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二十六、子供




 なんだか目がさえてしまった。光子は水を飲もうと居間に向かった。

 水を飲んで一息ついた光子は考えた。広也と広隆のことを。

 自分は子供達と向き合ってこなかった。それは確かだ。だが、それがわかったところで今更何が出来るだろう。光子は広隆のことを考えた。決して悪い関係だったとは思わない。広隆はいい子だったし、なんの屈折もせずに立派に育った。——嘘だ。


 光子は自分を張り飛ばしたい気持ちで考えた。正広が死んだ後、広隆は崩れた。それまでの明るい良い子の仮面を捨て去った。何もしゃべらず、笑わない。あの時の広隆は助けを必要としていた。それがわかっていながら、光子は何もしなかった。何をすればいいのかわからなかった。

 結局、時が経つにつれ広隆は明るさを取り戻していった。

 胸が痛かった。 広隆は誰にもすがれずに、全てを一人で抱え込んできたのだ。何故それに気付かなかったのだろう。いや、何故見て見ぬふりをしたのだろう。広隆は大切な——息子だったのに。


 光子は台所を出て、まっすぐ自分の部屋には帰らずに座敷に向かった。襖をそっと開けて中を覗いた光子は空の布団を目にした。


 広也がいない。


 光子は全身がすっと冷えるのを感じた。

 トイレだろうか。いや、廊下の途中にあるトイレには電気がついていなかった。では、広隆の部屋だろうか。  

 光子は足早に二階の広隆の部屋へ向かった。だが、二階に上がるまでもなく、広隆は階段下の玄関にぽつりと座り込んでいた。妙に小さく見える背中に広隆と声をかけると、彼は驚いたように振り向いた。その顔があまりにも幼く見えて、光子は駆け寄って広隆を思いきり抱きしめた。


 広隆の手から落ちたビー玉が、玄関で固い音を立てて転がった。





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