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対世界悪特殊組織に入った僕は約束を果たす  作者: 火皿木
1章  ビレバール第十七駐屯地 殲滅作戦
7/8

4 舞う夜空の閃刃

戦闘回です。

不明な点が多くみられると思いますが、後に説明を付け加えさせていただきますので軽く読み進めてもらえれば幸いです。



 「君が、このナイフを?」


 そう、あの時の事は今でも鮮明に克明に覚えている。

 だって、それが今の"僕"の始まりだから。


 「*******************************」


 「******************************」


 「*******************************」


 「だから・・・・僕はーーーーーー」


 僕は目を開き、あの人を逸らさずに見た。


 「そうか・・・・・・なら強くなれ、誰よりも・・・そしてもう一度あの"空"へ」


 あの人はニッコリと微笑んで。


 「さあ、行こう・・・高峰宮人君」


 手を差し伸べてきた。

 それは大きく重く。


 握れば温かそうと思った。

 だから。


 強くなりたいとー冷たい僕の手は・・・握っていた。


 *******************************


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」


 この声は誰か。

 どちらなのか。

 そんなもの見れば分かる。


 それはベンチに突き刺さる刃の音と丁度地面に足が着く、着地音の二つ。

 この二音で何が起こったのか、それは分かった。


 「危ねえな・・・」


 子はベンチにそれを刺したまま横にいる僕・を睨んだ。

 腕を伸ばしっぱなしにしてその先のーー槍を横へ振る。

 木板を貫通しそのまま慣性の力を伴い加速を得て宮人の元へ飛んだ。


 その速度は優に100・・・音速と差異は無いと言ってもいい。

 距離は僅か15m程度。

 どれだけ計算しても答えは一瞬だろう。

 そう一瞬、瞬きすら許さない超速度。

 普通なら反応もできない。


 だが。


 「避けられない速さじゃない」


 この台詞、言ってから避けては間に合わない。

 だから子が聞こえたのは移動している最中の宮人だ。

 正確には既に飛び着地し終えただ。


 当たり場を失ったベンチはそのまま木々を巻き込み、動きを止めた。

 超速の物体を受け止めた木々は半分程倒れていて外から丸見えになっている状態。

 台風が過ぎ去った後のような惨状。


 「それで・・・君こそ一体何者かな?」


 木片を落としながらやっと腕を動かして槍を小槍をぶら下げる。

 子槍、そう表現したのは単なる比喩ではない。

 見たままの正直なーー。


 「すばしっこいのは認めよう。

 だけど逃げるだけじゃあねえ」


 槍はその矛長を変えた。

 その全長3mはあるか。

 幾ら避けても逃げてもいつか攻撃は当たってしまうだろう。

 不明で不詳なアイツの武器。


 直に人も集まってくるだろうが、おそらくその時には少なくともこの公園は原型を留めてはいないだろう。

 だがアイツもそれは承知で既知のことだろう。


 「正義の兵士の割には随分物騒なことしやがるな。

 上司の顔が見てみたいよ」


 「ははっ、軽口を叩けるなんて凄いな君」


 「・・・それにしてもお前のその武器、どうなってんだよ?

