はじめての武器屋 12
ギルスはムツヤの剣を手に取るとカウンターの上に置いた。
そして、2人には店の椅子に掛けていてくれと言い残して店の奥へと引っ込んだ。
何が始まるのだろうとワクワクしていたムツヤの前にふわっと香ばしい匂いがする。
「ちょっとあの剣はじっくり見させてもらいたいからさ、親の形見なんだろ? これでも飲んで待っていてくれ」
「すまないな」
そう言ってモモはカップに手を伸ばしたが、真っ黒い液体を見て不思議そうにしているムツヤに気が付いた。
「あれ、もしかしてムツヤくんってコーヒーダメな感じ?」
「いや、ダメっでいうか初めて見たもんで」
「苦いの飲めないと大人になれないよムツヤくん」
そう言ってギルスはカウンターへ戻ってしまった。モモが心配そうに見守る中ムツヤはコーヒーに口を付けてみる。
「にがぁい」
そう言ってムツヤは顔のパーツをクシャッと中心に寄せて、そこそこ良い顔立ちからかけ離れた変な顔を見せると、それが笑いのツボに入ったらしくモモは笑いが堪えきれなくなった。
「む、むふぅやぶっくくく、申し訳無いムツヤど」
「やっぱにがあい……」
何とか取り繕うとしたモモだったが追撃でとどめを刺されてしまい、本格的に笑いだしてしまう。
そんな様子を見て『楽しそうだな』とギルスは思いながら、ルーペや羽箒に磨き布をカウンターの下から取り出して査定を始める。
柄の部分をレンズ越しに眺めたり鞘を磨いたり、そんな様子を二人も遠巻きに見ていたが、一つ一つの動作に何の意味があるのかはわからない。
ギルスは適当な男だが金と商品に関しては真摯だ。
相手によって値段を変えることも相手を騙すこともしない。
だから亜人にはこの店は人気があったのだが、逆に言えばそれ故に一般の客が少ないというのもある。




