はじめての武器屋 6
「サズァンさまにこう、こう抱きづがれるっで奴ですか!? されちゃいましだよ! 感触が無いのが残念ですけんども!」
興奮して鼻息荒くムツヤは言った。空元気で道化を演じている…… 訳ではないみたいだとモモは思う。
元気なのは何よりだが、何かこう納得がいかない。
純粋さはムツヤの長所でもあり短所でもあった。
「よーっし、それじゃ街まで頑張りましょう!!」
剣と鎧をカバンにしまい込んで、茶色のTシャツとカーキ色のズボンを履いたムツヤは、それはそれはもうどこから見ても一般人だった。
「危ないムツヤ殿!」
「え?」
歩きながら小石でも蹴飛ばすように巨大なヘビを足で弾くこと以外はだが。
塔の中で読んだ魔導書の能力で、武器を持たず攻撃をする場合は体が鋼のように硬くなり、その運動エネルギーも数十倍にすることが出来る能力をムツヤは身に付けていた。
この能力は攻撃をする意志を持ってパンチだのキックだのを出した時にしか発動しないので、素手で剣を叩き折ることは出来ても、攻撃をする時以外はモモを助けようとした時の様にあっさりと刃物が手を貫いてしまう。
本人は感覚と経験で発動する条件を理解しているが、魔導書のおかげだという事は気付いていない。
ある日突然出来るようになったと今も思っている。
ちなみにその魔導書はとある高名な魔術師が10年の歳月を掛けて書き上げて、恩恵も最初に読んだ者のみが受けられるという貴重な一品だった。
もしあの世があるならば、そこでムツヤは魔術師に泣いて詫びるまで殴られることだろう。
「ムツヤ殿…… そういった事も人目がある所では避けては頂けませぬか、スナヤマヘビを蹴り飛ばす人間なんて聞いたことが無い」
「そうなんでずか!?」
この先が心配になりながらも、モモはベルトの留め金をカチャリと外して自分の短剣をムツヤに手渡す。
「これをお貸しします、良いですか? 自分の身に危険が及ばない範囲で素人の様にモンスターを倒して下さい」
「わ、わがりました……」
次に飛び出してきたイノシシのお化けみたいなモンスター相手にムツヤは緊張した顔をする。
それだけならばまるで駆け出しの冒険者なのだが……




