53頁目 道探しとウェル山脈
前回のあらすじ。
シアよりも強い冒険者は存在する(過去話)。
次回の投稿は明後日の予定です。しょこまん!
作者の中ではシアちゃんは割とチートの部類ですが、本物のチートと比べると数段見劣りします。
既に五三話、まだ身に付けていない、身に付けたい魔法や技術は沢山ありますが、普通の本物のチートなら四話か五話くらいで身に付けている程度の魔法だと思いますので、すごい劣化。
というか、普通のチートって何ですかね?(哲学)
それはともかく、第一話を投稿してから三ヶ月です。何とか隔日ではあるものの、投稿ペースを維持することが出来ていますので、これを続けていけるよう今後も努力します。
ウェル山脈麓に一面広がる森を抜けた先、いよいよ登山である。
前世の人が見たら、あまりにも軽装どころか準備不足、ハイキングと勘違いしていないかと思う程の荷物の少なさ、服装も山に合わせた物でないなどツッコミがありそうな格好であると思われる。
「高いなぁ……」
見上げても山頂は見えず、むしろ近いからこそあの雲の先がどうなっているのか分からない。
結局あれから四日も掛かってしまった。
「森があんなに深いなんて……」
奥にそびえる山脈に気を取られすぎて、目の前に広がる森もすぐ抜けられると過信してしまったのだ。
森の途中から段々と勾配が付いてきて、いよいよ山かと思ったが、森を抜け所で傾斜が急にキツくなっている。崖や壁と言う程の急角度ではないが、普通に歩いて登ることは難しいと思われる。それに、それらしい痕跡もないことから、こっちが道ではないのだろう。
「一応昔の街道がこっちに伸びていたということは、どこかに人が通れる程度の道かその跡があるはずだけど」
周囲を見渡して道を探す。
森の中でもかつて人がいたと思われる痕跡らしき物を見つけたので、この道で間違っていないはず。目的がなければここには来ないし、道も作らない。道があったということはそれなりの行き来があったということだから、この先に生活に関わる何かがあったはず。
「んー……こっちかな?」
一先ず登るのは諦めて、痕跡を探しつつ山肌に沿って移動することにする。
方角はジスト方面、西だ。何故ジストの方向かと問われれば「勘」と答えるしかないのだが、一応理由もある。
エメリナ方面からこの山脈の向こう側へ行くなら、海沿いに行けば良いからだ。海沿いに北上すれば、標高もそれ程ない普通の山がある程度で越えやすい。わざわざラスパズ村から道を延ばす理由がない。
「一応、スップ草原にある集落の中で一番近い場所ではあるけど、偶々近い場所に集落があったんじゃなくて、近い場所に集落を作ったのが今日まで残っているだけの可能性が高いよね」
私の話には興味ないのか、愛剣で魔剣のノトスは退屈そうに欠伸のような風を出す。器用だね。
しかしそんなやり取りの最中、道と思われる一定の間隔の幅のある線を見つけた。
「もしかして当たりかな?」
ハッキリと道と分かるような道ではないし、スップ草原の街道同様、すごく古いのかほぼ獣道じゃないかと思われる程度には荒れている。
「とりあえず、ここが獣道じゃないことを祈って歩こうかな」
とはいっても、その可能性は限りなく低いと思われる。何故なら現在も使われているような痕跡は見受けられず、またこれだけの道幅であれば、馬車は無理でもウマならば擦れ違える程度はある。つまり、それだけの体格の持ち主が移動に使っていなければこれだけの幅にはならない。そして、それは自ずと怪物に限定される。
「仮に怪物だったとしても、陸上型。恐らく獣脚種か竜脚種に絞られるかな」
サイズとしては中型前後。これだけの大きさで歩行型の鎧虫種もしくは鳥竜種はほぼあり得ない。少なくともジスト、エメリナ両国には存在しない。あくまで図鑑知識に寄ればだが……
しかし最早言い伝えのレベル、所謂、幻獣とまで言われる程の聖角獣が図鑑に載っていたくらいだ。それ以上の伝説にすらならない程の貴重な怪物が闊歩しているのであれば話は別だが、まぁ十中八九人の手による道だ。
草食種や物体種だったとしたら、別に危険はないので無視。
「それに、獣道なら必ず水辺へと寄る順路となっているはずだし、排泄場所もない」
更に挙げるならば、我が愛剣がこうして暇そうにしているのを見るに、周囲に警戒に値する生き物はいないと思われる。サボっているだけかもしれないが。
例えそうだったとしても、私には電流網による索敵もある。この森の中では周囲の木々に遮られて本来の四割も範囲を狭めることになっているが、現在のところ問題ない。
