はじめての武器屋 8
「ムツヤ殿、挨拶は悪いことでは無いのですが…… すれ違う相手だったら『こんにちは』ぐらいで大丈夫ですよ」
木の根元で三角座りをして分かりやすく落ち込んでいるムツヤにモモは屈んで優しくそう言った。
「でもぉ……」
「大丈夫、慣れです慣れ! 慣れれば加減もわかるでしょう」
そう言ってモモが手を差し出すとムツヤはそれを握り立ち上がる。
清潔な石鹸の香りがふわりと漂う。
その後は街に着くまでの間『こんにじは!』とムツヤが言うと人々は好意的に挨拶を返してくれた。
幸いな事にゴロツキのような輩ともすれ違わなかったので、ムツヤはどんどん自信を取り戻していく。
「うわー、モモさんあれスゲー!!」
ムツヤが指差す先、石で積まれた砦に囲まれたあの街こそが『スーナ』というこの国では3番目に栄えている街だ。
そこでモモはハッとしてムツヤに言う。
「ムツヤ殿、街に着いたらすれ違う人全員に挨拶は不要ですので」
「えぇ、どうしてでずか!? この道ではしていたのに?」
やっぱりやる気だったのかと、モモはムツヤの行動が大体読めるようになってきた。
しかし、ムツヤの質問の答えに行き詰まる。知り合いとならともかく、街で他人に挨拶をしてはいけない理由を改めて問われると返答に困る。
「えーっと、そうですね、街には人が多いので全員に挨拶をすると疲れてしまいますし、日が暮れてしまいます。なので省略…… という感じです。もちろん知り合いであれば別ですが」
「そうなんですかー」
言葉ではそう言ったが、どうにもムツヤはいまいち腑に落ちていなかった。
だが、モモが困っているみたいなのでそれ以上疑問をぶつけることは辞める。
それに早く街の中へ行きたい気持ちもあった。
眼前まで街が迫る、立派な石で積まれた砦と、大きな木の門。
両隣には兵士が立っていて、その間を通ると色とりどりの町並みが広がり、ムツヤは心が踊った。
人間にも色々な見た目がいる。子供に老人に、背の低い高い、太ってる痩せてる、女の子も髪の短い子長い子。




