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装甲擲弾兵  作者: kasizuki.s.y
24/33

その24

 屋根にまで荷物、

 .........その内容物、

 小銃用弾倉、機関銃用および機関砲用弾帯、手榴弾、迫撃砲弾、対装甲用徹甲弾。

 を載せた指揮車(一号指揮車)、

 .........走る危険物。取り扱い注意。火気厳禁。

 がテドラルド・ラーフグリーフツ少尉が居る分遣隊の許に到着。


 分遣隊指揮車(二号指揮車)の傍で待機するラーフグリーフツと、並ぶ隊員達の近くへ。


 並ぶ隊員達の中に第二分隊隊長、エル・シッド=ファルファレア曹長の姿も。


 アウララウル一等卒が運転席側窓から半身を乗り出し、

「お届け物でーす。」

 声を上げて指揮車を停止させる。

 前を見なさい。


 小隊副隊長のラーフグリーフツ少尉が前に出て、

「お帰りなさい。」

 出迎え。

 三人の隊員達を連れ近づく。

 第三小隊隊長マーカー・ハストン中尉は、隊員のひとりに扉を開けさせ、

「土産だ。」

 抱えている、迫撃砲弾が納めてある箱を預けて、車外へ。


 ラーフグリーフツがハストンへ、

「隊長。指示された通りにしましたが、」

 表情を硬くして、

「.........不味い事態ですか?」

 ハストンの指示に不穏な気配を察していた。


 ラーフグリーフツの尋ねに答えず、ハストンは自分達が乗って来た、過積載な指揮車を一瞥した後、

「運ばせてくれ。先に様子を見に行く。

 アウララウルも手伝え。」

 並ぶ隊員達にも、

「帰って来るまで、お前達もだ。」

 命じる。

「本隊の分も残せよ。」

 言っておかないと全部持っていかれてしまう。


「はい。」

 了承したラーフグリーフツが合図を出す。

 待機していた隊員達が動き出す。

 他の隊員達と一緒に並んでいたシッド=ファルファレア曹長が、

 〖自分も?〗

 と、顔に書く。

 立っているのは分隊隊長でも使え。

 上司(小隊隊長)だから言えること。


 〖コイツらなら平気で、

 上役だろうが、とか言うんだろうな。〗

 隊員達の普段の振る舞いを見ているとそう思うハストン。


 指揮車に積んだ弾薬の荷降ろしに取り掛かる隊員達の姿を見て、

「しまった。もう少し考えて、積めば良かった。」

 ハストンがやや後悔。


 兎に角、「積み込む」を優先したので仕分けされておらず、必要な物を取り出すのに他の荷物を降ろさなければない。降ろしたものの、この場で必要で無い物は積み直さなければならない。

