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一週間の始まり


転送先は第一階層の中腹、周囲は森、背後には山がある。

そう、この地域に最大規模というのは文字通り最大の規模を持っているという意味で最大規模なのだ。このダンジョンは全百階層、十階層毎の転移門もあるダンジョンらしいダンジョンなのだが、その全ての階層が大陸1個分ほどの規模を誇っておりダンジョンが攻略されるまでに1000年かかり、今もその細部まではよくわかっていない、また、このダンジョンは全百階層なのだがこの内部にさらに三つのダンジョンが内包されておりそれらはまだ攻略されていない、また、表層にダンジョンが複数個あるのではなく、内部にダンジョンを抱えるダンジョンとしては世界で唯一無二の存在であり、今も学術的調査が行われている活火山のようなダンジョン、それが大樹市のダンジョンだ。


「まぁ、今日は追っ手がここを特定してくることはないだろう。…そう、思いたいな」


俺は独り言を言いつつ溜息を吐き、装備の確認をする。恐らくこの先に探索者組合の築き上げた最初期の前哨基地であり、今となってはこのダンジョン内部における最初の拠点となっている町がある。そこへ行く前にどれくらいの間補給無しでやっていけるのかを確認しておく。なにせ、まじであのうざい奴らが俺を殺そうと思うのならば補給を絶ってじわじわ追い詰めてくるだろう。…それに、迂闊な事に過去の俺が大々的に魔眼を見せてしまっている関係上戦力評価も改めて来るだろうしな!


「はは…笑える。」


とりあえずの目標は…2階層への到達だ。流石に魔魂を稼がなければ世界樹側からペナルティが出るだろうし、そもそも今のレッテルが弱小とはいえダンジョン攻略者、それなりの成果を出さなければ今回の裁判のような手助けも無くなるだろう。


「さて、食料と水は2人で一週間分だったから丸々二週間分、爆弾は余裕があるけど補充はしたほうがいい、丸太は…あとで作るか、うーん…」


武器がない、錆びた鉄の塊が武器だと言い張るならば一応100本ほどあるし、両手剣や片手剣、斧なんかは新品同然のが10本ほどあるが、戦闘に使えるほどの練度はない、よくて質の良い投擲武器だ。うむむむ…


「どうしたものかな…」


とりあえず奥地に向かって歩きながら考える。襲いかかってくる敵はツノウサギに人面樹、歩く球根、蠢く草叢、ゴブリン、大鷹、大鷲、屍梟などなど、それらを外套と体術と投擲で瞬殺する。一階層だからなんとかなっているが実際は非常に危険な行為だ。やりたくはないが背に腹は変えられないのでやるしかないのだ。



暫く、といっても一、二時間程度だが歩くと外壁が見える。だが…


「予感的中って感じだな」


嫌な気配、正確にはきな臭い感情が渦巻いている。俺に絡む事じゃなくても面倒毎に巻き込まれれば足が鈍る。この街は残念ながら見送りだ。



「…」


いや、参った。ここで逃げるのは不味い、俺的に不味い!

振り向きざまに石を投擲、身体強化によってただの石ころも立派な質量兵器となるが、迫ってきている気配的にあまりに無力だろう。お返しとばかりに飛んできた矢を外套で打ち払って森の中に転がるように入り込む。しかし、行く手を阻むように矢は俺の前に飛んでくる。ジグザグ気味になりながらも街には近づかないようにするが奥へはいかせてくれないようだ。



走ったために一瞬で町から10キロは離れただろうが、高位の弓術士や狙撃手にとってこの程度は距離にならない、地面を削り取るような威力はないが命を刈り取るのには十分な矢が雨のように降り注ぐ中俺は山の側面と森の境界に出た。切り立った壁のようなそれはどうやら山というよりは森と山の間にある崖らしくその奥には頭が白くなった山頂が見える。

そして目の前にある崖には洞穴、ダンジョンの地形は基本的に破壊不能なので崩されて窒息死させられることはない、が、進路をこちらに誘導されたような気配もする。魔眼的にはオーケーだが…


「いや、考えてる間に剣山にされちまうな」


降り注いでくる矢を見上げればやるべきことは明白だった。




はるか遠方、100キロ先では狩人らしい羽根つきの帽子を眼部下にかぶり大弓の構えを解いた幼女と自分の身の丈を超えるような巨大な戦斧を地面に突き立てた活発そうで長身の女性がいた。


「にひ…第一段階は成功っと…」

「何言ってんだバカ姉貴、眼抜けのしかもたった10階梯の奴にあんだけ避けられるなんて腕が鈍ったんじゃねえの?」

「何言ってんのよこの脳筋!眼抜けじゃなくて今の標的は黄金、つまり最上級魔眼の持ち主で吹っ飛んだはずの町のダンジョンを攻略して出てきたアンノウンなの、戦力評価はちゃんと改めてね!」

「はいはい、だけど当たってねえのはほんとだろ?」

「…っむ!」

「ほら、背中に捕まんな姉ちゃん、飛ばすぜ」


ひとしきり言い合ったあと、女性が戦斧と大弓を担いだ幼女を背中に捕まらせると発達した太腿に力を入れる。はっきりと脚部の筋肉が盛り上がり、視認できるほどに熱気を帯びると彼女は地面を蹴り飛ばし低い弓なりを描いて跳んで行った。

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