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対世界悪特殊組織に入った僕は約束を果たす  作者: 火皿木
1章  ビレバール第十七駐屯地 殲滅作戦
8/8

5 業物槍と雑貨のナイフ

戦闘回2

今回は宮人の苦悩と立ち上がり回です。

薄っぺらい内容ですがこの時点ではここまでしか掘り下げません。


 宮人が立つ、その直線。

 50cmの長さに変えた槍を手に持つアイツから約3kmには地面が隆起して、凹凸が出来上がっていた。

 その部分だけ大地震の直後のような光景があり、それを起こしたのはアイツであるという事実は宮人とアイツの二人しかいないだろう。

 当然のことであるが。

 事実、今この場には二人しか存在していない。

 それに、普通の人間にはこれを人が起こしたとは到底信じられないだろう。

 

 「世界悪特殊団体ってのは禁忌も使ってもいいって言うのか」

 

 段々消耗によって遠のいてくる意識に鞭を打つ為無理矢理口を開く。

 

 「私は戸籍も名前もそもそも人として存在してないんだよ。

 だから犯罪やら禁忌なんて私には罪にはなりやしないのさ」


 「・・・・存在しないなら何しても良いってのかよ」


 全く・・・人間じゃない人間は自由でいいな。

 法も何もアイツには意味をなさないってことだ。


 「私もかなり動揺してしまったが・・・まさか偶然出会った人間がここまでのやり手だったとは。

 リンク切り忘れてて良かったよ」


 「------------------く、っ」


 平静を取り戻したようで表情に深い笑みと敵意が定められた。

 ギラギラと狂気に輝く瞳は宮人のみを見つめ。

 手先に握られた槍は赤の色が纏い始めた。


 対する宮人は見た目と中身が滅茶苦茶になっていて。

 軽く柄を拳で食い込ませたナイフは習慣でつい購入してしまった雑貨店の安物。

  

 これだけで戦力差は歴然だ。

 さらにアイツは禁忌すらも簡単に破ってくる化け物。


 アイツがいきなり技を発動してきたのも、このような余裕があったからこそだとその考えに至らなかった自分が阿呆過ぎて堪らない。

 慢心、だろう。

 師匠にも口酸っぱく注意されていたのにも関わらず。


 「浮かれてたか」


 嘆息混じりに呟く。


 「力の収束、君にはいいことを教わったよ、礼を言おう。

 だけどもういい、今度こそ悪いけど・・・死んでもらうよ」


 アイツとの距離は20mちょっと。

 早くても9、10歩。

 だから少しだけ呼吸と意識を整える余裕できる。

 後、ナイフも構えるだけの時間も。


 「さ、行くよ」


 アイツは槍を腰辺りに構え一歩踏み込んだ。

 

 宮人もそれに対応して呼吸を整えて・・・。

 

 次に・・・二歩目。

 

 「-------------------っあ!」


 

 ようやく腕を上げようとした時、目の前に槍の先端があった。

 

 そしてその先にはアイツの身体が幼い白髪がー。


 「-------------届けええええぇぇ!!!」

 

 脊髄反射のような速度でナイフをそのまま振り上げた。

 最早無意識の中での行動。

  

 間に合うのか、と死を覚悟した瞬間。


 金属の交錯音が響いた。

 ーカン・・・振り上げたナイフは槍と重なって少し上に振り上げられる。

 そのまま伸び、宮人の夜に紛れる黒髪の天辺部分を掠る。

 音もなく髪は宮人から切り離された。

 数にして5本、当然宮人自身には感触すらないが槍の高さからそう想像した。

 

 だが、そんなことはどうでもいい。

 髪が宙に浮き、重力によって地へと落ちようとした時。

 

 ー反撃。

 好機だと確信した宮人はようやく反応したアイツの槍よりグッと身体を落としナイフで心臓にのみ狙いを定め突いた。

 突き出した腕とナイフに全ての重心を掛けた身体はその支えを失って前のめりに突っ込む。

 しかし、十分に息の音を止めることはできる。

 

 「・・・・取った」


 決定的な一撃。

 そう成り得るだけのもう10cmにも満たない近距離。

 

 「温いよ」


 「--------え?」


 微かな呟き。

 そんな声が聞こえた気がして・・・・・・宮人の身体は次の瞬間に吹き飛んでいた。

 宮人から出た変な声は吹き飛ばされた衝撃と無意識による結果からだ。


 舞うように宙を飛んだ宮人の身体はされるがままに30m以上遠くの木にぶつかって止まった。

 人の腕ではない何か鈍器で殴られたような。

 両腹に軋むような痛み。


 「っあぁ・・・痛ぇ」


 ただでさえ肉体もボロボロな上にこれはさすがに折れてるだろ。

 朧いでくる瞳は恐らく自分を殴ったであろう槍を映した。


 「・・・・・・なんて・・・反応速度、だよ」


 「いやぁ、流石に危なかったよ」


 倒れてしまった所為でだるくなる身体と意識に歯ぎしりし負けじとアイツを睨む。

 手を握りしめそれを戦意の鼓舞に用いて動力源へと変換する。

 だけど。

 そんなのは肉体的な外部的な願望論に過ぎない。 

 

 痛い、辛い、苦しい、逃げたい。

 人間として当然の感情なのだろう。


 力を手に入れた。

 それだけだ。

 

 力はある・・・だが、精神が自分自身がその力に付いていけていない。

 持ちぶされである。

 それはこの戦闘で思い知らされた。

 

 実力が全然伴ってない。

 戦闘自体が師匠のとの修行以来だからという言い訳もできるが。

 でも意外と鈍ってはいないようだ。


 「・・・・・・師匠・・・僕、勝てるんですか?」


 勝てるんですか?

 それは負けを認めたくはない我儘。

 つまりはまだ意志は残存しているという表れ。


 「・・・・・・・・・・師匠・・・・・・・とう、さん」


 次に脳裏に浮かんだのは父ー圭の姿。

 他人を救う為に規約や人望すら失い、それでも己を貫いた。

 自分の犠牲すら顧みず。


 二人目の憧れ。

 かっこいい、そう思えた人物。


 【諦めようと思ったら、その前にもう一度立ち上がれ】


 いつも言い聞かせられたその一言。

 

 -そう言うことか・・・。


 今なら分かる。

 今ならやれる。


 「立ち上がったのなら・・・行ってこい」


 今なら立てる。

 願望論なのかもしれない。

 けど・・・精神に自分自身に何時からか消えてしまった深い場所に眠っていた"約束”に想いが灯る。


 「さあ、行こう」


 ナイフを手に取って。

 

 「やっぱり僕はこっちでないとね」


 それをクルッと半回転させる。

 逆手持ち。


 僕は、絶対に勝てない敵に挑む。


 

 

 

 

 


 

 

  


 


 


一応戦闘は次回までの予定です

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