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 央京シティは、その中心部には大きなビルの並ぶ企業エリア、その企業で働く富裕層が暮らす高級住宅地、それから企業が有する工場等が立ち並ぶ生産区、役所や桜花軍の駐屯地等がある行政区が存在してる。

 実は央京シティと呼ばれたのはこれらの中心部にある地区だけで、その他、例えば紅夜叉会が縄張りとする下町等は、当初は存在すらしていなかったらしい。


 央京シティが建設されたのは、ミュータント等の存在が生まれる原因にもなったとされる大戦の前だ。

 当時のこの国は、進む少子化で労働力が足りず、その穴を埋めようと大規模な移民政策を進めていたらしい。

 けれどもその結果、互いの文化の違いによる摩擦で揉め事が多発し、治安は著しく低下した。

 ちなみに紅夜叉会の前身となった自警団は、この頃に誕生したそうだ。


 治安が低下し、社会が不安定になれば、この国の民による少子化は更に進む。

 そんな中、この国の政府は状況を打開する為の実験場として、央京シティの建設を決めた。


 央京シティは当時の最新の設備を備え、住人の生活は高度なAI、人工知能によってサポートされる。

 但し央京シティに住める人間は限られていて、健康な若い男女に限られた。

 そしてここからが当時の政府が行った実験なのだが、その若い男女には定期的に子供を設ける為の努力が義務付けられ、その結果として生まれた子供は、親ではなく行政が預かり育てると定められたそうだ。

 簡単に言えば、当時はあった概念である親権の停止。


 この実験を行うにあたって、当時の政府は大きな非難を浴びたらしい。

 ただそれくらいの大胆な手を打たねば国の状況は変わらないと、央京シティの建設は強行される。

 行われる実験の対象となるのは、央京シティに住む事を希望する者のみだという事を、強く連呼しながら。


 そうやって完成した央京シティには、大勢の若者が居住を希望したそうだ。

 やはり最新の設備と、高度なAIにサポートされる生活が魅力的だったのか、或いはそうした強引な手を打たねば国に未来がない事を、若者達も理解していたのか。


 動き始めた央京シティの出生率は高く、実験は成功だと判断される。

 政府は央京シティの規模を大きくするか、各地に同様の都市を築くかの検討を始め、同時に非常に高度な機能を備えた都市となった央京シティに、皇族の一部も住み、政府もその機能の一部を移した。

 実はこの都市が央京シティと呼ばれるようになったのは、それらの出来事があってからだ。


 けれども、央京シティでの実験に成功し、この国は抱えていた問題を抱えてめでたしめでたしとなったかと言えば、残念ながらそうではない。

 何故なら、そう、世界の国々の殆どを巻き込んだ大戦が起きたから。


 その大戦が起きた原因に関しては、諸説ある。

 一つだけ確かな事は、当時の世界はあらゆるところに不満がくすぶっていたのだろう。

 故に一度燃え始めたそれはあっという間に大火となって、世界中を焼いてしまった。

 当然、世界の国々の殆どが巻き込まれたのだから、たとえ島国ではあっても、先進国の一つに数えられたこの国も例外じゃなかった。


 大戦で、多くの人が死んだそうだ。

 加熱する戦いに大規模破壊兵器までが使われて、人類の人口は半分以下にまで減ったという。

 とある小国は、その国の全ての民と一緒に、地図上から名前を消した。


 だがその戦いを終わらせたのは、ミュータントの出現だ。

 動植物が、更に生き残っていた人類も一部が、化け物に変化して、人に向かって牙を剥く。


 とある国のとある町で、体長が十メートルにも及ぶ熊が、三百人の人間を食い殺した。

 その熊は、単に体が大きいだけでなく、手足が蜘蛛のように八本もあったらしい。

 結局、その熊は戦車の砲弾で倒れたが、同様の事件があちらこちらで起きたそうだ。

 陸だけでなく、海でも船舶が巨大な何かに襲われて。


 世界は混乱に陥って、人は戦争に興じている場合ではなくなってしまう。

 特に人々を混乱させたのは、昨日までの隣人が、突如として人を襲う怪物になってしまう事があったから。


 幸い、何かが変異した化け物、ミュータントも、余程に大型の物でなければ通常の銃器でも十分に倒せる。

 人類同士の戦争が、武器の性能を向上させていた事も大きい。

 しかし小さな人里がミュータントの脅威に晒されながら存続する事は難しく、多くの人が故郷を捨てて、大都市の周囲に集まった。

 大都市側も、戦争で傷付いた都市機能の復興には人手が必要だったから、お互いの利害が一致した形になったのだろう。

 央京シティの中心部以外の地区、紅夜叉会が縄張りとする下町等ができたのも、こうして故郷を捨てて集まった人達が住み付いたからだ。


 大規模な戦争、それからミュータントの出現で、国の持つ力、権力は大幅に低下した。

 その代わりに力を得たのは、避難してきた地方民を取り込んだ都市の行政と、それに協力する企業だ。

 彼らの手で都市は自治を始め、今ではそれぞれがほぼ独立した存在となっているらしい。


 央京シティはそうして独立した存在となった都市の中でも、特に大きく、力を持っていて、だからこそ内部に抱える問題も多い事で知られてる。



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