34頁目 再会と演奏会:前編
前回のあらすじ。
友人の店の飾り付けを手伝った。
前編となります。しょこまん後編はまた明日♪
前回の前書きは色々と途中から面倒になったので、もう全部魔力のせいってことにしました。
これが実際の研修報告書で提出されたら、上司なら間違いなく怒ります。
社会人で何か報告書を出す際に、魔力がとか、魔法がとか間違っても書かないよう注意して下さい。
厨二病は学生までです。いや、大人で発症していても良いのですが、大人なのでそこのところの分別はしっかりお願いします。
一体、何の話なんですかね?(笑)
前日祭が始まった。
昨日もそれなりに盛り上がりは見せていたが、それとは比較にならない程の賑やかさである。
王都の住民だけでなく、祭りに合わせて国内各地から多くの人が集まってくるので非常に騒がしい。
主要な所で言えば、鉱石の町ルックカや、北西の地方都市シトン、南部の地方都市ガルチャの三つの町はもちろん、キダチ村やオボス村を含めた地方の村や町などの大小様々な集落から人が来る。また隣接したエメリナ王国などの外国からも人が訪れるので、この一週間は本当に町が人でごった返すのだ。
人が集う所に商機ありということで、商人達もより良い商談をまとめようと躍起になっている。
ここで新たな販路を獲得することが出来れば、より儲けることが出来るのだから必死になるのは当然だ。
活気付く町の中を歩きながら、普段は見られないような出店を見て回る。
演奏会の練習は明後日、本番は明明後日だから、少なくとも今日明日はのんびりと前日祭を楽しむことが出来る。せっかくの祭りなのに一人で回らないといけないのは若干の寂しさはあるが、一緒に回る約束をした人がいる訳でもないので仕方ない。
フィアを誘いたかったが、彼女も商人だ。この一週間は重要な期間であることを理解しているようで、休日はなく連日働くようだ。尚更、あの匂いのキツい素材を取り除いておいて良かったと思う。
ギルドに行けば、誰か知り合いに会えるだろうか。
特に行き先を決めていなかった私は、とりあえず目的地を定めて歩き始める。
「ここも結構人いるのね……」
ギルド内は今日も人が多いが、冒険者でごった返す普段と違い、今日は一般の人や若干子供が多いように感じられる。そうやって中の様子を眺めていると「あ、シアー!」と呼ぶ声がしたのでそちらに顔を向けると、受付の中でせっせと荷物を運ぶギルド職員さん達に混じって、ミリーが手を振っていた。
「大変そうね」
近付いて労いの言葉を贈る。祭りだからとギルド業務が止まる訳ではなく、むしろ、人が集まればそれだけトラブルが舞い込みやすい。
よって、普段の冒険者相手の依頼管理だけでなく、祭りの運営のサポートから遺失物管理の連絡係、迷子センターの出張所みたいなことまで行う為、非常に忙しい。
祭り期間であることから、冒険者はほとんど依頼を受けに来ない分まだマシな方だろうか。これで通常業務もいつも通りであれば、とてもではないが人が足りないことと思われる。
「大変よ。でも楽しいわよ」
「忙しいのに楽しいというのは、ちょっと理解しがたいわね」
「シアも働けば分かるよ。何ならここに就職する?」
「遠慮しておくわ。忙しいのは勘弁。私はのんびり気ままが良いわ」
「そんなおばあちゃんみたいなこと言ってぇ」
「年齢だけ見たらすっかり老婆以上よ」
「こんなにもっちもちの肌しといて良く言うよ」
そうやって、受付のテーブル越しに両手で頬をつかまれ、左右に引っ張られる。
「いひゃいはよ」
「あはは、ごめんごめん」
「本当に遠慮がなくなって……」
「遠慮するだけ無駄かなーって」
「ひどくない?」
「ひどくない。普段のシアが滅茶苦茶過ぎるだけ」
「私は悪くない。向こうから厄介事が飛んでくるのが悪い」
「開き直らないの。はぁこれのどこが老婆よ」
「エルフだから!」
豊満な胸を強調するように上体を反ってドヤ顔する。
「威張るな!」
すかさずミリーが頭を叩いてくる。流石ツッコミが鋭い。
「そういえば、あなたこの後に時間ある? 良ければ一緒に祭り回らない?」
叩かれた頭をさすりながら、独りぼっちを回避すべく数少ない友人をお誘いする。
提案された彼女は、少し考えてから「ちょっと待ってね」と言い残して奥へと引っ込んでしまった。待つこと少々、戻ってきたミリーの手には紙の束があった。
「それは?」
「予定表よ。期間中、どこでどんな催し物があるのかが記載されているの。祭り運営の補助もギルドの仕事だから、こういった情報も取り扱っているの」
