民の声。
「タカさん万歳ぃぃぃいいい!!!!」
「「「「万歳ぁぁいい!!!!!!」」」」
「獅子田はくたばれーー!!」
「「「「くたばれぇえええええ!!!!!」」」」
非モテ達が今日も叫んでいる。
僕もその群れの中にいる。
旗を振って、スピーカーで大声を上げて、獅子田会長を叩く。
溜まり切った不満を爆発させる。
「まだまだ叫ぶでヤンスゥうううううううう!!」
先頭に立っているのはコンピューター部の幽霊部員、鼠峰くんだ。
メガネ、出っ歯、ガリガリヲタクということで、クラスメイトの女子からは『ドブネズミ』という安直過ぎるあだ名を付けられて、かなり嫌われていた。
「止まらないぞぉおおおおおおおおお!!!!」
鼠峰くんの隣で大きく足踏みをしているのは馬谷くんだ。
彼は脚が長くて、後ろ髪が長い。食べる姿も汚い。
馬面なこともありクラスメイトの女子からは『顔面馬人』という安直過ぎるあだ名を付けられて、嫌われていた。
「……やれ。もっとやれ。暴れろ、暴れろ。火炎瓶を投げつけろ。クソビッチなんて火炙りにしてしまえ」
僕の近くで爪を噛んでボソボソと喋っているのは、烏丸くんだ。
教室ではいつも一人で本を読みながらニヤニヤと笑っている。女子と目を合わせるとすぐに嬉しくなって笑いが止まらないらしい。そんなこともあり『不気味男』とクラスメイトの女子からは嫌われていた。
ネットで悪口を書くのが趣味だとか。
僕らの怒りは止まらない。
あの、獅子田 桃妃会長を弾圧するまで、まだまだ怒りは止まらない。
※ ※ ※
『会長がそんなこと言うはずがないでヤンス……』
『そんなぁ……』
『……あり得ないあり得ない何かの嘘だデマだ』
三人が教室の隅でカードゲームをしていたことを僕は知っていた。
獅子田会長はこの三人にも優しくしていた。
だが、それら全てが仮初の優しさで心の奥底では「気持ち悪い」と毛嫌いしていたのであれば、彼らの怒りは相当なものであろう。
「もうやめてください! 会長はお身体を壊しております!」
生徒会室から女性が出てくる。彼女は副会長の猫美さんだ。
会長と同じくらい美人で、眉がキリッとしていて、クールビューティとして有名だった。
「なにを言ってるでヤンスか! 身体を壊したくらいで情けないでヤンスよ!」
「「「「そうだ!!そうだ!!」」」」
「我々、非モテたちは会長に愚弄されたんでヤンスよ? 即座に謝罪してもらえなければ、気が済まないでヤンス!!」
「「「「そうだ!!そうだ!!」」」」
民衆が鼠峰くんに続いて叫ぶ。
「どーせ、俺たち非モテのことなんて好きにならないんだろぉおおお!? イケメンが好きで! イケメンだけを愛していて! イケメン以外を人間と思っていないんだろぉおおおお!!!! 許してほしいのなら、会長に全裸で土下座するように伝えろぉおおおお!!!!」
今度は馬谷くんが叫んだ。
ズボンを脱いで、白いパンツ姿のまま腰を振っている。
「そうだ!!そうだ!! 全裸で謝罪がいい!!」
「会長の裸をネットに晒せ!!!! そうすれば許してやる!!」
「せめて一発ヤらせろ!! 泣かせてしゃぶらせて、磔にして、俺たちのシモベになってもらおうか!!」
「「「いいぞー!!いいぞーーー!!!!!」」」
「女が男に逆らうなぁ!!!!!!!! 力では敵わないだろうかぁ!!!!!」
「世間は不倫とか浮気とかイチイチうるさいんだよぉおおお!!!! モテるやつがそんなに偉いかぁああああ!!! 俺らだって、多目的トイレで女とヤリまくりたいっつーーーのぉおおおおお!!!!!」