 手間がかかる。


 荷物の積み下ろしを隊員達に任せ、ハストンとラーフグリーフツは様子を窺いに向かう。


 早い歩調で向かうハストンに、歩調を合わせてラーフグリーフツ少尉が隣を歩く。


 縦列に並べ掩体にしている二輌の装甲車。

 車間から、陰から、装甲車上から隊員達が銃器を一点へ向けている。


 装甲車を前にハストンは、

「指揮系統を戻す。テドは分遣隊指揮に戻ってくれ。」

 ラーフグリーフツは、

「了承しました。

 小隊指揮をお返しします。自分は分遣隊指揮に戻ります。」

 指示を確認。


 ハストンは双眼鏡を借りて、装甲車の上、天板へ登り、銃器の指向先の一点を見遣る。

 双眼鏡越しに見ると、

 〖盛り土がやや増えたか........。〗

 盛り土は僅かに上下。

 あの下で、ゴレムは何をしているのか。

 油断は出来無いが、猶予はもう少しありそう。


 様子をこの眼で確かめたハストンは天板から降りる。

「さあ、次だ。」

 自分に言い聞かせる様に、ラーフグリーフツへ告げるハストン。

 二人は指揮車へ向かう。


 足を数歩進めたところでハストン、

「あ!」

 立ち止まる。

 二歩程先に進んだラーフグリーフツが振り返る。


「テッサも呼ばないと。」

 頭へ血が巡ったハストンは、第三分隊隊長のサテササロカ・ラーシュミィ曹長も呼んで情報共有をしなければ。と気が着いた。


 少し離れたものの、大した距離では無い。半身はんみを装甲車側へ取り、口許に片手を添え、

「テッサ!」

 声を張り上げる。


 装甲車の天板上から頭がひとつ覗く。

 ハストンは覗いた頭へ向けて手招き。


 頭、もといラーシュミィ曹長は隣の隊員へ声を掛け、装甲車から下りると早足で寄る。


 ラーフグリーフツの

「ならば、隊務長も同席させた方が良いのでは?」

 言葉に、テェエアス曹長も呼ぶことに。

 聴いたラーシュミィは、ただ事では無いと勘着く。

 先に集められた隊員達の人選が勘を補強。


 行きに二人で帰りは四人になって戻る。

 弾薬を降ろすのは終わった様で、指揮車の横には弾薬を納めた箱が幾つか積み重なっている。


 ハストンは連れ立った三人へ、

「待っててくれ。先に済ませる。」

 告げると、前に出て、

「魔法使いと魔術師は集合!」

 号令を掛ける。


 号令を聞いて、ラーシュミィは確信。

 しかも、思った以上に深刻であると理解。

 並ぶテェエアス隊務長も顔を強張らせる。


 ハストンは前に集まった隊員達へ、

「これから、『制限』を解く。」


 ハストンの言葉に息を呑む隊員。目を見開く隊員。強張る隊員。

 集められた隊員は、魔術師や魔法使いと云った存在。


 ハストンは「上」の方から目を付けられない為に、

 便利使いで無茶させられるのが嫌だと云うのが理由。

 隊員の中の魔法使いや魔術師に本来の力を発揮させない様に「制限」を掛けていた。


 ハストンは隊員達へ、

「面倒だから、纏めて解くぞ。」

 言うと、

「一列横隊。」

 号令。

 隊員達がハストンを前に横並びをする。


 隊員達を前に、

 ハストンは地面に法印を描き、続けて印の周りを囲う様に、地を爪先と踵で律を取って打ち叩く。

 印から薄っすらとした輝きを帯びた筋が隊員達それぞれの足元に延びる。

 法印へ全ての左手指を当て、

おのが身が鍵。した錠を解く鍵。今、解き、放つ。課を棄て、為すが.........。】

 呪文を紡ぐ。

 詠唱を終えると、右手人差し指に中指と薬指で法印から延びる筋を切る仕草をする。

 法印から指を離し、立ち上がり、

「どうだ?