「それで?」
「夕方からなら時間作れるから……ここと、ここと、それと……ここも、そんで、ここに、ここで、ここも行こうか」
「いっぱいね」
誘った側ではあるが、この熱意には流石に引いてしまう。
「当然よ。仕事は楽しいしやりがいは感じているけど、だからといって祭りに参加しないのは、勿体ないじゃない。それに一人じゃなく、友人と回るのなら絶対楽しいわよ」
「そうね。それじゃあ私はそれまでの時間、迷子案内所の手伝いでもしているわ」
「え、いいの?」
「忙しいのよね? なら友人として手伝うわ。せっかく一緒に回るのだから、時間があるからと一人で回るのも勿体ないしね」
「ありがとうね。あ、じゃあ案内するわ」
「はーい」
そうやって、案内所で不安そうな子供達に声を掛けて回ったり、一緒に遊んだりして交流して打ち解けていく。
一通り業務が落ち着いた頃に、ミリーも抱えていた仕事を終えたようで、仕事着から私服へと着替えて「お待たせー」とやってきた。私は換えの衣服がないので、代わり映えのしない白地の民族衣装である。服はかさばるし場所もとるので、あまり持ち歩きたくないのだ。
「それじゃあ、お先に失礼しますね」
「はーい、ありがとうございました」
迷子案内所担当のギルド職員に声を掛けて腰を上げ、ミリーと一緒にギルドを出た。
「まずは夕食にする?」
「え、シア朝食べてないの?」
「うん、まだだよ。せっかくの祭りだから食べ歩きしたいなーって思って。ミリーが一緒じゃなかったら、一人で回ってたかも」
「分かった。それじゃあ私のオススメの店回ろうか」
「お願いね」
それからはミリー先導の元、私達は様々な出店を巡って買い食いをしたり、面白そうな素材を買ったり、見世物を楽しんだりしていた。
そうしている内に、いつの間にか日は沈んでいたが、初日にも関わらずこれからが本番だと言わんばかりに盛り上がりを見せている。
私の胃袋はすっかり満杯となってしまったが、相方のミリーはまだまだ入るようで、歩きながらでも食べられるような甘いお菓子を両手に持って交互に食べていた。
「よくそんなに入るわね」
「むしろシアが小食過ぎるのよ。というか女子なら甘い物は別腹でしょ?」
「いや、同じ胃袋に入るのだから変わらないでしょ……」
呆れてしまうが、彼女は「そうかな?」と首を傾げながらも、再びそれぞれのお菓子を口にする。
その時に「教官?」という声が聞こえた気がして、思わず立ち止まってしまった。
「シア? どうかした?」
「いえ、気のせいね。多分」
「何が気のせいなのかしら?」
右に立つミリーと話していたはずなのに、左から声が掛かる。
その聞き覚えのあり過ぎる声に、恐る恐る顔を向けると、赤色の毛と紫色の毛が入り交じった特徴のあるツインテールが目に入る。そして、こちらを見上げるその少女の眼鏡の奥では、こちらを射貫かんとする程の鋭い目付きで睨んでいた。
「えぇと、コールラ? 久しぶりね」
「えぇ、久しぶりね教官。あたし達に何も言わずに逃げるように出て行ってしまってから、三ヶ月弱といったところかしら?」
実際そうなのだから反論のしようがないのだが、このチクチクと針で刺すような視線と言葉から逃げる為にいくつか言葉を投げる。
「ライトメタル、あなたが引き継いだのね。私はてっきりセプンが使うものとばかり思ってたわ」
「あいつは小飛竜の防具を持って行ったわ。チャロンを護衛することもあるから、それよりも前に出ることの多い私かエメルトにってなったんだけど、エメルトも詠唱で後衛に回ることがあるから、結局あたしが使うことになったわ」
「そう、似合っているわ」
「ありがとう。で、何で黙って出て行ったのかしら?」
誤魔化されてくれなかった。少し付き合ってくれたけど、すぐに軌道修正されてしまった。
「あのぉ、そちらはどなたですか?」
私達のやり取りを聞いていたミリーが、控え目に話に割り込んでくる。
「紹介が遅れたわね。こちらは私の元教え子で元新米冒険者のコールラ・コラッルよ。コールラ、こちらはここ王都でギルド職員をしているミリシャ・シッツよ」
「あ、これは元教官が非常にお世話になっております。コールラです」
「こ、こちらこそ非常に迷惑を掛けられております。ミリシャです」
おいこら。
助け船どころか、連合組んで仕掛けてきた。
「と、とりあえず、コールラ? 他の三人は一緒じゃないの?」
「皆この祭りに来ているわ。呼ぶ? 説教してくる相手が増えるだけだけど」
