44頁目 王都リギアと王立図書館:前編
前回のあらすじ。
とりあえず知った情報をまとめてみた。
前編になります。後編は明日投稿予定となります。
今更ですけど、タイトル『異世界諸国漫遊記』は硬すぎるんですかね?
流行の長いタイトルとかキャッチーなものにしたらもっと読む人増えるんですかね?
ということで、いくつか候補!
『しょこ☆まん!』
『異世界にハーフエルフとして転生した少女は、世界を知る為に旅に出る』
『冒険者を引退したハーフエルフの転生少女、もう一度冒険者になって諸国を巡る旅に出る』
『異世界で、諸国を巡る、漫遊記 byフレンシア』
『異世界ってどんな世界? 諸国を巡って世界を知ろう!』
『』
駄目です。もう思い付かないです。タイトル考えるって難しいです。元々タイトルを考えるセンスないので、誰か助けて下さい。
というかフレンシアは少女で良いのですかね? 一二〇歳。現代の人間に換算するとJKくらい。うん、十分少女ですね。
道中は特に何もなかった。もちろん完全に何もなかった訳ではない。様々な生物が息づく大自然だ。当然怪物や動物は闊歩しているし、時折襲い掛かってくることもある。だが、対処不能な事態にならなかっただけだ。
「あれが、王都リギア……」
小高い丘を越えた所で、ついにエメリナの中心部が見えた。
ラスパズ村を出発して一週間と二日。途中三つの村を経由してようやく城壁と海に囲まれた巨大都市を目にすることが出来た。
「あれが海」
城塞都市の向こう側に、一面の青が広がっている。
「綺麗……」
日の光に照らされて、キラキラと輝いて見える。
その前に立ちはだかる堅固な要塞。まぁ丘の上から一望出来る程の高低差と距離だ。いざ戦争ともなれば地形的不利に悩まされるだろう。その為に周囲に多くの村を、防衛ライン用の拠点として配置して守りを固めているのだとか。
こんなこと、外国人の私に話して良かったのか疑問であったが、お酒を注いで上機嫌となった兵士自ら話したことなのだ。
仮に情報漏洩で罰せられることになったとしても、向こうが勝手に話してきたことだ。私は悪くない。
昨日立ち寄った村で、少しでも宿代を稼ごうと、ラスパズ村でしたように酒場でバイトをしながら、そのついでに近辺の怪物の生態などの情報収集に当たっていた。そこに兵士数人に、新任だからお祝いとして酌をしてくれと頼まれれば断る理由もない。
隣に座ってそれぞれお酒を注いでやると、すっかり全員酔ってしまい、何も聞いていないのにあの城塞都市のことを教えてくれたのだ。
やっぱり私は悪くない。
「ここから半刻程の距離かな」
まだ一時間は歩くことになるが、ただ闇雲に歩くよりも目的地がハッキリ見えていた方が気合も入りやすい。何もない場所をひたすら彷徨い歩くのも嫌いではないが、退屈すぎるのも考え物だ。歩く意外に何もすることがないというのも、精神的にしんどい。
まだ森の中なら、様々な木々や草花を愛でて楽しめるのにと思うのは、私が森のエルフだからだろうか。
普通の人なら延々と先の見えない鬱蒼とした森の中は、不安と恐怖でしかないのは理解出来る。これでも前世は普通の人間だったのだ。
そんな私であるが、ここで生まれて既に一〇〇年以上が経っている。精神が人間である以上は慣れる。住めば都という諺が前世にあったが、産まれた時から街灯も何もない深い森の中で過ごしていれば、本当にそれが当たり前となる。
「まずは宿を取って、それからギルドに行って……それで海、かな。あ、でも本屋か図書館にも寄らないと……あぁでも海、早く近くで見たいなぁ」
到着してからの予定を組み立てつつ、眼下に広がる城壁に囲まれた都市へ向けて歩き出す。
見た目の印象としては、レガリヴェリアとは大きな違いはない。都市全体を高く分厚い石造りの壁で囲まれ、内側には数多くの建物がひしめき合い、その中心部に巨大な王城が建っているところも共通している。しかし、似ているようで全く違うのが、城壁の形である。
「形が不規則……でも、こっちの方が格好良いかも」
ジストの王都は平地にあり、多少荒野と干渉しているとはいえ広大な土地である為、規則正しいほぼ四角形の壁で覆われている。対する目の前にあるエメリナの王都は、海辺ということと、周囲を丘に囲まれていたり、町自体も多少の起伏があったりすることから、ジストのようには造ることが出来ず、地形に沿って築き上げられている。
近い物を挙げるとするなら、同じフランスの城塞都市であるが、レガリヴェリアはエーグモルトに近く、リギアはカルカソンヌに近いかもしれない。リギアは水辺ということもあり、一部分はスペインの古都トレドのような造りも混じっているなど、中々面白い形をしているので見ていて飽きない。
