むかしばなし 4
「ヨーリィ!! もういい、もういいの!!!」
マヨイギがそう言うとヨーリィはピタリと止まった。
「それで、あなた達の狙いは私でしょ?」
「えーっと、俺はこの森から出られればそれで良いんだけども」
「は?」
怪物は拍子抜けして間抜けな声が出る。
てっきり新米冒険者のフリをして自分を狩りに来た熟練の冒険者だと思い、結界まで作って殺そうとしたのだが、それは勘違いだったらしい。
「ムツヤ殿、その怪物は売ればおそらく良い値段になりますが…… まぁ私達が倒したなんて言ったら当然信じてもらえないでしょうね」
モモは進言するもムツヤは両腕を組んでうーんと考えていた。そんな時にムツヤのペンダントが光り、裏ダンジョンの主サズァンが出てきた。
「ムツヤー心配したのよ? 結界に邪魔されてて!!」
「サズァン様!?」
怪物はぽかんとしていたが、お構いなしにサズァンは続ける。
「私ね、いい取引を思いついちゃったのムツヤ! その怪物は私の世界で預かるわ! 私の開いた結界の隙間は魔物か道具なんかの生きていない物しか通ることが出来ないんだけど、そこの怪物だったらこっちで保護してあげるわ!」
状況を飲み込めない怪物だが、話している相手は自分より遥かに格上の存在だということは理解できた。
「あなた、ムツヤを殺そうとしたことは水に流してあげる。その代わりヨーリィって子の主人をムツヤにしてあげなさい。そうすればあなたは冒険者に襲われない世界で生きることが出来るわ」
マヨイギは考えていた。自分はどうなろうと構わないが、ヨーリィだけが心配だった。そこにダメ押しでサズァンが誘惑をする。
「その子、ムツヤの魔力を注入し続けたら感情を取り戻せるかもしれないわよ? っていうか後1分ぐらいしか持たないから早く決めちゃって」
マヨイギの心は揺らいだ、ヨーリィが人らしい生活を出来るのであれば任せても構わないが、昨日今日会った人間に託すことはどうしても渋ってしまう。
「私がこの方に付いていけば、マヨイギ様の身の安全は保証されるのですね?」
横からヨーリィが口を挟むと、サズァンは親指を立てて「オールオッケー!」と言い放った。
「どうか、マヨイギ様をよろしくおねがいします」
「ちょっ、ちょっと待って」
マヨイギはそう言ったのだが……
「ちょっと待てなーい」
サズァンが空間を開くと、暗闇の中にマヨイギは「あああああぁぁぁ」と絶叫をしながら吸い込まれていった。
「本当にマヨイギ様は無事なのですか?」
「任せなさい! あ、それじゃまたねー」




