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アリハハと40人の女盗賊  作者: 岩ノ森
3/8

アリハハと甘えたがり少女

 「みなさーん、朝ごはんですよー」

 ウトウトと心地よい眠りの中にいる真っ只中、はきはきとした声で現実に呼び戻された。誰の声かは分かっている。アリハハの声だ。

 アリハハの声を聞いてみんなけだるそうにハンモックから起き始める。この盗賊団ではもうなじみの光景になっちゃってる。その光景を見ながら私も起き始める、半分くらい寝てる状態だけど。

 「ヒュロラ、お前また髪ボサボサだぞ」

 近くの団員が私の恰好に突っ込む。でもいいんだ。

 「大丈夫。アリハハにといてもらうから」

 それもいつもの日常だから。

 

 今日の朝ごはんもアリハハが用意したみたい。いつものことだけど美味しい。たまには伝えとこうかな。

 「ねえ、アリハハ・・・」

 「おう!アリハハ!今日の飯もうめえな!」

 「あはは、ありがとうございます」

 「でもあたし的にはもっと肉があった方がいいけどな!」

 「あたいもそう思う」

 「はは、そうですか。でも朝からそんなにお肉食べられます?」

 「大丈夫だよ。ラミアーの腹を舐めんな」

 「「「「「あははははははははははははははははは!」」」」」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 朝ごはんがひと段落したらコーヒーを飲みたくなってきた。アリハハの淹れるコーヒーは格段においしいから。

 「ふぅ、あともうひと洗いかな?」

 お洗濯してるみたいだけど今のところきりがいいみたいだ。

 「ねえ、アリハハ・・・・」

 「なあアリハハ、さっき頼んだコーヒーまだか?」

 「あっはい、すぐ持ってきますから」

 「こっちは紅茶を頼むよ。羊の乳入れたやつ」

 「はい、すぐ用意しますから」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 「お掃除お掃除~。埃と汚れはなぜかすぐ溜まる~」

 アリハハが鼻歌うたいながら掃除してる。一人じゃ大変だし、私もたまには手伝おう。

 「ねえ、アリハハ・・・」

 「なあアリハハ。このゴミは一緒に捨てていいのか?」

「そうですね。このゴミ、ちょっと陶器が混じってるのでそこだけ外しといてください」

 「庭の葉っぱ、一通り掃いたよ~」

 「ありがとうございます。皆さんが手伝ってくれたおかげで予定より早く終わりました」

 「そりゃあ良かった。何か報酬貰わないとな」

 「はい。じゃあお茶菓子出してお茶にしましょうか」

 「やったぜー!」「いえー!」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 アリハハがそろそろ夕食を作る時間だ。いつも一人じゃ大変だろうし、手伝おう、そうしよう。

 「ねえ、アリハハ・・・」

 「野菜の皮剥き終わったぞ」

 「ありがとうございます。そこ置いといてください」

 「トマトの煮汁、グツグツ言ってきたけど大丈夫なん?」

 「ああ、じゃあ10分間くらい焦げないように混ぜ続けてください」

 「じゃあ私が野菜どもを切り刻んでやろう」

 「お願いします。繊維の向きに気を付けてくださいね」

 「任せろ」

 「あ、ヒュロラさん。もうちょっとしたら晩御飯出来ますから待っててくださいね」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 陽もだいぶ落ちた。アリハハも一息つく時間だし、何か話そう

「ねえ、アリハハ・・・」

 「おーい、アリハハ!トランプしようぜー!」

 「ええ、でも僕やり方分からないですけど大丈夫ですか?」

 「いいんだ、やりながら教えてやるから」

 「盗賊団たるもの、かけ事の一つでも覚えとかなくちゃな」

 「僕、人質ですけどね」

 「そういやそうだったな!」

 「「「「「あははははははははははははははははは!!」」」」」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 家事もひと段落したし、明日の朝ご飯の仕込みも終わったし、皆さんも床に入った。

 「さて、寝よう」

 人質用の簡易な寝床に入ろうとした時だった。ドアが開いて誰かが入ってきた。

 「あれ?」

 その人は背が若干低く、濃い肌の色とは対照的に、綺麗な銀髪をしていた。

 「ヒュロラさん?」

 どうしたんだろう、こんな時間に?

 「どうしました?お夜食ですか?」

 ヒュロラさんは首を振る。違うみたいだ。

 「一緒に・・・」

 ヒュロラさんはつぶやくように言った。

 「今日は一緒に寝よ」

 

 そんなこんなでヒュロラさんと同じ寝床に入ることになってしまった。

 「ヒュロラさん。狭くないですか?」

 「狭くない」

 「人質用の寝床よりかは皆さんの使ってる寝床の方が快適だと思うんですけど」

 「別にいい」

 いつも通り淡々とした返しだ。ただちょっといつもより不機嫌っぽい気もした。

 (なんで急に一緒に寝たがったのを聞くのはやぶへびかな?)

 まあ僕側に特に支障はないし、このまま寝ようとした時だった。

 「盗賊団はみんな優しい」

 ヒュロラさんが語り出した。いつものように淡々としてるけど、ちょっと声が震えてる感じがした。

 「わいわいやれるのは楽しいし、仕事もやりがいがある」

 でもね、と一呼吸を置いてヒュロラさんは言った。

 「たまに寂しくなる時がある」

 窓の隙間から優しい月明かりが差し込んでいる。外からは虫の鳴き声も聞こえてくる。

 僕はヒュロラさんの頭をポンポンと撫でた。

 「これからもたまには一緒に寝ましょうか」

 ヒュロラさんが顔を見上げる。目がいつもより綺麗に見えた。

 「・・・うん!」

 彼女は少しだけ微笑んだ。

 「じゃあ寝る前に髪といて」

 「え、でも明日の朝の方がよくないですか?」

 「今日、といてもらう暇がなかったから」

 「・・・すいません・・・」

 「いい。忙しかったみたいだし許す」

 「あはは、ありがとうございます」

 「ふふふ」

 僕はヒュロラさんと笑いあった。今日はよく眠れそうだ。

 

 盗賊団ラミアーには7つの掟がある。私は髪をといてもらいながらその掟を思い出していた。

 (ラミアー7つの掟、その1)

 髪を程よく引っ張られ、くしでといてもらう感覚が心地いい。

 (欲しいものは自分の力で奪い取るべし)

 私は微笑んだ。その微笑みが髪をといてもらっているからなのか、別の理由があるかは分からなかった。


ちなみにアリハハよりヒュロラの方が年上です

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