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一週間の始まり2


「矢は…止んだか」


真っ暗な洞穴を進むことはせず、射線が通らないギリギリに陣取り様子を伺っていたがもう矢は降ってこない、代わりに出入り口に降ってきた矢は異能持ちが作ったのか、其れともこれの射手がそういう異能を持っているのか知らないが、起爆する札と火薬の付いたもの両方が普通の矢と混じって刺さっている。

ちなみにこの洞穴、風がおくから吹いて来ないのでこのまま奥に行くのはあまり意味がない、しかし爆発するやで出入り口を塞がれるとは…考えただけで嫌になるくらいの金がいるだろう。…っぶ、考えたら気持ち悪くなってきた。


しかしそんな風にグロッキーになってる時間もくれないようだ。次はもっと大きな物がドカンドカンと地面を粉砕しながら飛んで…いや、跳んできている!?

とりあえず洞穴の少し奥にあった身を隠せそうな岩の裏に行く。それと同時に激しい爆発音と爆風、耳を塞いで口を開けててよかった。と言うか跳ねてくれば当然そうなる。俺はチラリと外を伺う。が、それは失敗だったようだ。


「そこです」

「っ!」


舌足らずな感じのする声とともに矢の飛来する音、いや、これは矢じゃないもっとデカいものだ。咄嗟に前転し出入り口へ向き直る。


「ふひゃ!」

「っ〜!?」


しかし隙を生じぬ二段構え…いや、三段構えだ。巨大なオッパイを携えた戦斧が…じゃない!戦士であろうにバキバキに割れ少し付いた傷がセクスィーな腹を露出し鉄鋼であふれんばかりの胸を押さえつけるような胸当て!素敵!…じゃねえ!

とりあえず丸太を出して避ける。あぶない、邪念にとりつかれるところだったぜ…ふぅ、おっぱいおっぱい、俺は気休め程度に片手剣を構えて次に備えるが追撃はまだ来ない、しかし目の前には長身、巨乳、ポニテで筋肉質なお姉さんがいる。後ろには…なんか幼女がいる。おそらく狙撃手は彼女だ。


「姉ちゃん、全部避けられちゃったぜー?」

「…なんだか酷く不愉快なことを考えているようですねこのターゲットは、射殺してやりたいです…が、問題ないでしょう。むしろ幸運です。無傷で捕らえれば賞金は倍額なのです!」

「わぁい!焼肉行こうぜ姉ちゃん!」

「ばっか妹!ちゃんと見てるのです!」


…ふむ、どうやら俺を狙ってきた賞金稼ぎらしいな、え、というか…


「お姉…ちゃん?」

「死ね」


矢が飛んでくる。俺はそれを魔眼で見切り…外套で飲み込む。妹らしい長身の彼女が目を見開く。俺が一歩踏み出しそこに斧を構える。反応も動きも早いが…


「おせぇ!」

「っぐぅ!」


狙って戦斧に撃ったバリスタと言うよりは槍のような矢により彼女は吹き飛ばされる。幼女は目を見開くが第二射第三射も異空間に収納、第四射と弓自体に向けてバリスタを投射、吹き飛んだのを確認して外套から縄を取り出し気を失った幼女を縛る。逆さにして上下に振ったら毒やら短剣やら投げナイフが出てきたので全部いただく。


「姉ちゃん!」

「ほうれ、やるよ」


俺は再び戦斧を構えこちらに飛びかかってきそうになった彼女に幼女を投げつけ怯ませた後脚力で数十メートルはあるだろう崖を登り切ってさらなる奥地へ向かった。





「姉ちゃん!姉ちゃん!」

「う…うん?」


妹の声で目がさめる。どうやら縛られていたらしく関節が痛むが…


「妹ォ…ターゲットわ?」

「逃げられたけどボォ!姉ちゃんがぶじでよがっだー!」


オーイオイオイとでもつきそうなくらいギャン泣きする妹のデコを指で弾く。


「にゃん!」

「バカァ!私よりもターゲットでしょ!くる前にちゃんと教えたじゃない!」

「うぅーだってあの後アイツ一瞬でこの崖を登って行ったんだよぉ?1日1回のベース超強化はもう無いし、姉ちゃんを放っといたらまたどんなぺど野郎に攫われるかわかんないじゃんかぁ〜!」


はぁ…相変わらず世話の焼ける妹だ。しかしどうしたものか、どうやら手配書の彼はそれなりに手強く。そして見かけよりもかなり番狂わせなオモチャをお持ちらしい、ああ…


「ね、ねぇちゃん?」

「くひひっ、なぁに?」


何故だろう、自然に口角が上がる。血潮が滾り、体がまるで燃えているかのように熱い、これは…歓喜だ。喜びと驚きとそして何よりも悔しさの炎だ。

目に、あかいひかりがともる。


「はぁ…はぁ…くひひっ!」

「…ありゃ、もしかしてスイッチ入っちゃった?」


まるで心臓を鷲掴みされているような圧迫感があるのに体はいまにも駆け出したくなりそうなほど昂ぶっている。


「…くひぃ」


堪らぬ匂いで誘うものだ。



獣人族、そう呼ばれる多くは高い身体能力と強靭な生命力、そしてベースとなった動物の持つ本能とでもいうべき物を生まれつき持っている。

それは異能持ち同士の結婚で生まれた魔眼や魔法使いのような、世界の理を曲げるようなものでは無いが、しかして本能的なそれらは何を引き金に発現するのかわからず。見た目ではわからない本能が目覚めることもある。

いや、彼女ら姉妹にはそれは関係ないのだろう。姉と妹と呼び合うがその姿形は大きく異なる。だが確実なことが一つある。


「次は、逃がさない」

「うん!そうだね姉ちゃん!」


その本能は明らかに狩る者のソレだと言うことだ。



「…なんか嫌な予感がするな」


走り続けて漸く見つけた休息地で焚き火を焚いて怪物の肉を食らう短剣使いは悪寒を感じ背筋を伸ばす。


「っぐ…むっが〜!」

「はぁ、黙ってりゃあいい椅子なんだがなぁ…」


椅子としている男性の横腹を蹴り情報をまとめる。薄暗い森の中、目を凝らせば見えるという程度に偽装された装備見を着た男が木に吊るされ磔にされたまま気絶している。どうやら今回の襲撃は特見所もなく終わったようだ。


「暗殺者崩れが1人、タッグが三組、弟くんも参加、ね」


短剣使いは奪った装備である細身の短剣と金属製の円盾ににっこりとしながら男2人の処遇を考える。なにせ何時もだったら殺しているのだが必要以上に敵を増やすのも考えものだ。こいつら二人組やあの姉妹のように賞金目当てのただの探索者という可能性もある。


「ま、殺すんだったら弟くんと暗殺者だな、タッグは…よくわかんね、多分こいつらじゃないだろ」


暗殺者がどういうレベルなのか知らないが、弟くんはそれなりに強いはずなのでそれ以下のこいつらやあの姉妹を雇うのは非効率的だ。それにあの家なら一般の探索者なんぞ雇う訳もない、もっとドス黒い奴等を使うはずだ。


「にしても俺の首に1000万、生きてんだったら2000万とか、破格だねぇ…」


ため息をつき火を消した。肉はすでに食い終わっており、男2人は怪物避けの香を持っていたのでそいつを少し拝借して残りを焚いてやった。


「ま、なくなれば死ぬし、死ぬ気で抜けろよー?」

「ん!っぐ?ぐあああ!クソが!この!」


猿轡が外れた男は身をよじる。すでに周りには彼ら以外の息遣いが集まりつつあった。

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