 違和感が有る者は申し出る様に。」

 ハストンは促す。

 小隊の魔術師と魔法使い達は自らの状態を検知。

 今のところ申し出が無いのを見るに、無事に済んだ様。


 統裁所で、

 ハストンの一連の行為は、当然、見られていた。


 映像を見ている『兜と籠手』社のリーリッサ・ペロロペルアは、目にした光景に、

「何者なの.........。」

 表情を無くす。

 法術の知識が並より多く、何なら魔術師か、あるいは魔法使いだと薄々、疑ってはいたが、その知識と力量とが、こうまでかくしていたとは。

 ゴレムを呑み込んだ、土を操作した法術の腕前。

 今、目の前にした複数を対象とした手法。

 手渡された、解呪系法術式を描記したあの金属箔。

 高速で飛翔した複数の「球電」を抑え込んだ方法。

『大賢者』の号を持つ身でも想い着か無かった。

『双剣と盾』社のソーリッド・シルタも難しい顔で映像に釘付け。

 ミルドルト・トロウヤ大尉は、

「なるほど、そう云う方法もあるのか。」

 感心する。


 魔術師に魔法使い、ラーフグリーフツを始め分隊指揮官も居合わせ、丁度良いと、ハストンは、

「厄介な事態になった。」

 この場で説明を始める。

「見ていた者は解ったと思うが、」


 ハストンの言葉に思い当たった隊員があの時を想い返す。幾人かの隊員の顔が渋面に。


「ヤツは魔術が使える。」

 ハストンの宣告。

 ヤツとは今、地面の下に居るアレ。

 聴いて居る側は、法廷で不利な判決を言い渡された気分。

「しかも、」

 主文が終わり、判決理由.........では無く、説明が続く。

「攻撃系が四つ。」

 右手を突き出し親指以外の指を立てる。

「『紫電』に『氷鏃ひょうぞく』と『麻痺』、それに『緋焔ひえん』ときている。」

 術名をひとつ言う毎に左手人差し指で

 立てた右手指を指差す。


 隊員達は、術名がひとつ挙がる度に、指を指す度に、眉間の皺が増えそうな表情。

 法術関係者は知っている。

 挙げられた魔術はいずれも殺傷力が高い攻撃系。

 比べれば『麻痺』なぞ、致死になら無いだけ可愛気が有る。

 比較対象がそもそもアレなのだが。


「それにだ、こちらからの法術は勿論、迫撃砲すら効かない。」

 肩を竦めるハストン。

 隊員のひとりが手を挙げ、発言を求める。

 ハストンが頷く。

 許可を得た、ものと隊員は、

「法術が効か無いと云うのなら、何故、解除を?」


 ハストンは両手を腰へ当て、

「こっちのは効かなくても、向こうから飛んで来るのは何とか出来るだろ?」

 仕方無いなぁ、と云う風に答える。

 質問した隊員の上腕を隣の隊員が肘で突く。


「それでだ、」

 腰に手を当てたまま、ハストンはラーフグリーフツ達へ顔だけを向け、

「改めて、言う。近接戦闘は禁止だ。」

 語気を強めて言う。


「それは!」

 ラーシュミィが声を上げる。

 被せるようにハストンは、

「向こうは『球電』やら『火の玉』を投げて寄越す相手だ。それに、」

 手刀を軽く振り下ろす仕草で空を縦に斬り、

「土壁を割った相手だ。」


 ハストンの返球にラーシュミィは口を開けたまま。

 続きを出せない。

「球電」や「火の玉」に「氷塊」を投げつけて来るような相手へ接近しようと云うのは、確かに難しい。

 しかも、ラーシュミィ自身、ゴレムに近接戦闘を挑み、逃げ帰らなければならなかった苦い体験をした。


「傷は着けられ無くても、足止めくらいはしなきゃならない。」

 これで終わりだとハストンは隊員達へ、

「さぁ、持ち場に戻れ。」

 命じる。

 隊員達が配置場所の装甲車へ向かう。

 その中で、

「エル。」

 ハストンは第四分隊隊長のシッド=ファルファレア曹長を呼び止め、手招きの仕草をしながらラーフグリーフツ達へ足を向ける。


 シッド=ファルファレアも揃ったところでハストンは周りの副隊長や分隊隊長、隊務長ら幹部連へ、

「まだ、言って無い事がある。」

 切り出す。

 やや声を落とし、

「ゴレムは『暴走状態』。なんだと。」


 意味するところを理解するのを拒否でもしたのか、誰も声を立て無い。


「言うことを聞かないんだと。」

 要らない追加。


 分隊長のラーシュミィやシッド=ファルファレアは部下に知らせて良いものかと逡巡。


 何時、終わるか判らない、

 ゴレムを破壊できれば即終了だが、その手立てが無い。

 その間ずっと、ゴレムと付きっ切りで相手をしなければならない。

 試験だの演習だのは、

 実戦同様に臨んでも、実際にまみえるのは余程のこと。生は保証。

 しかも、時間になれば、「はい、御仕舞」。


 ゴレムとの戦い。実戦。

 戦闘ともなれば、常に直ぐ隣に居る。

 油断すれば手が延びて来る。

 緊張をい続けられ、終わりも先も見え無いものに臨めと言わなければならない。

 正直に伝えた時の隊員達の反応は如何なものに。


 隊務長のテェエアス曹長が、

「全隊に告知することを進言します。」

 言わ無い方へ傾きつつ在った分隊隊長らへ異を唱える様に発言。