「緩やかとはいえ、結構登ってきたはずなんだけど、周りの木のせいであまり景色見えないね」
時間にしてもう昼過ぎだろうか。そろそろ野営地を確保しておいた方が良いだろうか。夜間の登山は危険なので、極力避ける必要がある。滑落とか怖いし夜猛鳥にも襲われたくないからね。
「戻るのも面倒だし、この先で少しでも良さそうな場所があったらそこにしようか」
決意した私は、森が闇に包まれる前にと進む足を急がせる。
途中で小飛竜と思われる羽ばたく音が聞こえたが、さほど近い距離でもなかったこと。そして野生生物を襲っているような様子で、こちらに気付いている感じではなかったので特に気にせず歩を進める。
「そろそろ、休憩にしようかな」
すっかり周りは暗くなった。まだ太陽はかろうじて空にあるはずだが、これだけ木々に囲まれた場所だ。少し日が傾くだけでたちまちに闇となる。本来ならここで止まるのがベストなのだろうが、私の好奇心がこの先を見たいと囁いてくる。
「森を抜けた?」
視線の先にあるのは、開けた場所のようだ。
今日のところはここで休憩、野営することとしよう。呼吸も体力も問題ないが、夜の山は危険なのだ。大人しくジッとしているに限る。
「やれやれ」
標高がどれだけかは分からないが、朝から登り始めて少なくとも六刻。一二時間は経過しているだろうし、途中下りもほとんどなかったことから結構高いと思う。
「何も見えない」
しかし、眼下はすっかり闇に支配され、夜景を楽しむことは出来ない。前世ならば一晩中灯りが点っていてそれを楽しむことが出来ただろうが、こちらでは夜は寝るものだし、そもそも一面に町が広がるなんてのは王都かそれに近い都市のみだ。
「まぁ夜も明るいっていうのが、本来なら変なんだろうけどね」
すっかり真っ暗だが、火を付けることはしないし、魔石灯も仕舞ったままだ。下手に自身の場所を周囲に報せる必要はないというのもあるし、魔石灯に関しては、その魔力に反応するケースが稀にあると聞くので、使用には注意が必要だ。
一応、完全な暗闇という訳ではなく、多少雲があるものの月明かりもあるので、若干程度ではあるが視界も悪くない。しかし探索が出来るような光量ではないので、こちらは明日、明るくなってから行うとしよう。
「軽く仮眠でも取ろうかな」
開けた土地とはいえ、平らではなく傾斜あり、岩肌ありという寝心地最悪の場所であるので、熟睡も出来ないだろう。そもそもそこまで深く眠るつもりはない。付近を軽く見ても粘性体がいないことは確認しているので、ここはそういう場所だということだ。
四半刻、前世時間で三〇分でも眠れれば良い。もちろん、警戒は解かないしノトスにも一応索敵をお願いしている。すごく便利だ。
「おやすみ」
適度に背もたれになりそうな場所を選んで、椅子に浅く座るようにして目蓋を閉じる。
しかし、やはり寝心地は良くない。深い眠りに入ることは一切なく、浅い眠りと半覚醒を何度か繰り返して目を覚ます。時間の経過は分からないが、感覚的には設定した四半刻前後だと思われる。
「外で落ち着くというのがそもそも難しいしね」
それからは、覚醒時間を四半刻、そしてまた同じように寝るをひたすら繰り返して朝になるのを待つ。
この眠り方ではあまり疲労を取ることは出来ないが、ある程度眠気を取ることは出来る。眠気さえなければ疲労の一つや二つ、魔力によるアドレナリンで誤魔化せる。
「そろそろ日の出かな」
眠っては起きての作業を何ループも行っていると、地平線の向こう側が明るくなってきているのが分かる。
「ほぼ正面に見えるということは、この場所は東向き。乾季の日の出時間を考慮すれば、若干東南東。ラスパズ村がある方向は……こっちかな。うん、何も見えない」
方角の確認を終え、本格的に太陽が顔を出した頃を見計らって朝食にする。
いつもの豆や木の実を乾燥させて火で軽く炙った程度の、酒のつまみみたいな物だが、これでも十分。足りなければ、道中で適当に野草を採取して食べれば良い。これでも多くの薬草を扱い、魔法薬を生成する薬師である。食べられる野草の区別くらいは出来るし、仮に失敗したとしても、余程の毒草でなければエルフの魔力の浄化で帳消しに出来る。ただ、その間は解毒の為に身動きが取れなかったり、下痢になったりするのが怖いところ。
「食あたりは普通の人でもあるだろうけど、エルフの場合の食あたりは、他の種族だと浄化が追い付かずに普通に死ぬ場合があるからね……」
怪しいと思ったら口にしてはいけない。
私は幼い頃より家の手伝いとして、数多くの薬草や野草、中には毒草も口にしてきたから、ある程度の耐性があるだけ。同じようなことを他のエルフがやっても毒に犯されると思われる。