あくまで造りが似ているというだけで、その規模は数万人が暮らす大都市であることから巨大な物である。それに水辺といってもトレドはタホ川という河川に隣接している一方で、リギアは海辺という違いもある。
「結構、人も多くなってきたね」
王都が近いからか、複数ある門から伸びる道々に多くの人々が行き交っているのが見える。今私が歩いている街道も、グリビへと繋がり、その先にはレガリヴェリアがある。よって、人通りも多く、今日だけで三度、商隊とすれ違った。
ジストと違って、本当に草花の多い豊かな土地である。それに町が近いからそこかしこに粘性体スリーンムの姿が見受けられる。
近くの草むらでは、人と思われる排泄物に群がる粘性体の姿があった。ウマであれば道の真ん中で出すので、わざわざ草むらに行って用を足すのは理性ある生物のすることだ。
目も鼻も口もなく性別さえも、そもそも生き物なのかも不明な怪物だが、何となく餌に有り付けたことに喜んでいるように見える。しかし、何でも飲み込める身体をしている割に、草花や土や石を食べる様子がないのは、一応何か線引きというか選別の本能があるのだろうか。もし、あれらの生態を研究している物好きがいたら、話を聞いてみたい気はする。
王都に近付くと、通例の門での検問が行われていた。この世界にはパスポートといった身分を証明する物は少なく、精々が国籍を示す国章を身に付けている程度である。しかし、冒険者に至ってはタグがそのまま身分証明書になり、世界共通で使用出来ることになっている。
あくまで冒険者活動が認められた国に限るが、冒険者という名の便利屋は所属国でなくても金を落としてくれる存在なので、ほとんどの国で活動が認められている。
あの人間族至上主義であるソル帝国でさえも、資金の調達の為に他国の冒険者の入国を渋々であるが承諾している程だ。
獣人族を含めて世界に占める亜人の割合はほぼ半数程度と言われており、必然、冒険者の数もそれなりにいる。人間族の冒険者のみの入国を許していると、お金があまり回ってこなくなることからの措置だ。とはいえ無制限とはいかず、行って良い場所、入って良い建物などの行動に制限が付けられてしまうので、好き好んでソル帝国に行こうという亜人の冒険者は少ない。
その数少ない亜人というのは私であったりするのだが、当初の予定としてはここから海沿いに南下してソル帝国へ入ろうと思っていたところ、先日のユニコーンの噂話を聞いて興味が沸いた私は、逆に北上してウェル山脈を目指そうと思っている。
「身分の確認をします。何か証明出来る物はありますか?」
「はい、確認をお願いします」
順番が回ってきて、門番の衛士に首から下げたタグを見せる。
「冒険者でしたか。はい、確認出来ました。ようこそリギアへ。ギルドはこの道をそのまま道なりに行くと、大きな交差点にぶつかりますので、そこを左に曲がってすぐの所です。案内板がありますので、迷うことはないと思いますが、分からなかったら近くの人に聞いて下さい」
「ご丁寧にありがとうございます」
「ごゆっくり。はい、次の方どうぞ」
門を潜った私は、言われた通りギルドへ向かう。しかし、先に宿を取っておきたいので、道中に手頃な宿屋がないか物色しながら歩く。すると、とある建物の前で大量の紙の束が積み上げられている場所があった。
紙の店だろうか。
ジストだけでなく、ここでも広く紙が使われているのだなと思い、手触りを確認しようと触ってみると、慣れた触感ではないので思わず首を傾げてしまった。
「嬢ちゃん、どうした? それ買うのかい?」
その様子を見ていたのか恰幅の良い女性が、店の中から出て来た。
「いえ、ジストでは近年広く紙が普及していましたので、エメリナでもそうなのかと思いまして。しかし、失礼ですがこれは紙……なのでしょうか? 触り慣れた紙とは何か違う気がしまして」
「なんだい嬢ちゃん、獣皮紙を知らないのかい?」
「獣皮紙?」
聞いたことがない。羊皮紙のような物だろうか。
説明を求めると、快く応じてくれた。
話を聞くに、水幡獣という小型の草食種である怪物を飼育し、成長した個体の皮を剥いで加工するらしいのだが、その工程は羊皮紙と異なる。
羊皮紙は皮を剥いで専用の水溶液に漬けて毛や油脂を取り除いてから、水分を含んだ皮を薄く引き伸ばして不要な部分を削り取って乾燥させる。それから四角くカットしたりインクが滲まないよう加工したり仕上げを行って完成となる。
対する獣皮紙は、主に水幡獣の皮を使うことが多いらしく、特に水辺の町では必需品なのだそうだ。何故なら水に濡れても傷まず破れず、インクも滲まないととても優秀なのだそうだ。
