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スピーディーかつ効率的な再会


…意識が浮上し何か柔らかい物に載せられているのが判る。目を開けると桃源郷が広がって居た。


「あ、起きた」

「ごじゅじんざま〜!」

「あなたよくもまぁ賞金首の分際でスヤスヤと…危機感というものがないのです?」


とりあえず名残惜しさはあるが体を起こそうとするが…腹部の痛みと得体の知れない怖気に阻まれる。


「…此処は一階層であってるか?」

「ええ、その通りです」


記憶を辿る。というほどの労力は使って居ないなにせ昨日此処にきたところまでは確実に俺の意識はあったからだ。では何故突然意識が途切れたのか?


「…多分、ひろう…です」


暗殺者ちゃんが呟く。成る程…成る程?


「いや、それはない極限まで疲労していても異能の効果で休むことなく動けるはずだ。」

「いいえ、疲労だけじゃあ倒れなかったとしてもそんな状態異常を受けてたらそれも仕方ないんじゃないです?」


そう言って弓使いは俺の脇腹を指差す。包帯がしてあってもわかるほどに黒く変色し脈打つそれは昨日戦った闇とよく似ている。異物感やしこりの様なものはない、というかそもそもこの黒い何かに触れることができない傷口はすでに塞がっているし姉妹や暗殺者ちゃんから話を聞くに内部に何かが入り込んでいるわけでもない、ただただそこにあるというだけだ。


ただ、魔眼で見るまでもなくそこには殺意や怨念などがこびり付いているし俺へ何らかの異常をもたらしているのは明らかだろう。俺は少し力を入れて体を起こす。今度はきちんと起き上がれたがやはり何か体の操作にズレがある。今まで数ミリでも狂うことのなかったそれがズレるという異常事態に対し俺は極めて冷静に魔眼を発動した。


『解析結果:重度の神経麻痺および摩耗

原因:腹部への呪術的な攻撃と共鳴による侵食

対処法:同化若しくは異能である回避の使用若しくは元凶の排除

推奨:元凶の排除および同化』


ふむ…?解析と言うのが自分とこの異能を与えた加護の持ち主の知識に拠ると言うのを考えればなかなかに興味深い話だ。同化と言うのはどう言うことだろうか?


『回答、復讐心の継承、共鳴による同一化などの例が挙げられるが今回の場合侵食された部位から相手を侵食し返し支配下に置く事である』


なんともまあ夢の様な話だ。あの力を奪えるのならば外套と合わせて凄まじい戦力になるだろう。人間を逸脱しようが探索者など最初から改造人間、そこからどうあがいても人間になれることはないのだ。ただただ道を踏み外すだけがその末路である。

だが、こんな残滓でも俺に対して確実に害を成しているコレを逆に侵食し返せとかどんな化け物じみた精神性を求めているのだろうか、というか共鳴している時点でヤバい気がする。厄ネタは関わってもしょうがないしそもそもあんなものを取り込めばどうなるか自分でも想像がつかない好奇心はあるが探索者的なリスク管理を考えれば…


『回避』発動


「コレが一番だろう」


俺の身体がブレると同時に黒い残滓が俺をすり抜け俺は其奴を切り刻んだ。


「ふぅ…これで」

「何やってるんですか!?」

「ばっか!負傷者はちゃんと寝てるです!」


…まぁ、今しがた寝ていた奴がそんな事をすれば普通そういう反応だろう。だがこんなコントをしている暇はない俺は暗殺者ちゃんと弓使いが寝かせようとしてくるのをいなしつつ街へ向かおうとする。

だが2人は飽くまでも俺の前に立ちふさがる様なので説得を試みる。


「お前らこそ正気か?十層の街が壊滅した時点でさっさと一層の街に連絡を…」

「そのひつようはないんだぁー」


気の抜けた様な、しかし俺の知る中で最強の女性の声が聞こえると同時にぶつりと何かが切れる音がして俺の意識は暗転した。



弓使いは驚愕した。矢文を飛ばしていたので誰かが助けに来てくれるだろうとは思っていたがあまりに早過ぎる。


(射ってからまだ半刻も経っていないのです。探索者だったとしても此処から街までそんな時間でこれるのは異常です)


しかもそれが明らかに異能使いでもなければ医者でもなくその腰に帯びる剣を見るに剣士であるというのもおかしかった。怪我人がいると書いたのに…


「っ!」


此処で剣士が剣を振り崩れる様に倒れた短剣使いを見て三人は失策に気づいた。そう、怪我人がいて助けを求めているなんていう情報を風間家やその配下がいるかもしれない街に送りつけるのは愚の骨頂である。

一拍遅れてそれぞれ武器を構えるが…遅い、一番最初に距離を置いた弓使い以外は剣士が一歩も動かずに剣を振り抜くと同時に崩れ落ちる。


「うーん?賞金首として追われているって聞いていたけど〜…ふむぅ?どうやら彼はナンパ師の才能がある様だねぇー」


剣士はカラカラと楽しそうに笑う。弓使いにはそれが恐ろしく見えた。

獣人の知覚能力が街の方から集団で人が近づいてきているのを感知する。詰んだ。どうにかして損失分は金を貰いたかったが此処で全員始末されれば何も残らない、弓使いはせめて最後の抵抗くらいはと弓に矢をつがえるが目の前の剣士はその細身の剣をすでに振り終わっていた。


だが一向に何も起きないのを見て弓使いは弓を引きしぼる。


「一体何を」

「もう終わりだよー」


剣士の声と同時に全くなんの予兆もなく弓使いの意識は切り取られた。


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