「「「「そうだそうだーーー!!!!!」」」」
民衆が叫ぶ。僕はその光景をジッと眺めている。
「女は男にヤられるためだけの生き物だろう!? なぁーにが男女平等だ!!ふざけるなぁああああ!!!!!!!」
「お前らが力を持ったせいで、こっちはとても生きづらいんだよぉおおおおおお!!!!!」
「痴漢の冤罪でどれだけの人の人生が台無しになったと思ってるぅうううううう!!!!!????」
「「「「そうだそうだーーー!!!!!!!」」」
「なぁーーにが、女性専用車両だ!!!! 男女平等を謳うのなら、男性専用車両も作りやがれが!!!!!!!!!!!!!!」
「「「まさにそのとおーーりー!!!!!!!」」」
「元カレの悪口をツイッターで書いてるんじゃあない!!!! 俺たちがいつ! お前ら女を不幸にした!! 口うるさいからちょっと肩を殴ったくらいでDV扱いってふざけるなぁーーー!!!!!!!!」
「「「ふざけるなぁーーーーーー!!!!!」」」
「女に夢を持たせろぉおおおお!! 今の彼氏自慢ばっかりして『私ってすごい愛されてる♡』感を出すなぁ!!!!! イケメンにやり捨てされるような奴らが偉そうに愚痴を吐くなぁーーーーーー!!!」
「「「これは正論すぎるうううう!!!」」」
「俺も言いたいことがあるぞ!!」
「おお!!言え言え!!」
「女ってなんであんな察してくれ……って感じ出すんだ!? 言ってくれないとわからねぇんだよぉー!!!!!! それで怒られて『なに、私が悪いわけ?もういいっ』みたいに拗ねられても、なだめるのに苦労するだけなんだよぉーーーーーー!!!!!」
「大体、彼氏は私を守って欲しいって!! お前らなにと戦っているんだよ!!
自分の身くらい自分で守れ!!!
男のやることなすことにケチをつけて、なんでもかんでも被害者ヅラすんなぁーーー!!!
モテない男にでも平等に優しくしろぉーー!!
ヲタクを気持ち悪い扱いするなぁ!!!
お前らの方こそ、ボーイズラブとか気持ち悪いんだよぉ!!!!!!
お前らのせいでなぁ!!!
お前らのせいで迷惑してるんだよぉ!!!
少年漫画に土足で入り込んで、腐女子漫画を増やそうとするなぁーーーー!!!!!
とっとと帰れーーーーーー!!!!!!!」
「「「「そうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだそうだーーーーーー!!!!!!!!!」」」」」
民衆が叫ぶ。怒りのまま、叫ぶ。
猫美さんの元に向かってゆく。
「お前も……イケメン彼氏と毎日セックスしてんのか? 毎日セックスしてんのかぁ? 羨ましいなぁ……。俺なんかファーストキスもまだなのに。羨ましいなぁ。なぁ、婚前交渉を破ってさ、気持ち悪くないか? 非処女ってキモいよね。プププ。猫美さんも、俺らのこと、キモいと思ってる? 思ってるなら、跪いて、俺の息子をしゃぶれよ!w」
烏丸くんがスピーカーを使って、猫美さんの耳元で笑う。
彼女は泣きそうになっている。
しかし、誰も止めようとしない。
止まるはずがない。
「おい、その女脱がせてネットにアップしようぜ!」
「おっ、いいかもな!?」
「そこまでしたら会長も姿を見せるでしょ」
「名案名案!」
「でも、力づくで脱がすよりも自分で脱いでもらおうぜ〜w」
「ナイスアイデア!」
非モテたちが猫美さんを取り囲んでいる。
僕は遠くで笑っている。
「──おい、全裸になれよ。クソ女」
誰かが、そう命じた。




