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 最近は八之竜の予知の対策に駆り出される事が多かった僕だけれど、紅夜叉会もずっと受け身に回っている訳じゃない。

 今日の任務は八之竜の側近である超能力者の殺害だ。

 何でも、普段は八之竜の傍らを離れぬその側近が、三王マテリアルという企業の輸送隊を襲う任務に駆り出されると、九竜会からのリークで判明したという。


 どうして九竜会が自分の組織のメンバーを危機に陥れるような真似をするのか。

 それは、九竜会が決して一枚岩の組織ではないからだ。


 以前にも少し述べたが、九竜会には頂点に立つボスは存在しない。

 何故ならどの派閥の長が九竜会のボスになったとしても、他の派閥が納得せずに、結託してそれを引きずり下ろしてしまうから。

 そもそも九竜会は成り立ちからして、異なる国籍、異なる人種、異なる信仰、異なる思想を持つ人々が、自分達の派閥を作った上で、寄り集まっただけの組織だ。

 成立当初は生存の為に派閥の枠を超えて協力もしていたらしいが、自分達の生きる場所を確保すると、今度は力と利権の拡大を求めて、或いは考え方の違いから互いに争い始めた。


 恐らく彼らの派閥間の争いは、紅夜叉会と九竜会の争いよりも、より激しいだろう。

 何故なら、彼らにとって紅夜叉会を打ち倒したところで得られるものは然して多くないが、九竜会の他の派閥を打ち倒せば、その分だけユニオンという巨大な企業から受ける利益の分配が増えるから。

 そう、直接的な利益があるから、外敵よりも身内との戦いに躍起になってる。


 故に今回の情報をリークしたのは、九竜会の三之竜の派閥。

 紅夜叉会が八之竜の予知を厄介に思うように、三之竜もまた、八之竜の予知を疎んでいるそうだ。

 九竜会は央京シティだけでなく、東京シティや西京シティ等、複数の都市に勢力を誇るが、三之竜は八之竜と同じく、央京シティを主な活動の場としていた。

 つまりは予知の力を使って台頭する八之竜に、多くの利権を奪われている。

 その報復として三之竜は、八之竜の派閥の情報を、紅夜叉会の穏健派である藍神・昭子を通してリークしているという。

 紅夜叉会も当然ながら三之竜を信用している訳ではないので、裏取りは常に行っているが、今のところは偽の情報を流された事はないらしい。


 八之竜が、どうして普段は動かさない側近を使ってまで、三王マテリアルの輸送隊を狙うのかは不明である。

 一台の輸送車ならともかく、他の都市から物資を運ぶ輸送隊を狙うとなると、難易度は非常に高かった。

 何故なら都市の外はミュータントが活動する危険地帯で、そこを通り抜ける輸送隊は、多くの戦力に護られているからだ。


 ちなみに都市間の移動の選択肢は主に二つ。

 即ち陸路を使うか、海路を使うか。

 以前は空路という選択肢もあったらしいが、ミュータントの発生以降は、航空機が飛行型ミュータントの体当たりで墜落する事件が重なり、使われなくなったらしい。

 もちろん陸路や海路であってもミュータントが襲ってくる可能性はあるのだけれど、大型の武装船や武装列車を用いれば、ミュータントの襲撃を恐れる事なく、ある程度ではあるが安全に都市間を行き来できる。

 尤も移動に掛かるコストは非常に大きいので、それらの方法での移動も、そう頻繁に行えるという訳ではないのだが。


 後は、十分な戦力を引き連れて、複数の車で隊伍を組んで移動するという、キャラバン方式か。

 武装船や武装列車は都市の自治政府の管理になる為、公にできない人や物は、基本的にこのキャラバン方式で運ばれていた。

 企業なんて自治政府に対して隠し事だらけなので、当たり前のように輸送隊を組織している。


 なので三王マテリアルが運ぶ品も、その表沙汰にできない何かであるのだろうとは、想像に難くない。

 だからこそ、輸送隊はミュータントの数匹なんてものともしない強固な戦力に護られている筈なのだ。

 それを襲うとなると、九竜会が投入する戦力も生半可なものじゃないだろう。

 大きな戦いになる事は間違いなかった。


 そしてそんな戦いに介入してまで、紅夜叉会が狙う八之竜の側近が持つ超能力は、……瞬間移動。

 希少さ、有用さでは、治癒や予知にも引けを取らない、強い超能力。


 この側近が傍に控えている限り、八之竜の首を取る事は極端に難しくなる。

 それ故に、八之竜は自分の予知が使い難くなるデメリットを受け入れて、強い超能力の持ち主であるこの側近を普段は傍に置くのだろう。

 しかし、それだけ頼りにする側近、或いは命綱を失えば、八之竜の行動を大きく封じられる事は間違いなかった。

 また強い超能力の持ち主であるこの側近自体を狙う為、この作戦が八之竜に予知される可能性も、低い。

 



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