 周りがテェエアスを注視。

 テェエアスは「隊長」の付く全員を

 見渡した後、説明を始める。


 言わ無い場合、

 長引くと、終わらないことに不信や不満を募らせ、知られた段階で士気の低下は急降下、

 になる可能性が大。

 最悪、底を這う様な士気で戦いを続けさせなければならない。


 始めから知っていれば、

 目的を持たせることで、高くは無いだろうが、それなりの士気を維持したまま、低下するにしても緩やかなことが期待出来る。


 緩やかな低下に比べ、余程なことでもなければ、急落してから持ち直すことは難しい。

 の、だと語る。


 個人の力量が戦局の推移を左右してしまう時代。

 戦いの采配は勿論、配下の兵の士気を維持、回復、鼓舞出来るのが上手い指揮官は「名将」が付くことが多い。

 近現代になると組織が大きくなり、指揮官は階級が上になるほど後方へ居場所が移り、前線から遠く離れた部屋から命令を下す様に。

 前に出ることは稀になる。

 姿を見せない上役が言葉だけで士気をどうにか出来る訳も無く。

 兵士の士気を維持、回復、鼓舞する役割は前線に近い、直ぐ身近に居る指揮官、

 部隊規模の小さい現場指揮官が担って行く。


 隊の古参と云うだけで無く、軍の古参でもある隊員のテェエアスの物言いは、説得力の重みを乗せて周りの耳に届く。


 テェエアスより年下のラーフグリーフツは説明を聞き、

 〖流石、『歳を重ねたは、幹が太い』。〗

 素直に感服。


「歳を重ねた樹は、幹が太い」

 とは、この世界の諺。

 意味するところは、

「年と伴に積んだ経験が力になっている。」


 少しの間、黙って、あらぬ一点を見つめていたハストン。視線を戻し、

「隊務長の進言を容れる。」

 真顔で、

「ゴレムが暴走状態にあることを全小隊に周知する。」


「ですが、」

 ラーフグリーフツが片手を挙げ発言。

「どうやって周知しましょう?」


 ラーフグリーフツに言われ、ハストンが固まる。

 方法を考えてい無かったことは明白。

 かと云って、他の人間も考えているか、と云えば右に左に同じく。


 機会は在った。

 先の魔法使いや魔術師を集めた時。

 過ぎたことは悔やんでも先には立たない。人の目は何故に前についている。

 捕食者の系譜だから。

(※ 諸説あります。)


 ハストンは頭を垂れて腕を組む。


 もう一度、今度は全員を集める.........

 間抜けが此処に居ると知らしめるのは良いが、警戒中に持ち場を離れさせる暇は無い。

 ならば、

 それでも、一時的に警戒から気を逸らせることになるが、致し方無い。


 顔を上げたハストンに、周りは方法を想い着いたかと察する。


 ハストンは左手親指を耳許、小指を口許に当て、右手人差し指で宙に円を描き、

 〖通達。〗

 頭の中で言葉を並べる。

 〖ゴレム。暴走。命令。破壊。〗


 念話で長文を送る事は出来るが、送られる側、受念側はそう云った長文を解することが難しい。

 一時に送る情報量が多いと、ごちゃごちゃして、

 例えて云うと、

 一枚の祇に文字に文字を重ねて書いてあるのを読まされる。あるいは、同時に喋りかけられるのを聞き分ける。と、云う風に、

 伝えたいことが把握出来無くなる。


 〖詳細。隊長。説明。〗


 受念したラーシュミィとシッド=ファルファレアは思わず、

「「うわっ!丸投げされた!」」

 同時に声に出す。

 念話は上手く届いている様。


 ハストンにしてみれば、詳しい説明を簡単な言葉や情報にしてから念話で送る。と云うのは大変。

 伝えたい言葉を解り易い単語へ変換する作業とその単語を念話で送る作業を同時に、ひとつの脳でこなさなければならない。気を抜くと思考が混じりあって、何か解らない雑音みたいな情報が相手に送り込まれてしまう。


 ここで大分、時間を費やした。

 まだこれから、本隊も同じ遣り取りをすることになる。

 クロゾ・ロドエイ曹長の第一分隊へ寄って迫撃砲弾を届けなければならない。

 ここで擦り減る訳にはいかない。

 脳内で正当化するハストン。


「仕方無いですね。」

 シッド=ファルファレアが呆れを滲ませて零す。

 両掌を肩辺りに上げてラーシュミィが二、三度、首を軽く横に振る。

 ラーフグリーフツとテェエアスが苦笑している。


 ハストンは念話の最中だったことを忘れていた。

 今の心境が筒抜け。


 おそらくは、言葉では無く、漠然とした思考が心象として伝わったと推測出来る。

 ともあれ、


 苦笑いのラーフグリーフツは、

「行って下さい。後はやります。」

 出発を促す。

 ラーフグリーフツからの言葉に甘えてハストンは、

「任せた。」

 言うなり、場から逃げ出す様に、屋根上が片付き、後部も幾らか荷物が減った指揮車へ向かう。

 待ち構えていた、ニヤつく従卒のアウララウル一等卒へ拳のひとつでも呉れてやりたい衝動を抑え込み、

「行くぞ。」

 声を掛ける。

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