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 ギュールの指示を聞き、打ち合わせが終わったら、いよいよ現場に赴いての突入が始まった。

 ミーアキャットがセーフハウスとしているマンションの五階には、古くて小さなエレベーターか、或いは非常階段を使わなければ上がれない。

 けれども当たり前の話だが、敵が陣取る階層に、素直にエレベーターに乗って上がるのはあまりに危険だ。

 そもそも、この古くて小さなエレベーターには、突入に参加するチームメンバーの全ては、到底一度には乗り切れない。


 恐らくミーアキャットも、このエレベーターが攻め寄せる相手を少人数に分断してくれるから、ここをセーフハウスに選んでいるのだ。

 尤も、だからといって非常階段を使うかといえば、それも危険が大きいだろう。

 これも当然の話だが、エレベーターを避けた相手が非常階段を使うとわかっているなら、そこに罠を仕掛けない筈がないからだ。


 では一体どうするのか?

 合図を出すギュールに頷き、僕ともう一人、機械化兵の喜平治が前に出る。

 喜平治は特に膂力を強化するサイバーウェアを体内に仕込んでおり、重装甲を身に纏っていた。


 どうせ機械を体に入れるなら、和義のように膂力も反射神経も全て強化すればいいのにと思うのだけれど、実はそうもいかないらしい。

 機械化でも特にサイバーウェアを体内に仕込む事は、人体に少なからぬ負担を伴う。

 多くのサイバーウェアを使用するなら、制御する電脳も性能の高い、大きな物にする必要がある。

 しかしそうした大きな電脳を使う場合は、人の脳や、電脳と脳を繋ぐ神経に負荷がかかってしまうのだ。


 また肉体が異物を拒絶する場合もあるし、脳がサイバーウェアを使用する感覚を掴めず、暴走させてしまう事すらあるという。

 故に和義のように幾つものサイバーウェアを使用している、或いはそれを可能とする者は限られていて、ギュールや喜平治のように、何かに特化して自身を機械化するのが普通なんだとか。

 要するに、人体の機械化技術も万能ではないって話だった。


 ……まぁ、話が逸れたが、今、この場で重要なのは喜平治が人並外れた膂力の持ち主って事だけである。

 僕は軽く地を蹴ると、構えを取った喜平治の、そのがっちりと組まれた大きな両の手の上に着地して、ぶぅん!と大きく空に向かって放り投げられた。

 否、放り投げられる瞬間に、僕も喜平治の手を蹴って跳んでいるから、推力は倍で、身体は大きく空を舞う。

 目的地は、ミーアキャットが陣取るマンションの、五階よりも更に上の、屋上だ。


 そして僕が空を舞うと同時に、バチッと音がして辺りの灯りが消え、つまりは一帯の電力供給が止まり、更にバスバスと音を立てて、地上から五階の窓に向かって、銃から何かが打ち込まれた。

 いや、もちろん事前に打ち合わせをしてるから、僕は何が撃ち込まれたのかは知っている。

 あれは着弾点に煙を撒き散らす発煙弾だ。

 今回、ミーアキャットのメンバーの中でも、リーダーと超能力者は生け捕りの予定なので、全てを諸共に榴弾等で吹き飛ばしてしまう訳にはいかない。

 しかし無策での突入はあまりに危険が大きいから、こうして発煙弾を撃ち込んだ後に、突入は行われる。

 

 着地した僕に向かって、地上から飛んでくるのは太く丈夫なワイヤーだ。

 それを掴んだ僕は、膂力を強化させて思い切り、それを強く引っ張り上げた。

 ワイヤーを放ち、その端を掴んでいる地上のチームメンバーごと。

 僕が力を惜しまずに引っ張れば、重装甲の喜平治はともかく、他のメンバーならばあっという間に五階の高さだ。

 そう、屋上へと跳んだ僕が引っ張り上げる事で、エレベーターも非常階段も使わずに五階へ上がる。

 これが今回の突入方法だった。

 力任せにも程があるやり方だけれど、できてしまうのだから仕方ない。


 一人目が窓を突き破って煙に満ちた部屋へと飛び込めば、僕は次から次へと地上からチームメンバーを引っ張り上げて、五階に彼らを送り込む。

 その数は、六人。

 あと一人、地上に喜平治が残ったままだが、彼を引っ張り上げるには時間が掛かるので、それは最初から諦めている。

 既に室内には銃声が鳴り響いていて、僕もそこに駆け付けなきゃいけない。

 発煙弾と、煙対策のマスクや赤外線のゴーグルを装着した仲間達は、恐らく今の段階では有利に戦闘を進めている筈。


 けれども超能力者、念動力の使い手が動き出せば、状況もひっくり返りかねない。

 念動力であるならば、例えば、煙を一気に窓から外へ押し出す事も可能だろう。

 今回の仕事で、作戦を立てたギュールが一番警戒していたのが、他ならぬその超能力者だったのだ。


 実際、電力供給の停止や、発煙弾も、罠対策だったり、突入の補助だったりはするけれど、同時に超能力者の精神を揺るがす、もっと簡単な言葉で言うなら、驚かせるって目的があった。

 精神的な動揺は、超能力の発動を阻害するから。


 ……正直、その程度で揺らいで能力が発動できなくなるなんて、僕からすると信じられない話だが、念動力だなんて高度な能力になってくると、やっぱり使うのも難しいのかもしれない。

 まぁ、その辺りは何でもいいし、実際にまだ、煙が排除されたりはしていないのだから、ギュールの言ってる事は正しかったのだ。

 だったらそれ以上は、今は考える必要はなし、その時間もなかった。


 屋上にはマンションの中へ、五階へ降りる階段があるのだろう場所に繋がる扉があったが、……もちろんそこに罠がない筈がないので、僕は縁から身を乗り出して、皆が突入をしたのとは別側の窓から、五階の部屋の中へと飛び込んだ。




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