身分証明 3
「そうかい、まー気が変わったら来てくれや」
男はそれだけ言うとノシノシと歩いて二人の元を去っていく。
そして、ムツヤを抱き寄せて口をふさいだ事にモモは赤面して頭の中に色んな考えがグルグルと浮かんでいた。
「あのー、ところでオークのお嬢さんはどうなさいますか? 身分証と簡単な戦闘のテストを受けていただければ冒険者として登録ができますが」
受付嬢はおずおずとそう言ってきた。モモは冒険者になるつもりは無かったので断ろうとするが、続けられた言葉で少し考えが変わる。
「オークのお嬢さんが冒険者になれば、そちらの方も従者としてなら一緒に依頼やモンスターの討伐を受けることができますが」
「そうなのか!?」
「はい」
モモが驚いて言うと受付嬢はにこやかにそう返事をした。だがモモは冷静に考えてみる。
自分が冒険者になればムツヤ殿と一緒に色々と冒険ができるのだろうが、それはムツヤ殿が冒険者になるという目標の達成にはならない。
そしてふとムツヤの顔を見る。ムツヤは酸っぱいものでも食べた様に顔をクシャクシャにして悔しがっていた、そしてそのまま言う。
「モモさんが良ければ冒険者になってください、俺は従者でもいいです」
モモは「はい」と小さく言って手続きを進めた、その間もムツヤはクシャクシャムツヤのまま悔しがっている。物凄く気まずい空気が冒険者ギルドの受付を支配していた。
「はい、ありがとうございます。書類上は何も問題がありませんので、準備さえ整っていればすぐにでも戦闘のテストを始めますが」
「よろしく頼む」
「ではこの書類を持ってギルドの闘技場、ここからずーっと歩いて左側ですね。そちらに向かって下さい」
モモは椅子に座っているクシャクシャムツヤに声を掛ける。
「ムツヤ殿、この後私のテストがあるらしいので一緒に行きませんか?」
ムツヤはまだ落ち込んでいたが、モモの後を付いて行き、ギルドの闘技場へ来た。
おそらく戦うであろう場所は四角い大きな石畳が正方形に敷き詰められており、そこをぐるりと囲んで観客席がある。
観客席にはぽつりぽつりと人がいるが、みんな暇つぶしや足休めに座っているだけのようだ。




