身分証明 5
「冒険者になる方法は2つあるってのは知ってるかい?」
ムツヤはその言葉を聞いて顔を上げた。するとゴラテはニヤリと笑う。
「そのオークのねぇちゃんみたいに手続きをする方法とあと一つ」
ここでゴラテは勿体ぶって一呼吸を入れる。その数秒がムツヤにはとても長く感じた。
「冒険者として10年以上活動している奴の推薦状があれば身分証なんてもんが無くてもなれるんだ」
冒険者になれる可能性があると聞いてムツヤの顔はパーッと明るくなる。モモの方はまだ懐疑心があるようだったが。
「そ、それじゃあお願いします、俺に推薦状を下さい!」
ムツヤはバッとゴラテに頭を下げる、それを見てゴラテはガッハッハと笑った。
「悪いが、条件がある。3つの内どれでも良い、1つは百万バレシを俺に渡すこと」
そこまで聞いてモモはため息を付いて話を遮る。
百万バレシなどという大金を吹っ掛けてくるなんて、この男はこちらを馬鹿にしに来たのか、それとも弱みにつけ込む詐欺師まがいかだと思った。
「ムツヤ殿、これ以上耳を貸すのは無駄です」
「まぁ待て、推薦状を書いて冒険者になった奴が何か問題を起こしたら俺も責任を取らされるんだぞ? これぐらいの金は当たり前だと思うがな」
顎下に蓄えたヒゲを触りながらゴラテはニヤニヤと笑っている。モモは不快そうにそれを見ていた。
「それだったら別の良心的な冒険者に頼むことにする」
「それも上手くいくかな? ワケありの人間なんてカモにされるのがオチだぞ? それに良心的な冒険者なら目の前にいるだろう」
「それはどこにいるのか教えてもらいたいものだな」
モモはハッと笑ってゴラテに対し一歩も譲らない。するとゴラテはわざとらしく参った参ったと両手を上げてみた。
「それじゃ2年間『ウソクヤ』の葉っぱをカゴいっぱいに俺に届けてくれ、そうしたら推薦状を書いても良い」
少しハードルが下がった、ウソクヤの葉は解熱・鎮痛の効果がある薬草だ。森へ入ればそれなりに生えているので難しいことではない。
「2年も待でません! 俺には夢があるんです!」
ムツヤは少し大きな声でそう言った。その言葉を待ってましたとばかりにゴラテはまた笑う。




