#0 プロローグ
「これでとどめだ、魔王アークア!」
勇者の一撃で魔王アークアの胴体が切り裂かれ、黒い煙が吹き出す。ダークエネルギーの集合体である魔王は押し留めていた闇の力を抑えることができず、体が崩壊しはじめる。
「これで勝ったと思うなよ勇者……、私が倒れても他の魔王達が……ぐわああああああ」
魔王は完全に消滅した。勇者達は喜びの叫びを上げた。
「あいつ、他に魔王がいると言ったな」
一人の戦士がそう言うと、他の仲間たちの表情はすぐに険しくなる。
「ああ。もしかしたらこれは終わりではなく始まりなのかもしれないな」
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魔王アークアはふと目を覚ます。体を起こそうにも起きない。見渡そうとするがあたりは白く、優しい何かに包まれている。
「ここはどこだ?俺の体は?俺は勇者に倒されたはず……」
「その通りです」
「誰だ!」
声の方向に視線を移すとそこには美しい天使がいた。魔王アークアはエネルギー体の魔物とは言え、美意識は人間とそう変わらない。人として見ても嫁にしたいほどだ。
「私はリライト。あなたの魂をこれから浄化させ、新しい生命体へと変えます」
「ということはここは死後の世界という奴か。デスの奴があるとかほざいていたが本当にあるとはな」
「それでは……」
「浄化などされてたまるか!俺は元々の世界へ帰るぞ」
「そんなことはできませんよ」
「俺を誰だと思ってる?これでも西の魔王と呼ばれた存在。魂になったとしても俺の力は健在!貴様を殺し、戻ってやる!」
「させません……!」
天使の指先から光が放たれた。それに対抗するように魂のアークアからも黒い光を放つ。互いに拮抗し、弾けるように爆発する。
「あっ……やってしまいましたかしら。まぁ悪い奴だったし?消えてしまったものは仕方ないわね!うふふふふふふ」
そこにはアークアの魂はなかった。