ただ、毒などの状態異常は魔法薬で治療することが出来るので、在庫に余裕があれば挑戦するのもアリと言えばアリだ。即効性の致死毒だった場合は知らない。食べた人の自己責任だ。
「よし、行こうか」
武器や備品のチェックをしっかりと行い、漏れがないことを確認。立ち上がって登山を再開することにする。
森を抜けたとはいえ、ここはまだまだ森林限界となる高度ではないと思われる。気温や降雪量などの環境に大きく左右されるので、何ファルトから上が森林限界と定めることは出来ないが、上を見るに、まだまだ木々が生い茂っている様子が見られる。
アレを越えたら、いよいよこの土地での森林限界となるだろう。
「今日はあそこまで行きたいね」
しかし逸る気持ちを抑えて、出来るだけ急がないように注意する。
高山病対策だ。
一応、まだ対策を取るには早いかもしれないが、この世界のこの時代の時点では、標高の基準が曖昧なものであるので、気付いたら酸欠になっていたなんて事態は避けたい。
歩幅、呼吸を一定にして、決して焦らないように。
「まぁハーフだけど、エルフに必要かどうかは分からないけどね」
だからといって、過信して手痛いしっぺ返しを食らうよりは事前に策を講じて行動を取るのが最善であることは明白。未知の世界なので、油断せず慢心せず一歩一歩確実に進んでいこう。
そうやって歩くこと半刻。昨日抜けた森が大分遠くなった時に、目の前に予想もしなかった物が現れた。
「こ、これは……」
倒壊しているし、苔や雑草などに覆われているので細かい造りは分かりづらいが、これは明らかに……
「石造りの門……人工物だ」
思わぬ発見に、しばし呆然とするのであった。
【国】
エメリナ王国
【集落】
王都リギア
【種族】
主に人間族と獣人族、魚人族が暮らしている
【土地】
エメリナ王国の王都
南東部には海が広がっている
【気候】
暖季、暑季、乾季、寒季の四季があり、暖季と暑季の間には雨季がある
【言語】
共通リトシ語
【通貨】
エメリナ王国通貨
【人口】
一〇〇〇〇〇人程度と思われる
【宗教】
イパタ教・クェス教
【食べ物】
主食はパンなどの小麦製品と一部米
魚料理が有名で、名店も多い為、隣国ジストなど他国からもわざわざ訪れるほど
果物の仕入れは少ないが、ジャムや乾物などに加工された品は多く流通している
【産業】
海洋資源
主に塩、魚介類、海の怪物の素材の販売や加工、獣皮紙など
【政治】
王政であるが、政策の基本方針を打ち出した後の審議は議会によって執り行われ、最終的に審査を通過した議案を王が最終決定を下す流れとなる
ただし、戦時などの緊急時には議会を通さずに直接軍に下令出来る為、突発的な事象への対処も迅速な模様
またジスト王国とは友好関係を結んでおり、先代の王の時には互いの子を互いの国に留学させるなど交流も盛んであった
マルンド島の住民とは、数百年に渡って交流があるが、島民の種族、歴史、文化などの違いから、度々問題が発生しており、その都度頭を悩ませている様子
【文化】
毎週祈曜日には教会での礼拝が行われるが、イパタ教のみ毎月最終週の祈曜日に『祈りの儀』が開かれる
祭りなどの文化までは調べるに至らなかった。また機会があれば調査、もしくは参加したいと考えている
【特徴・習慣】
海沿いの崖近くに築かれた都市。崖下には大規模な軍港兼漁港がある
陸地は丘陵地帯の窪みに位置していることから、都市を囲う城壁は三重となっており、非常に強固である。起伏の大きい土地である為、ジスト王国の王都のようなまとまった形ではないが、地形に沿った合理的な作りとなっている
海に面した土地であることから、水に弱いジストの製紙技術はさほど用いられていない
耐水性に優れた特殊な紙、獣皮紙が一般的に使用されているが、大工仕事やギルド業務などの特定の職種では紙代を浮かせるべく、石や木などを削って覚え書きとして広く使われている
軍港と漁港で分けられておらず、艦船の大きさによって停泊出来る桟橋が割り当てられている
理由としては、緊急時には漁船も軍船として徴収される為、無駄なく運用出来るようにする必要があるということからと言われている
船は三、四人程度が乗る超小型船から一〇〇人、二〇〇人が乗る大型船まで幅広くあり、その総数は数百隻に上る
ほとんどの軍船には、一隻一隻に風魔法使いが配属されており、それによる風で帆を膨らませて操船する
沖には魚人の住むマルンド島があり、古くから交流がある
海の怪物が暴れた時や、漁業の際などで互いに協力して対処している模様である




