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勇者に倒された魔王が幼女に転生してしまった話  作者: 鋼リン
(旧)ラフレア編
2/62

#1

「……ハッ」


 目が覚めると横たわっていた。さっと体を起こして辺り見渡すと、あたりの建物はぼろほろになっていて、焼かれたような匂いが漂っていた。


「ここは俺が滅ぼした村か。ふふふ、帰ってきた、帰ってきたぞ!やってみるもんだな、あのクソ天使め、完全に消そうとしやがって。まぁいい、帰ってくれたんだ。とりあえず大魔王様のところに……」


 独り言をしゃあしゃあと呟いているとあることに気付く。自分の声が響き渡るような恐怖の声ではなく、細く、透き通るような甘ったるい声。


「あれ、あれ?」


 自分の体をぺたぺたと触るとこれまでにない感触。圧倒的な邪悪に満ちたエネルギーではなく、柔らかな感触。視線を下ろすと両足があることにも驚く。


「おい、おいおいおい」


 あたりを見渡し、近くの建物の窓へと走っていく。そこに映っていたのは背が低く、ぺったんこ、青いショートヘア、色なき瞳。


「俺、人間になってないかぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 甘ったるい声が響き渡る。


 叫んだ直後、奥の方がどたどたと足音が聞こえる。


「おい、今叫び声が聞こえたぞ!」


「まだ生存者がいるんじゃないか?」


 ぞろぞろと騎士達が現れる。まだ小さい子じゃないか、魔王の奴め許せないな、といった罵声が飛び交うのに内心複雑なアークア。


「君、名前は?」


「えっ」


「君の名前だよ」


「え、えっと……アークア」


「おいおい、それは魔王の名前だろ?」


 俺は魔王だよと叫びたいアークア。


「ちゃんと答えて。名前は?」


 言葉に詰まる。アークアは考える、必死に考える。


「……セア」


「セアちゃんか、……他に生存者はいなさそうだし、一旦城へ戻るぞ」


 おかしなことになった、アークア改めセアちゃんは考える。

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