はじめての武器屋 7
次の瞬間、モンスターは右脇腹から鮮血を吹き出し、臓物を流して倒れる。
ムツヤは「今のはいい感じでしょう」と言いたげにモモの方を振り向くが、モモは頭を抑えて下を向いていた。
ムツヤもしょんぼりと下を向いた。
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「あっ、あれ人じゃないですか人!?」
オークの村は街道から逸れた獣道をずっと行った先にあり、人の往来は少なく、今日もすれ違う人間は居なかった。
「私にはハッキリ見えませぬが、街道に出ましたからね」
しかし、大きな街道に出れば話は別だ。人の往来も巡回する兵士も居る。
ムツヤがこの世界で初めて見かけた自分と同じ種族は男の狩人だ。
それなりに五感の働くモモにもゴマ粒ぐらいの点にしか見えなかったが、当たり前のように千里眼が使えるムツヤは、集中して見つめると男の瞳の色までハッキリと認識できた。
こちらに向かってくるのですれ違うだろう。
ムツヤはドキドキとしながら挨拶をする練習を頭の中で繰り返す。
こんにちは始めまして私はムツヤと言います。こんにちは始めまして私はムツヤと言います。
緑色の帽子を被った男とすれ違う距離まで来た時、ムツヤは男に早足で近づいた。
男は身構えて腰の剣に手を乗せる。掴みはしないが正体不明のオーク連れの人間を警戒していた。
「はっつ始めましてこんにじは!! お、私はムヅヤど言いまず、よろじぐお願いしまず!!」
ツギハギだらけのボロボロの挨拶をムツヤは繰り出した。
帽子の男は5秒ほどの時間を置いてゆっくりと、頭の中を整理して自分が挨拶をされた事に気付く。
「あ、あぁ、こんにちは……」
「も、申し訳無い、私はムツヤの従者でモモと申します。主は異国より参ったので文化の違いで驚かせてしまいました」
「あー、あーあーそういう事……」
モモがすかさずフォローに入ったが三人の間には気まずい空気が流れ、モモを振り返ったムツヤは泣きそうだ。
「悪いけど、急ぎの用事があるんで。あっ、街はあっちの方ね、良い旅を」
それだけ言い残してそそくさと帽子の男はどこかへ行ってしまった。
ムツヤは怒られた子供のようにしょんぼりとしている。




