がおかしくなり
「な...ぜ、わた、し......ここに......?あ......あ、光が........」
そうして何かを探すように空を見上げ
「月が....ない....?ああ....あああああああっ!!!」
頭を抱え膝をついた少女はその瞬間塵になったかのように光の粒を風に乗せて消えてしまった。そうしてしばらくの静寂が続いた。
「あれはいったい何だったの?」
「...古代魔法王国が滅んだ際に錬金術で造ったホムンクルスと神血を合わせた白の鍵を元に黒の鍵を造ろうとした。ですがこれでは『楽園計画』が半ばにも届かず終わってしまう...!」
「あの『楽園計画』って...?」
「私たちはこの穢れた世界をあるべき姿へ戻す。あの15年前から全てが始まった。貴女のおかげよ...?」
表情が見ない仮面の女性は声色から笑みを作っているのが想像できる。
「私のおかげ?」
「ふふ、帰りますよ使徒の皆。そしてまた会う日までリア...いえ、フランベルさん。」
虚空を見つめる彼女の瞳はどこか儚いものを見る、そんな様子だった。