加工の仕方は、皮を剥いだらまず火で炙って余分な毛や油脂を燃やす。元々体毛は非常に薄く、産毛程度の物らしい。カバなのだろうか。毛や油脂は燃えるが、皮自体は耐火性、耐熱性があって燃えないので昔からこのやり方なのだとか。確かに特殊な液体に漬けて数日置くよりは楽だし時間の短縮も出来る。何せ剥いだ皮を地面に並べて野焼きのようにまとめて焼くらしく、効率的だ。しかし、ここからが面倒な部分で、ひたすら叩いては伸ばすを繰り返すらしい。
ゴム質のような物なので伸ばすことは難しくはなく、前世時間で一〇分弱程の時間で良いのだが、一日置けば元の大きさに戻ってしまうので、形を覚えさせるまで毎日ひたすら叩いて伸ばす作業を続ける必要がある。
十分に引き伸ばされ、形も安定したら、後は羊皮紙と同じように適正のサイズに切って表面に専用の薬剤を塗って完成とのこと。
単純な作業のみで一度にまとめて製造出来るので価格はそこそこに抑えられているが、時間が掛かってしまう。それに体力が必要だ。
また、獣皮紙に書く為のインクも特殊な物を用意する必要がある。
通常のインクでは弾かれてしまって書けないという欠点があるらしい。だがそこで、インクにウロウの実を搾って出る油と、ニチニチニチソウの磨り潰した根を混ぜることで解決するらしい。
ニチニチソウではなく、ニチニチニチソウらしい。うん、分からない。毒性があり、それで獣皮紙の細胞を破壊することでインクが乗りやすくするのだとか。そしてウロウの実の油の役割は乗ったインクを馴染ませて定着させることにある。
正確には細胞だとか毒性とかの話は出ていないのだが、話を聞くにどうやらそういった作用があることを理解して古来より用いてきたとのこと。科学的というより長年の積み重ねによる先人の知恵というものか。
ウロウの葉は、食材や薬品を包むのに広く使われているが、実にそんな力があったとは知らなかった。知らずに食べていた。実を煎ることで、中の油が良い感じに実に染み込んで香ばしくて美味しいのだ。
ちなみに、リギアで主に使われる紙と言えば獣皮紙だが、ジストとの貿易で普通の紙もそれなりに出回っており、製本などでは主にパルプから作られた紙で行われている。獣皮紙に比べて耐久性は落ちるが、活版印刷による書物の大量生産が可能であるので、主に教会や学校で重宝されている。
大工などの土木業に携わる職人は、レンガなどの石に石灰筆と呼ばれる、いわゆるチョークで書いてメモのように用いたりすることもあるらしい。消す時には書かれた部分を削ればまた書けるとかで、お金も掛からないのでまだまだ多くの人に使われていると聞く。ジストで言う木札のような感じだろう。
「ありがとうございました」
随分と話し込んでしまった。分からないことがあるとその都度質問を挟んでしまい、半刻程付き合わせてしまった。
獣皮紙は興味あるが、インクとペンをセットで買わなければならないので、今回は見送ることにする。その代わり、迷惑料と情報料を込みで銀貨一枚、こちらの単位で一ピッコをチップとして支払いお店を後にした。
次は宿屋探しだ。しかしそれもほぼ解決している。
「丁度良い宿屋も教えてもらったし、急ごうかな」
聞き出した情報の中には宿屋や本屋についても含まれていたのだ。早速手に入れた情報を元にその宿屋へと向かうことにし、歩を進めるのであった。
【名前】
ボルディリアータ
【分類】
ヒガンバナ科ボルディリアータ属
【気候・地域】
嵐の時期のスップ草原などで広くみられる
【季節】
乾季に開花する多年草
【特徴】
開花すると黄色から白色の花を咲かせ、その花びらは輪生状に外向きに並んでいる
茎の高さは三〇~五〇ナンファルト
寒季のみ、栄養を確保するべく地面に這うように葉が生えて光合成を行うが、暖季になると枯れてなくなる
中心にある雌しべが突出して長く、その長さは一〇ナンファ程度
乾季の嵐の時期に開花し、草原に落ちた雷を吸収しては帯電し、外敵からの身を守る
帯電期間は一週間弱程度。その間に子孫を増やすべく嵐の風に種子を運ばせて受粉する
この特徴から、別名『雷花』とも呼ばれる
普通に触れる程度には影響はなく、摂取することで舌の麻痺からひどい時には全身の痙攣などに発展する
ヒガンバナ科であるが毒性はない為、帯電していなければ食べることも可能であるが、開花時期でないと美味しくないらしい。ちなみに上述の通り、開花は乾季の嵐の時期である。また、どのように調理しても電気は消えないので、食す時は自己責任である
白雷獣はその身に雷を蓄え、身体機能を向上させる特性から、帯電した草、特にボルディリアータを好んで食べる