 錯覚じゃなければ長さが変化しているように見えるんだが」


 少しでもと情報を引き出す作戦を実施する。

 ほぼ無意味なことになりそうだが。

 蒼惶たる様でも演じれば多少は効果は変化するだろうか。

 敵のお情けを頂くなんてことはしたくはないが。


 「焦ってるフリなんて・・・バレバレだよ。

 そんなことで私の武器の能力を教えてもらおうとは、後微かだけど余裕が顔に出てるよ」


 「・・・ふふ・・・甘くはない、か」


 「その余裕は何かな・・・見せてご覧よ」


 アイツは槍を持ち直し、構えを取った。

 右足を後方へ伸ばし助走をするような。

 獲物を狙い眼光を光らせるチーターのように。


 -マズイ。

 それは直感だ。

 予見ではあるが、本能が警報の鐘を鳴らしている。

 現在まで知識と経験と脊髄が細胞に流れる血液が逆流するかのように・・・。


 多分、いやアレは確実に必殺に成り得るだろう。


 「-----------っ」


 「ははははは・・・どうやら分かったようだね。

 これは当たれば絶対必殺に一撃、自身の肉体と精神をこの槍に掌握して放射する」


 「フェニックス旅団のチャージアウトか・・・。

 何でお前がそれを」


 「これはね対世界悪用ににフェニックスの槍王から直々に授かった技さ」


 「・・・・・対世界悪用」


 聞いた覚えがある。

 戦争やテロ、犯罪において世界悪と判断された案件は実力を持って治める特殊組織。

 常任理事によって設立されたその組織は一般に視認されないとされる。

 ここまで来て、アイツのとある可能性に至った。


 「まさかお前・・・・・世界悪特殊団体ってやつか?」


 衝撃を押さえながら尋ねてみる。

 すると、向こうも同じくらいの衝撃を返してきた。


 「・・・・・・貴様、どこでその名を」


 「・・・ある人が」


 「・・・・・なるほど、貴様、やはりただの一般人ではなかったか」


 そう呟き。

 刹那。


 ーゴオオオオオオオオ


 一層殺意の秘めた形相とついに槍に視覚化できるまで強められたチャージアウト。

 噂によるものだがこのような肉体と精神・・・つまり魂魄を用いて発動される技の類は、視覚化するとその色が発動者本人のイメージカラー、人生の色になると言われている。

 そして、その色の濃さに伴って強さは上昇する、と。


 アイツは白だ。

 限りなく真白に近い、白。

 あと一歩という恐るべき力。

 この若さでここまで到達する、天性の才能であることに違いないだろう。


 透き通るようなアイツの髪色と同じイメージカラー。

 どこまでも純粋で一途な証明のような。



 -それなら僕の天敵だな。

 もう常人、超人であろうとも回避不可能であるようなエネルギーの一撃を前に宮人はそう思った。

 天敵。

 決して相容れることはできない存在。


 真逆の世界に存在する、即ち「対」。



 それがアイツと僕だ。


 「・・・・・師匠、どうやらその刻のようです・・・宮人行きます」


 俯き腰からそれ(・・)を取り出し。


 鞘を抜いた。



 「終わりだ・・・非一般人よ」


 槍をグイッと後ろへ引き・・・己の力を持って引き足と共に前へ踏み込む。



 「突き」


 瞬間。 

 白の閃光に世界は眩み、次に全てを破壊するだけの衝撃と激震が包む。


 ードパン、と激しい破音。

 眩んだ世界の創造主は槍を前へ伸ばしたままその光景を眺めた。

 彼を含む、それ以外は何の被害も影響もない自然が広がっている中。

 直線約3kmに及ぶその範囲は別世界に変わり・・・まさに天変地異。


 圧倒的一撃、それは自然、人工物あらゆるものが「無」に帰っていた。

 面影など一変たりとも形を残しておらず・・・。



 「------------------ん?」


 一つだけ残っていた。

 あれは一つではなく一人が正しいだろう。


 彼はその一人を視認して数秒、呆けた表情をしていた。

 理解が及ばないのか、疲労による代償か。


 だが一人が動きを見せた途端。

 何かが弾けたように。


 「・・・・・・・・は、あ?あ・・・・・・は、ははあああああああああああああああぁぁぁぁぁ?」


 狂叫した。

 一人、自分の狙いだった少年が。

 必殺の一撃を・・・防ぎ切った。


 「・・・ありえない」


 呟きが静寂の空に漏れる。

 何があったのか。


 「・・・ありえない・・・ありえない」


 今まで以上の出力で撃った筈だ。


 「・・・ありえない・・・ありえない・・・ありえない」


 槍王直々に享受された技だぞ。


 「・・・ありえない・・・ありえない・・・ありえない・・・ありえない」


 シャクトの二等兵さえ破った一撃だぞ。


 「何で、お前が生きてんだっ!おいっ!何で死なない!何でだ!?俺の身体の残量分ほぼ全部使ったんだぞ!!何で死なない!?何で何で何で・・・嫌・・・・死ねよ!死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよ死ねよっ!!!!!!」


 そう、これはたかが非一般市民として在り得てはならない。

 ちょっと葦が素早いだけの奴にありえてはならないのだ。



 「・・・・・・・ふふふふ・・・はっ・・・・お前がさ、白で良かったよ・・・」


 アイツの激情と衝撃を止めさせるのに十分な一言。

 宮人は薄く笑みを浮かべて構えた「黒のナイフ」を下ろす。


 「お前・・・・・それは・・・・いや、違う、そんなことじゃない。

 そんなナイフでどうやって防いだんだ?」


 「・・・逆にどうすれば防げるんだ?それが分かれば誰でもわかるだろ?」


 どうすれば防げる。

 そんなこと単純で明解だ。


 -同等の力をぶつけて相殺すればいい。


 だがだ。

 仮に奴(宮人)がその同等の力を秘め、先の一撃を受け止め切ったとしても。


 「何で貴様は・・・?」


 「? ・・・あぁ、何で僕が無傷かどうかってことか?

 そりゃお前、僕が自分にのみ力を集中させたからさ」


 「一点?集中?何言ってるんだ?」


 「知らないのか?お前の場合、力が散乱してるんだ。

 意識が狙いが真に僕に向いてないんだよ。

 だから耐え切れた」


 「・・・錯乱・・・っ」


 「要するにお前は本気で僕を殺したいって思っていなかったってことだよ」


 「な・・・ん・・・」


 より大きな衝撃となってアイツは言葉を失った。


 「だけど、お前のその力、それほどの濃さのカラー・・・こんな奴がいるなんて。

 ・・・・・まあ、お前は決め手を使うのが早すぎた。

 もう少し粘って削る方が得策だったたな」


 アイツが決め手を使ったとすればもう肉体、精神共に相当擦り減っているだろう。

 戦闘開始した途端に必殺技を使ってくるようなことをしたのだ。


 「限界だろう?それにそろそろ騒ぎを聞きつけて人もやってくるだろう。

 どうだ?ここは手を引いてはくれないか?」


 と、ここまで敵の状態ばかり気にしていたが、別に僕が無傷でピンピンなわけじゃない。

 無傷、であることは確かだが、ピンピンではない。

 アイツの攻撃からの防御。

 分散していたのは事実だが、それでも強烈な一撃だった。


 自分の力があと少しでも足りなければ確実に死んでいた。

 それに、今も激しく消耗した肉体と精神の痛みに耐えている。

 だから余裕そうな態度もアイツの戦意を削ぐ、ハッタリ。

 内心、打つ手を必死に考えていたのだが。


 「・・・・・そうだな、限界、か。

 限界、か・・・・・・・・それは君のことだろう?ねえ?」


 「・・・・・・・・・・・・・っ、まさか」


 「あぁ・・・・・貰い受け、さ」


 貰い受け、それは現代技術の賜物であるリンク(視覚一体化)の応用。

 他人の肉体、精神そのものを一時的に共有し交換する。


 技術の進歩故の禁忌。


 さあ再開だ、と槍をスナップを利かせ前に突き出した。


戦闘、まだ続きます

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