「え」
待って。確かに黙って出て行ったことは悪いとは思っているが、コールラだけではなく他三人も私に言いたいことがあるのだろうか。何か最近説教ばかりもらっている気がするのだが。
「教官!」
「あら、呼ばなくても来たわね」
噂をすれば影と前世の言葉があるが、まさにセプン達の話をしていたところに、人混みをかき分けてその三人が現れた。
「この馬鹿教官、俺らを放っていなくなるとか何考えてやがる!」
「ワタシ、すごく怖かったんですよ! 怒らせるようなことしてしまったとか、やっぱり試験での動きが悪いと失望させてしまったとか、色々考えました!」
「……全面的に同意」
「ちょっとシア? これはどういうこと?」
ミリーまで混じって私を攻撃し始める。
周囲の騒乱に紛れている為、こちらのやり取り自体目立ちはしないが、セプンとチャロンの剣幕に、近くを通った人達からは何事という視線が向けられる。
少しだけ考えるも、ここで私が出来る選択肢といえば一つしか浮かばなかった。
「皆ごめんなさい。あの時は、これ以上縛られるのは嫌で早く逃げたかったから」
「それはアオコニクジルさんのこと?」
先頭に立って話を進めるコールラに、私は頷く。
「まぁそれも一つね。元々ルックカはただ通過のつもりだったから、本来の目的をあまり遅らせたくなかったという思いもあったわ」
「その割には、まだ王都にいたのね」
「あ、いや、えぇと、こちらはこちらで、また問題を起こしてしまって……」
言い訳をしている言葉尻が、段々弱くなる。
「そうですね。シアには本当に困らされてばかりですね。鉄火竜の単独討伐。ギルドを通さない依頼受注に翡翠鳥も単独討伐した上で死骸を持って帰ってくる。鎌足虫の調査依頼のはずが覇王竜を狩って帰ってきて、その足でそのまま夜間依頼に飛び出して行って……あ、最近はタルタ荒野二週間の旅とか言って、街道から外れた荒野のど真ん中で野営していたんでしたっけ?」
私の言葉を引き継いだミリーが、次から次へと愚痴を吐き出していく。
「はぁ? ルックカ出てから何やってんだよ」
「一体どこから突っ込めば良いのか分からないわね」
「……弁明の余地なし」
「えぇと……流石にやり過ぎだと、思います」
「違うー違わないけど違うのー」
私の嘆きの声は、虚空へと消えていった。
【名前】
セフィラントタラス
【種族】
植物種
【別名】
蔓鞭植
【生息地】
乾燥地帯の深い穴の中
【大きさ】
不明
穴の深さや直径によって変わるのか、成長に合わせて自身で穴を広げるのかも不明
また、どの程度まで根が伸びているかなども不明
恐らく大型怪物だと思われる
【生態・特徴】
穴を中心として半径一〇~三〇ファルトに放射状で蔓を地面に這うように伸ばしており、感覚器官と捕獲用の触手との両面の役割を持つ
蔓や葉は、地面の色に合わせてか茶色に近く、しっかり見ていれば分かるが、不用意に接近すると気付かずに踏んでしまい、捕獲されてしまう
本体、動物を食す中心部の色は、白に近い緑色であるが、その下が何色か、どういった形かなどは不明
規格外の大きさとその危険性から怪物へ分類されてはいるが、一応、歴とした普通の植物である……はず
ただし、栄養も水分も乏しい乾燥地帯で生き抜く為に動物を食すように進化し、それに合わせて巨大化したとされている
開花時期は不明だが、乾季に種を四方八方に飛ばす。そこに花粉が風で流れてきて受粉という特殊な順番である。しかし魚類では産卵してそこに精子を掛けることで受精卵となるので、それに近い構造なのかもしれない
種や発芽の段階では、日差しに非常に弱く、寒季の日差しでも完全に乾いてしまい芽吹くことがない。よって、日の光が届かない穴の奥でひっそりと発芽して成長するのである
鎌足虫の巣穴で発芽した場合は、成長してしまう前に鎌足虫によって狩られてしまう
一方、同族である蔓鞭植の巣穴で発芽し成長した場合は、古い蔓鞭植を食べて糧とする
穴さえなければ種は死に、発芽もない。それ故に街道近くは常に新しい穴が出来ていないかを注意し、見つけたらその都度穴埋めの依頼が出るようになっている
植物であるので、炎魔法が有効と思われるが、そもそも戦闘に発展することが皆無で、餌の捕食のみでしか動かないので確証は取れない
【素材】
死んだ種を何かに利用出来ないかと研究された時期もあったらしいが、その研究が実ることはなかったと聞く
蜥蜴人族が食糧として集めているらしいが、私達の口には合わない模様である




